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第24話 我慢の限界
しおりを挟むもう誰も信じない。
ドレスの一件で人間不信になったルティアはご機嫌をとろうとする両親を無視して過ごしていた。
家族を無視して引きこもるのは王太子の私室である。
「だって、ここ以外の場所にいると人の目がうるさいんだもん!」
どこに逃げても「英雄の母」という目で見られ、ルティアは限界だった。
「私はまだ十五の乙女なのに、「一児の母」を見るような目をされるのよ!産んでないし、産まないっての!!」
「……」
ガルヴィードは怒れるルティアをしげしげと眺めた。
産むの産まないのにすっかり気を取られてしまっていたが、考えてみれば不思議なのだ。
ルティアも自分も、魔力値は低い。
あの夢の中で、復活した魔王はまず王家の人間――国王と第二王子、そして高位貴族を殺していた。国の中心人物を片づけることで、ヴィンドソーンは指揮系統を失いガタガタになったのだ。
それなのに、魔力値も低く突出して戦闘能力が高いわけでもない王太子である自分が、ルティアと子供を作るまでの間どうやって生き残ったのであろうか。国王と第二王子と一緒に殺されているのが自然だと思うのだが。
まあ、子供が産まれている以上、どうやってかは生き残ったのだろう。しかし、夢の中でアルフリードが英雄として立つまでどんな暮らしをしてきたのかはまったくわからない。自分は父親として傍にいれたのだろうか。それとも、ルティアに子種だけ残してあっさり死んだのだろうか。
考えていると、何かもやもやとすっきりしない気分に陥った。
何か、見落としている気がする。
あの夢には何か、不自然な点がなかったか。
「ねえ!」
違和感の正体を探して頭を悩ませていたガルヴィードは、ルティアに顔を覗き込まれて我に返った。
「な、なんだ?」
「聞いてなかったの?私はもう、我慢の限界なんだってば!」
ルティアはガルヴィードの前に立って胸を反らした。
「皆、私を侮っているんじゃないかしら?ほいほい言うことを聞くようなか弱い女じゃないってことを、思い知らせてやらなくちゃ!」
「あっそう」
何をやる気が知らないが頑張れ、と適当に応援する。
「というわけで!かかってきなさい!」
「なんでだよ?」
何故かいきなり挑まれて、ガルヴィードは嫌そうに眉をひそめた。
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