死に戻りの公爵令嬢は嫌われ者の下僕になりたい

荒瀬ヤヒロ

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第30話 ステラの決心

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 結局その日お父様は帰ってこず、翌日に沈鬱な表情で帰宅した。

「第一王子殿下と側近候補達が「殴られた」と証言している以上、罰を与えないわけにはいかないそうだ」
「なんですって!?」

 側近候補って、あ・い・つ・ら・か。

 今すぐあの生ゴミどもを処理しに行きたい。
 本当に王族を殴ったのなら投獄は免れないが、ヒューはまだ十歳。王家とて子供を本気で牢に入れるわけがない。

「どんな罰なのです?」
「うむ。ヒューイット殿を辺境伯の預かりとすることが決まった。学園入学前までだ」

 辺境送り……私とヒューを引き裂くつもりね。

「心配するな、ステラ。辺境伯の奥方は陛下の従妹だ。社交には出てこないが立派な御方だよ」

 お父様は私を慰めるように言い聞かせるが、私は必死に頭を働かせてヒューを守る方法を考えた。
 ヒューの無実を証明したいのはもちろんだが、「やっていない」という目撃者がおらず「やった」と言い張る証言者がいるこの状況ではそれは難しい。
 それに、無実を証明して辺境行きを食い止めたとしても、あの生ゴミどもがまた別の手を使ってくる可能性もある。

 それならば、いっそ辺境へ行ってしまった方が、連中の手が届かなくて安全なのではないだろうか。

 学園に入学するまでの一年半だ。

「わかりました、お父様。私も辺境へ参ります!」
「なにを言うんだ!?」

 お父様は面食らった顔をしたが、私は本気だ。

「お父様、ヒューが遠ざけられたのに私が王都にいては、第一ゴミ殿下に無理やり婚約を結ばされるかもしれません」
「ううむ……しかし、お前を辺境へ送るなどできるわけが……」
「私は病弱で高血圧が深刻で糖尿病な上に物忘れがひどいので転地療養ということにしておいてください」
「う~む……」

 お父様は長い間うんうん唸っていたが、やがて諦めたように溜め息を吐いた。

「お前がそんなにもヒューイット殿に惚れ込んでいるというのならば……辺境伯領の隣に、ベルン子爵領がある。ベルン子爵は亡くなっており、今は子爵夫人が幼い息子に代わり領主代理をしているが、わしは亡きベルン子爵とも子爵夫人とも学生時代からの友人だった。お前を預かってもらえないか尋ねてみよう」
「ありがとうございます、お父様!」

 隣の領ならば暇をみつけて会いに行くことが可能だ。

「名目は、お前の領主としての勉強のためといえばなんとかなるだろう。もちろん、行く以上は本気で鍛えてもらえるように子爵夫人に頼んでおくからな」
「はい!」

 ヒューの近くにいることが出来て、領地経営の勉強もできる。一石二鳥だわ。

 あ、いや、生ゴミどもから遠ざかれるので一石三鳥かしら?



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