マンホールのお皿

まさみ

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マンホールのお皿

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……ハイ、大丈夫です。落ち着きました、ありがとうございます。
雨の音すごいですね、ザーザー……夕立って怖いなあ、空の底が抜けて落ちてきそうな気がしませんか?世界が終わる日みたい。
でも窓越しに聞く雨音は嫌いじゃありません、守られてる感じがして。わかります、安全圏にいる感覚?自分だけは大丈夫だろうって、根拠のない全能感。

あ、そうですね。わかってます、ちゃんと話さなきゃ……大丈夫、深呼吸したら落ち着きます。刑事さんたちもわけわかんないですよね、顔に書いてあります、一体この子に何が起きたんだって。今から説明します、支離滅裂になっちゃったらごめんなさい。

アレ、見てください。道路が洪水みたい。真ん中にあるの見えます?マンホールです。まん丸い鉄の蓋。町中にありますよね。マンホールがない町ってあるんでしょうか、私は知りません。電線と同じ、そこにあるのが当たり前のものです。

なのに見えない。
あまりに当たり前すぎて、皆が見落としてる日常の異物。

子供ってへんなもの好みますよね、ポールとか三角コーンとか駐車場の縁石とか。私のお気に入りはマンホールでした。
一番最初の記憶は4・5歳頃かな、マンホールにのっかってるんです。ピコピコ鳴る子供用のサンダルはいてました、大好きなウサギのキャラクターがプリントされた真っ赤な……笛付きサンダルっていうんですか、アレ。物知りですね。お子さんいるんですか?ああ、娘さんまだ幼稚園なんですね。可愛いだろうなあ。

……すいません、脱線しました。その頃の私のブームは、笛付きサンダルを履いてマンホールを踏むことだったんですよ。ピコピコピコピコ、音が鳴るのが楽しくて30分やっても飽きなかった。なんでマンホールの上かって?そうですね……小学校の行き帰りにしませんでした、横断歩道の白線を安全圏に見立てる遊び。間は地獄なんです、底がないんです。落ちたら即死。そういう遊びだったんじゃないかな、よく覚えてないけど。

もうご存じでしょうけどうちは放任主義だったんです。私が表で遊んでても何も言わない。遠くへ行っちゃだめだとか早く帰ってこいとか、よそのお母さんみたいなことは全然言わないんです。だから私は家を離れてマンホールを辿りました。
うちの前にあるマンホールを出発点にして、町中のマンホールを数えたんですよ。何個か忘れちゃったけど。ひい、ふう、みい……踏んでジャンプ、またジャンプ。そうやって一人で遊んでたら行く手のマンホールから視線を感じたんです。なんだろって不思議に思って、よーく見たら蓋がほんのちょっと開いてるんです。誰かが下から持ち上げて、目だけ覗いてたんです。顔は蓋の陰になって、年齢はもとより性別すら判然としません。
私はきょとんとしました。

「だれ?」

するとマンホールはすぐ落ちて人影は引っ込んじゃいました。大急ぎで追いかけて、足元のマンホールに繰り返し呼びかけたけど反応はありません。

「おーい」

諦めきれずにノックをした次の瞬間、マンホールが数センチ浮き上がり、片足のサンダルがすっぽぬけました。

「あっ」

サンダルはマンホールの隙間の暗闇に落ちていき、ぽちゃんと水音がしました。
お気に入りのサンダルをなくしてしまったのがすごく哀しくて、泣きながら帰りました。

次の日、幼稚園の先生に話したんです。

「あのねセンセイ、昨日マンホールにだれかいたよ」

先生は……馬鹿にしたりしませんでしたよ、優しい人だったから。女の刑事さんと似てたな、子供ができてやめちゃったけど。嘘だなんて否定せずたどたどしい私の訴えにニコニコ耳を傾けて、こう言ってくれました。

