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第6回活動報告:ハゲタカファンドと戦え
退職者から話を聞こう(その1)
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(4)退職者から話を聞こう
俺たちはダウラファンドに買収された会社がどうなったのか調べていたのだが、俺は公表資料から調べても限界があることを悟った。
何とか内部情報を入手する方法を探していると、ポールがホラント証券の元同僚からダウラアセットマネジメントを退職したルーカスを紹介してもらえることになった。
ポールが早速ルーカスに連絡すると、ルーカスが総務省に来てくれることになった。
面談にはルイーズが同席することになった。
俺が出席すると、ルーカスが驚くかもしれないという配慮からだ。
ルイーズとポールが会議室に入ると、ルーカスは窓の外を見ていた。
長い時間凝視しているから、よほど気になることがあるのだろう。
ポールはルーカスに話しかけた。
「何か気になることでもあります?」
「あそこを歩いているアロハシャツと短パンの人、国王ですか?」とルーカスが言った。
ルイーズが窓の外を見ると、国王がアイスを食べながら歩いていた。お気に入りのガリガリ君を嬉しそうに食べている。
「そうね。あのアイス食べているのが国王。この時間に売店でアイスを買うのが日課なの。」とルイーズが言った。
「テレビでしか見たことなかったんですけど、国王はスーツ着ないんですね。」とルーカスは言った。
「記者会見が無い時は、だいたいあの格好ですね。他の王族もスーツは着ていませんし、働いている職員(公務員)も全員カジュアルです。」とポールが説明した。
「へー。イメージとは違うなー。窓の外を見たら、アロハシャツの国王が歩いてたので、ビックリしました。」
「そうですよね。私も初めは驚きました。ちなみに、僕たちの部署は第4王子のダニエルが部長を兼務しています。私は部長がスーツを着ているところを見たことがありません。」
「王族カレンダーの人たちが、身近にいるんですね。」
「いますね。部長はこの会議に参加したいと言ったのですが、ルーカスが緊張すると思ったので断りました。なので、今日は不参加です。」とポールは答えた。
「そうそう、自己紹介が遅くなりました。私の名前は既にご存じだと思いますが、ルーカスです。前職はダウラアセットマネジメントで、現在はトルネアセットマネジメントで働いています。」とルーカスは言った。
トルネアセットマネジメントは劣後社債の買取りでやり取りしている運用会社だ。
「あっ、シモ社長のところですか?」とポールが聞いた。
「そうです。劣後社債の買取りでご尽力いただいたので、社長のシモから内部調査部のみなさんに協力するように言われています。」
「世間は狭いですね。今回、ホラント証券の元同僚からルーカスを紹介してもらいましたが、トルネアセットマネジメントに直接聞けば良かったですね。」
「そうですね。」
「それで、具体的に聞きたいことはダウラファンドの企業買収についてです。ダウラファンドはアクティビストとして知られていますが、約2年前から買収ファンドの運用をスタートしています。買収ファンドの運用がどういう経緯で始まって、買収した会社をどこに売却しているのかを、教えてほしいんです。」とポールは言った。
「まず、私にはダウラアセットマネジメントの退職時に締結した合意書で守秘義務がありますから、具体的な会社名をお教えすることはできません。守秘義務契約に抵触しない範囲内で、概要だけお伝えすることでよろしいですか?」とルーカスは言った。
「もちろんです。概要だけで結構です。」
「それでは、ダウラアセットマネジメントが買収ファンドの運用を開始した経緯からお話しします。」
「はい。」
「買収ファンドの運用は、純粋に従来の運用スタイルとは別の投資運用スタイルを持つためでした。アクティビストファンドは割安の上場会社をターゲットにして、その会社の株価を上げることを目的にしています。ダウラファンドからの提案が会社に受け入れられる場合もあれば、そうでない場合もあります。ダウラファンドの提案が受け入れられない場合は、株主提案を行って株主総会で判断してもらうことになります。」
「プロキシーファイト(委任状争奪戦)ですね?」
※プロキシ―ファイトとは、株主総会における議案の採否をめぐって、ある株主と会社が他の株主の委任状を争奪することです。
「そうです。プロキシーファイトが起こると、マスコミが面白おかしく取り上げます。そうなると『ダウラファンドが悪、会社が善』のような風潮が生まれて、ダウラファンドのレピュテーション(風評)が悪くなるんです。」
「確かに。マスコミの報道を見ていると、そういう傾向はありますね。」
「プロキシーファイトでは、株主総会における議決権の委任状を他の株主から入手する必要があるのに、マスコミは会社の味方をするから委任状が集まりません。すると、ダウラファンドの株主提案は否決されてしまいます。」
