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第13話 無理
しおりを挟む(な……なんなのこの胸の痛みは?)
ガルヴィードにそっぽを向かれた。ガルヴィードに近寄るなと言われた。ガルヴィードが、ルティアを拒絶した。
「い……」
ルティアの脳内に、これまでのガルヴィードとの記憶が走馬燈のように蘇った。
どっちが多くの雪だるまを作れるか勝負して城の庭を雪だるまだらけにして「儀式みたいで怖いわ!」と宰相にどつかれた冬。
キノコ狩り勝負に出かけてキノコを深追いして二人揃って遭難して捜索にきた騎士団にしばかれた秋。
城の二階の廊下を使ってどっちが怖いお化け屋敷を造れるか勝負をして、完成した時にちょうど通りかかった老大公の心臓を危うく止めそうになった罰として「夜中に目が動いて喋り出す」と噂の人形と一緒に地下室に閉じこめられた夏。
クローバーを引っこ抜きすぎて、青筋浮かべた庭師に「一杯やってくか?」と笑っていない声で除草剤の入ったコップを勧められた春。
そして、初めて出会った日のパンツの色。
ろくでもない思い出ばかりだが、そのすべてを見渡してみても、ガルヴィードがルティアから顔を背けたことなど一度もない。
それなのに、それなのに。
「いまさらなによーっ!!」
「わっ!?なんだよ突然!!」
「いまさら「近寄るな」ってなによそれーっ!?私に散々あれこれやらせといて今更っ……今更、私を捨てるつもり!?」
「なんの話だ!?」
「とぼけんじゃないわよ!!私をこんな女にしておいて!!」
「どういう意味だ!!っつか、……近寄るな!触るなっ!!」
ルティアはガルヴィードの顔を見ようと懐に入ろうとするが、ガルヴィードは身を捩ってそれを拒絶する。ルティアはますますムキになってガルヴィードの胸ぐらを掴んで迫った。
「こっち見なさいよっ!!」
「い……今は無理だ!無理なんだって!!あっち行け!行ってくれ!頼むから!!お前のためだ!!」
ガルヴィードは必死にルティアを遠ざけようとする。必死すぎて息は荒いし顔も真っ赤だ。汗まで滲んで、目も潤んでいる。そして、ルティアに背を向けようとしてもがくのだが、ルティアはそれを許さず懐に潜り込もうとする。
「ま……まじで、どけ!くっつくな!頼むからっ!!」
「やだーっ!!」
とうとう我慢の限界がきたルティアがガルヴィードに抱きついた。
彼女は今まで自分に喜んで寄ってきていた駄犬が、急に自分に興味をなくして尻尾を振らないばかりか唸って威嚇された気分なのだ。傷心なのである。
「ばっ……かやろっ!!」
ガルヴィードは自分に抱きつく小柄な少女の体温に、カッと頭に血が上った。
彼は少女の肩を掴み、強引に引きはがして、そして……
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