「それはマンホールに住んでる人ね」
「なんでマンホールに住んでるの?」
「お日様の光が苦手なのかもね。暗い所が好きだからかくれんぼしてるのよ」

ふーん、と思いました。
マンホールに人が住んでるんだ、知らなかった。おうちがないなんて可哀想……じゃない、下水道がおうちなの?マンホールは玄関ドアと一緒で、開ける前にノックをしなきゃだめなのかもしれない。

黒いクレヨン一色でマンホールに住んでる人を描いたら、先生は上手ねって褒めてくれました。嬉しかった。

他の子にも教えてあげましたよ、マンホールに住んでる人のこと。信じてくれる子は少なかった。お迎えに来たお母さんたちもちょっと気味悪そうにしてたっけ。本当にいるのに。見たのに。

小学校に上がって数か月後、夕立が降る帰り道。
黄色い傘をさしてひとりぽっちで下校してたら、またゴトンと音がしました。マンホールに住んでる人でした。

「溺れない?」

マンホールの人は私が一人でいる時しか出てきてくれません。クラスで話したらウソツキ呼ばわりされました。マンホールの人のせいで友達ができないんだ、と逆恨みしたこともあります。
でもあの時は……すごい雨で。マンホールの下で濁流が渦巻く轟音が響いて、思わず聞いていました。マンホールの人は雨の日も下水道で暮らしているのだろうか、地上に避難しないのだろうか、不思議でした。今ならお日様もでてないのに。

マンホールの人はほんの数センチ鉄蓋を上げ、じっとこっちを見ていました。何故か瞬きはしません。一回もしません。よく目が乾かないな、と感心しました。質問を無視されたのは傷付きましたが、子供らしい好奇心がもたげ、ポケットに入れたスーパーボールを取り出しました。蛍光色の緑のボールです。

片手に傘を持ったままその場にしゃがみ、水浸しの地面にボールを転がしました。するとボールはコロコロとあっけなく転がって、狙い定めた通りにマンホールの隙間に落ち込みました。

マンホールの人は驚いたのでしょうか、咄嗟に蓋が落ちました。私は驚かせてしまったのを反省し、マンホールに近付きました。落ちて怪我してないか心配になったのです。

「だいじょうぶ?」

蓋の表面を手の甲で叩いておずおず問えば、再び蓋に隙間が生じ、スーパーボールが投げ返されました。
マンホールの人とキャッチボールが成立し、ちょっぴり愉快になりました。
その後スーパーボールを転がしては投げ返され、転がしては投げ返されを繰り返すうちに心は愉快に弾みました。遊び相手ができて嬉しかったのです、学校で構ってくれる子はいませんでしたから。

何時間たった頃でしょうか、すっかり遊びに夢中で遅くなりました。最後に一回と心に決め、少し強めにボールを転がせば、それがマンホールの人の額に当たりました。

まずいと悔やみました。直後に蓋が落下し、マンホールの人がくぐもった悲鳴を上げました。

「ごめん、痛かった?」

傘を首と肩に挟んだまま蓋を回そうとした時……マンホールが薄く開き、片手を鷲掴みにされました。爬虫類の鱗に覆われた手でした。一番似てるのはワニです。

びっくりして声もない私を、縦に長い黄色の目がギロリとひと睨みし、ボールを投げ返しました。急に怖くなり、傘を捨てて逃げだしました。背後でゴトリと蓋が閉まる音がしました。

マンホールの人……いえ、怪物と言った方がいいのでしょうか。少なくとも人間には見えませんでした。
お母さんですか?びしょぬれの服で帰ってきた上に傘をなくしたのでめちゃくちゃ怒ってましたよ。

2年生になった頃からマンホールの怪物と邂逅が増え始めました。怪物は決まって私が一人でいる時に現れます。
町中にはたくさんのマンホールがあるけど、その下の道は全部繋がってるからどこへでも行けます。
怪物は私の行く先々に先回りして、待ち伏せて、スーパーボールを欲しがりました。ひとりぽっちで退屈してたんだと思います。気持ちはよくわかりました。