「分かります。特に大企業はレピュテーションを気にしますから。」
ポールはルーカスの言いたいことを理解した。
<続く>
俺たちはダウラファンドに買収された会社がどうなったのか調べていたのだが、俺は公表資料から調べても限界があることを悟った。
何とか内部情報を入手する方法を探していると、ポールがホラント証券の元同僚からダウラアセットマネジメントを退職したルーカスを紹介してもらえることになった。
ポールが早速ルーカスに連絡すると、ルーカスが総務省に来てくれることになった。
面談にはルイーズが同席することになった。
俺が出席すると、ルーカスが驚くかもしれないという配慮からだ。
ルイーズとポールが会議室に入ると、ルーカスは窓の外を見ていた。
長い時間凝視しているから、よほど気になることがあるのだろう。
ポールはルーカスに話しかけた。
「何か気になることでもあります?」
「あそこを歩いているアロハシャツと短パンの人、国王ですか?」とルーカスが言った。
ルイーズが窓の外を見ると、国王がアイスを食べながら歩いていた。お気に入りのガリガリ君を嬉しそうに食べている。
「そうね。あのアイス食べているのが国王。この時間に売店でアイスを買うのが日課なの。」とルイーズが言った。
「テレビでしか見たことなかったんですけど、国王はスーツ着ないんですね。」とルーカスは言った。
「記者会見が無い時は、だいたいあの格好ですね。他の王族もスーツは着ていませんし、働いている職員(公務員)も全員カジュアルです。」とポールが説明した。
「へー。イメージとは違うなー。窓の外を見たら、アロハシャツの国王が歩いてたので、ビックリしました。」
「そうですよね。私も初めは驚きました。ちなみに、僕たちの部署は第4王子のダニエルが部長を兼務しています。私は部長がスーツを着ているところを見たことがありません。」
「王族カレンダーの人たちが、身近にいるんですね。」
「いますね。部長はこの会議に参加したいと言ったのですが、ルーカスが緊張すると思ったので断りました。なので、今日は不参加です。」とポールは答えた。
「そうそう、自己紹介が遅くなりました。私の名前は既にご存じだと思いますが、ルーカスです。前職はダウラアセットマネジメントで、現在はトルネアセットマネジメントで働いています。」とルーカスは言った。
トルネアセットマネジメントは劣後社債の買取りでやり取りしている運用会社だ。
「あっ、シモ社長のところですか?」とポールが聞いた。
「そうです。劣後社債の買取りでご尽力いただいたので、社長のシモから内部調査部のみなさんに協力するように言われています。」
「世間は狭いですね。今回、ホラント証券の元同僚からルーカスを紹介してもらいましたが、トルネアセットマネジメントに直接聞けば良かったですね。」
「そうですね。」
「それで、具体的に聞きたいことはダウラファンドの企業買収についてです。ダウラファンドはアクティビストとして知られていますが、約2年前から買収ファンドの運用をスタートしています。買収ファンドの運用がどういう経緯で始まって、買収した会社をどこに売却しているのかを、教えてほしいんです。」とポールは言った。
「まず、私にはダウラアセットマネジメントの退職時に締結した合意書で守秘義務がありますから、具体的な会社名をお教えすることはできません。守秘義務契約に抵触しない範囲内で、概要だけお伝えすることでよろしいですか?」とルーカスは言った。
「もちろんです。概要だけで結構です。」
「それでは、ダウラアセットマネジメントが買収ファンドの運用を開始した経緯からお話しします。」
「はい。」
「買収ファンドの運用は、純粋に従来の運用スタイルとは別の投資運用スタイルを持つためでした。アクティビストファンドは割安の上場会社をターゲットにして、その会社の株価を上げることを目的にしています。ダウラファンドからの提案が会社に受け入れられる場合もあれば、そうでない場合もあります。ダウラファンドの提案が受け入れられない場合は、株主提案を行って株主総会で判断してもらうことになります。」
「プロキシーファイト(委任状争奪戦)ですね?」
※プロキシ―ファイトとは、株主総会における議案の採否をめぐって、ある株主と会社が他の株主の委任状を争奪することです。
「そうです。プロキシーファイトが起こると、マスコミが面白おかしく取り上げます。そうなると『ダウラファンドが悪、会社が善』のような風潮が生まれて、ダウラファンドのレピュテーション(風評)が悪くなるんです。」
「確かに。マスコミの報道を見ていると、そういう傾向はありますね。」
「プロキシーファイトでは、株主総会における議決権の委任状を他の株主から入手する必要があるのに、マスコミは会社の味方をするから委任状が集まりません。すると、ダウラファンドの株主提案は否決されてしまいます。」
「分かります。特に大企業はレピュテーションを気にしますから。」
ポールはルーカスの言いたいことを理解した。
<続く>
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