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しおりを挟む危惧していた通り、公爵夫人は私が無理矢理平民に嫁がされそうになっていると吹聴しているようです。
お母様とお姉様はお手紙やお茶会で付き合いのあるご婦人に説明なさっています。
幸い、皆様は我が家の説明を信じてくださっております。
私も学園で友達にきちんと事情を説明しました。
こちらが頑として公爵夫人の望む縁談をお断りすれば、そのうちに諦めてくださいます。これまでずっとそうでしたもの。
公爵夫人もお立場がありますので、こちらが否というものを無理に押し進めることは出来ません。
だから、とにかく公爵夫人が諦めるまでやり過ごせばいいはずなのですが、どうしたことか、今回の公爵夫人はなかなか諦めてくれないのです。
「カロビス子爵家はセラフィーヌ嬢がかわいそうだと思わないのかしら?」
「兄と姉には高位貴族との縁談を結んでおいて、妹は平民に落とすだなんて、あんまりですわ!」
「農夫と結婚だなんて、考えただけで寒気がしますわ!」
このようなことをあちこちで声高く主張しておられるようです。
「はあ……」
本当に憂鬱ですわ。
明日の夜会でも間違いなく突撃されます。お母様とお姉様が庇ってくださいますが、想像しただけで疲れますわ。
「あー、ロッドに会いたいですわー……」
私は我が家の書斎でぐったりソファにもたれて嘆きました。
ロッドの焦げ茶色の髪と瞳に癒されたいですわ。大地と同じ色を持つロッドの傍はとても心地いいのです。
「はー……ロッド……」
「呼んだ?」
「ぎゃわっ」
びっくりしすぎてソファから落ちるところでしたわ。
「ロッド!?」
侍女に案内されて現れたのは、私の婚約者のロッドだったのです。
何故、ここにロッドがいるのでしょう。彼は領地にいるはずなのに。
「商談とか、いろいろあってね。今日からしばらくここに泊めてもらうんだが」
聞いてませんわ。お父様ったら、私に内緒にしてましたわね。
「ところで、なんでそんなに落ち込んでいるんだ?」
ロッドに尋ねられて、私は思わず彼にすがりついてしまいました。
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