ある夜、お母さんに追い出されました。お米を炊くのを忘れたからです。炊飯器のコードが抜けてたんです。
お腹が空いて仕方なかったので雨の中を歩いて近くのコンビニに行きました。だけどポケットの中の小銭じゃたいしたものがありません。棚の魚肉ソーセージがとってもおいしそうだったので、一本だけ買いました。オレンジのセロファンに包まれたピンク色の加工肉。だけど不器用な子供の手じゃ剥がすのが困難で、食べられずにしょげ返りました。

失敗した。ソーセージ以外にすればよかった。とぼとぼ歩いていた所、学校のすぐ裏手、人けのない高架下のマンホールが開きました。怪物が物欲しそうにこっちを見ていました。きっとお腹がすいてるんです、気持ちはよくわかりました。

「いいよ、あげる」

その場にしゃがんで無造作にソーセージを突き出すと、先端を大きく一口齧り取りました。それでセロファンが破け、私も食べられるようになりました。有難いです。私は怪物と交互にソーセージを食べました。魚肉のすり身の味がしました。

「お腹すいてたんだね」

怪物は肉食……いいえ、雑食みたいでした。私はマンホールで怪物を飼ってるんだ。先生にも同級生にもお母さんにも内緒で。そうおもい、生まれて初めての優越感に酔いました。

だけどソーセージを分けてあげたのは軽率だったかもしれません。怪物は味をしめ、ちょうだいちょうだいと執拗に言ってくるようになったのです。いえ、喋れませんよ?でも目を見ればわかります、せがんでるんです。

私はマンホールで飼ってる怪物にごはんをもってきてあげることにしました。


小4の時、クラスの係決めをしました。私は臭くて汚くて誰もやりたがらなかった飼育係に立候補しました。
あんなに元気よく手を挙げたのは初めてだったので、先生も驚いていましたね。
同じ飼育委員の男子は意地悪で嫌いでした。放課後塾があるとかで、私に掃除を押し付けて帰ります。あとはやっとけ、チクんなよ。好都合でした。彼が正門をでてくのを見送るやいなや、私は竹箒を放りだし、小屋のうさぎを捕まえました。白くてふわふわ、生まれたての可愛いうさちゃんでした。

もちろん可哀想だって思いましたよ、当たり前じゃないですか。でもペットがお腹をすかせてるのをほっとけません、あの子に餌をあげないと。私はうさちゃんを服に隠し、高架下のマンホールへ赴きました。手の甲でノックすると蓋が持ち上がり、爬虫類の目が覗きました。

「はい、お食べ」

私がさしだすうさちゃんをひったくり蓋を下ろす怪物。ボリゴリムシャムシャと咀嚼音が響きました。
飼育小屋から一羽うさぎが消えても皆は気付きませんでした。二羽目、三羽目、四羽目……そろそろ危ないかな、と思いました。案の定、何度目かの当番の日に男子が気付きました。

「お前、うさぎどこやったんだよ?減ってんじゃん」

ばれちゃいました。男子はとても怒ってました。うさぎを逃がしたのがバレたら自分が叱られると騒ぎ、私をひどくぶちました。仕方ない。私はため息を吐き、彼をマンホールに連れていきました。

「ここにうさぎがいんのかよ?嘘吐いてんじゃねーだろな」

彼が疑うので、私は静かに首を振って言いました。ホントだよ、マンホールに耳を付けてみて。声が聞こえるでしょ。真顔で促された彼は、おずおずとマンホールの上に突っ伏しました。キーッ、キーッ、甲高い声がしました。怯えきったうさぎの声でした。

恐怖に顔を引き攣らせて起き上がった彼をよそに、ボリガリゴリムシャペチャクチャ咀嚼音が響き渡りました。物凄い声で叫び、あとじさる彼の足を怪物の手が掴みました。
お願い助けてママ、死に物狂いで抵抗する彼を中に引きずり込んでく怪物。私は傍らに突っ立ち、それを見下ろしていました。ランドセルが邪魔そうだな、と思いました。声がうるさかったので、とどめをさすのを手伝ってあげることにしました。一旦ランドセルを外し、習字の授業で使用済みの硯を出し、それで殴り付けました。何回か繰り返すと額が割れ、頭蓋骨がひしゃげる感触がしました。

彼はぐったりしてマンホールに消え、怪物は満腹になりました。しばらくは。

……なんだかおかしな成り行きになりました。私が飼い主だったんです、優越感を感じてたんです。なのに途中から……高学年の頃には、私は怪物の飼育係になってたんです。怪物ははらぺこでした。食べごたえのある餌をあげなきゃいけません。

小学校の裏手の高架下は、夜ともなれば人通りがなく、餌を誘い込むのにぴったりの場所でした。

赤いランドセルを背負ってると面白いように釣れました。ごはんはホームレスのおじさんやサラリーマンのおじさん、色々でした。おじさんたちが私の身体をべたべた触っている間、怪物はじっと息を殺し、こっちを見ていました。目で合図をすると鱗に覆われた手がとびだし、おじさんたちの足首を掴んでマンホールに引きずり込むんです。あとはポリガリゴリムシャムシャ、ぱっくんです。

たくさん食べたので私の怪物はどんどん大きくなりました。残り物は全部片付けてくれます。ごはんを残さないいい子です。町ではどんどん人が消えていきました。マンホールに住む怪物の噂が流れだしたのはちょうどその頃でしょうか。ばれないように注意していたのですが……誰が気付いたのでしょうか。

最初は実体もあやふやだったのに、すっかり怪物らしくなりました。あえてマンホールを開けることはしませんでした。タブーだったんです。怪物はかくれんぼしてるんだから、それを暴くのは約束破りでした。

マンホールが多い町では人が消えます。この町も例外じゃありません。私だけがその理由を知ってます。怪物が食べてるからです。野良猫やネズミもあげましたが、やっぱり人間が一番おいしいみたいでした。

人の肉の味を覚えたら魚肉ソーセージでは物足りません。怪物の欲求は次第にエスカレートし……女の人の肉がいい、と言い出しました。いえ、喋ってません。目を見ればわかるんです。女の人の柔らかいお肉が欲しいって訴えてたんです。

さて困りました。男の人ならなんとかなります。大半はSNSを介して連絡をとりました。みんな怪物の餌になるとも知らないで、簡単に付いてきましたよ。「高架下でやるのも興奮するね」なんて、変に期待してた人もいたっけ。

お財布からお金を抜くのって悪いことですか?最初からくれる予定だったんですよ?ATMでおろすとこ付き添いましたし……ああ、それがきっかけでしたね。コンビニのカメラのアングル、注意しとくんでした。制服着てたのもダメですよね。アレ着てくと喜ぶから。最後に少し位おいしい思いさせてあげたいでしょ?苦しみ抜いて死んだ動物のお肉はまずいって本で読みました。気持ちよく死んだお肉の方がおいしいです。


マンホールってお皿に似てません?
おいしいお肉をのせた皿。

女の子を連れてくるのは大変でしたよ。よその人やホームレスと違って学生はすぐ足が付く。
失踪した子たちの親は私んちみたいに放任主義じゃないから、一日帰ってこなかっただけですぐ通報する。過保護ですよね、もっとどっかり構えてほしい。

でも、なんとかしました。クラスで孤立してる子に声をかけました。一緒に遊ぼって言ったら嬉しそうにしてた。夜、塾帰りの彼女と高架下で待ち合わせました。家の事で相談したいって暗い顔で切り出したら、まんまと食い付いてくれました。
あそこは夜になると人けがないから、聞かれたくない話をするには絶好のロケーションでした。
私に同情して付いてきてくれた子。お腹の底では私の事、可哀想だって思ってたんでしょうね。見下してたんでしょうね。どうしたの、なんでも言って、必要ならうちの親にも相談するから……演技とか別にいりませんでしたよ、あの夜もお母さんにぶたれて顔が腫れてたから。
マンホールを背にした彼女と間合いを詰め、その足が蓋を踏む瞬間を心待ちにしました。
スニーカーの片方がかかった瞬間、怪物が現れました。
誤算だったのは彼女の反応の素早さです、足首を掴まれると同時に防犯ブザーのピンを引き抜いたんです。
最悪でした。私は全体重をかけ彼女の手を踏みにじり、卵型のブザーを蹴飛ばしました。これから食べられる恐怖と裏切られたショックに凍り付いた顔で、彼女はマンホールの闇に消えていきました。防犯ブザーをアスファルトの地面で叩き壊した後は帰りました。

次の日は夕立でした。ザーザー、ザーザー、雨が降っていました。担任の先生は行方不明になった同級生の情報を募っていました。私は上手くやったのでばれないはずです。怪物も満ち足りました。やっぱり女の子のお肉は柔くておいしいんだな、と感心しました。味を想像して、口の中に唾液が湧き返りました。

ただいまも言わず玄関の引き戸を開けると、居間のテレビが点けっぱなしでした。お母さんの姿は見当たりません、トイレでしょうか。階段を上って部屋に行くと、ドアの向こうから物音がしました。
鞄を投げ出してドアをこじ開ければ、お母さんが勝手にクローゼットを開け、お菓子の缶を持っていました。

「これは何よ」

家を出ていくために貯めたお金でした。
怪物のごはんにしたおじさんたちからとったお札の束でした。

窓の外では夕立が激しくなり、一向に止む気配がありません。問い詰められてもだんまりを決め込めば、案の定お母さんはキレ散らかし、娘を口汚く罵り始めました。私のお肉はおいしいから高く売れただけなのに、何を怒るのでしょうか。

「汚い体で稼いだ汚い金は没収するから!」

いけません。だめでした。激しい揉み合いの末、輪ゴムで束ねた紙幣を力ずくでひったくり、裸足で家から飛び出しました。どしゃ降りが全身を叩きました、恐ろしい形相のお母さんが追ってきます。片手には包丁を振り上げていました。お誂え向きです。

家の前にはマンホールがありました。私の怪物はそこにいます。顔を叩く雨が気持ちよくて、狂ったように笑いました。

「ごはんの時間だよ!」

マンホールが勢い良く弾け飛び、怪物が這い上がってきました。お母さんは放心状態からただちに回復し、ヒステリックな奇声を上げて鋭利な包丁を振り回しました。
助けて、って懇願されました。だけど私は怪物の飼育係なので、この子にお肉をあげなければいけません。地面を這いずった怪物がお母さんの足首を掴み、引き倒し、雨の中をずるずる引きずっていきました。私はお母さんの手首を踏んで固定し、包丁を奪い取りました。

「食べやすくしてあげる」

お肉はブツ切りにしました。

怪物は喜んでいました。

……これで終わりです。
雨、まだ続いてますね。

私、どうなるんでしょうか。

少年院送りかな。
心神喪失判定かな。

本当に見たのに……やっぱり刑事さんも信じてくれないんですね。信じてくれたのは、ううん、信じるふりをしてくれたのは幼稚園の先生だけ。

下水管の破裂でマンホールが爆ぜたなんて嘘っぱちです、ちゃんと調べてください。怪物がやったんです。助けてくれたんです。お母さんはバラバラになってアイツのお腹の中です。他の人たちも。

マンホールってお皿みたいですよね。
ごちそうがのっかってるんです。
踏んだら一巻の終わり、胃袋の底へ落ちていく。

ほら、相棒さんが戻ってきましたよ。T県在住男性のスーツの切れ端が下水で見付かったって……言ったとおりでしょ?多分カメラに映ってた人です、もっと上手くやるんでした。

マンホールの下には怪物がいるんです。私は知っていた。なんで地雷原と知らず町を歩けるんでしょうね、みんな。

……あ、あ。
道路の濁流にのって……サンダル!昔なくした!この雨で下水道にひっかかってたのが打ち寄せられたんですね、ボートみたいにぷかぷか浮いてる。

ねえ刑事さん、嘘じゃないでしょ。
歯型。

怪物って本当にいるんですよ。
私はよそってあげただけです。
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