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第6回活動報告:ハゲタカファンドと戦え
MBO(Management Buyout)(その3)
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(6)MBO(Management Buyout) <続き>
「ネール・マテリアルの株式市場における時価総額は10億JDだけど、収益性を考慮して株式価値を計算すると80億JDです。つまり、他社がネール・マテリアルを100%買収する際には80億JDが適正価格だと思っているのです。」
「80億JD・・・」
「言い方を変えると、1株当り800JDの価値があるネール・マテリアルは、株式市場では1株当り100JDと評価されている、ということですね。」と俺は言った。
「市場株価の8倍が適正価格・・・。」
「そういうことです。」
「じゃあ、ダウラファンドはTOB価格を1株当り800JDまで引き上げてくる、ということですか?」とアナンヤは言った。
「そこまで引き上げるかは分からないけど、可能性はあります。だから、ダウラファンドがどこまで本気かによる、と先ほど私は言ったんです。」
「例えば、ダウラファンドがネール・マテリアル株式を早く売却して利益を確定したいと思っていたら、我々がTOB価格を1株当り150JDに変更したら売るかもしれない。ということですね?」とアナンヤは言った。
「そうです。逆に、ダウラファンドが本気でネール・マテリアルを買収したいと考えていれば、TOB価格を1株当り800JDに設定しても売却しないかもしれません。」
まるで禅問答のようだ、と俺は思った。
ダウラアセットマネジメントの買収ファンドはPEファンドの出身者が運用している。
だから、ネール・マテリアルが非上場会社になったら80億JDで売却できることを当然知っている。
ただ、会社の株式価値は経済環境に影響を受けるから、どうしても割高な時期と割安な時期が存在する。つまり、ダウラファンドがネール・マテリアルを買収して数年後にネール・マテリアルを売却する場合、売却時点の経済環境が現時点と変わらなければ80億JDで売却できるが、売却時点の経済環境が現時点よりも悪化したら株式価値は80億JDよりも下がってしまう。
また、ダウラアセットマネジメントはアクティビストファンドと買収ファンドを運用しているが、両者の利益は厳密には一致しない。
アクティビストファンドはネール・マテリアル株式をできる限り高く売却したい。運用益を最大化するためだ。
一方、買収ファンドはネール・マテリアル株式をできる限り安く購入したい。ネール・マテリアルの取得価格が低い方が、売却時に利益が出やすいからだ。
すなわち、ダウラファンド内部におけるTOB価格の決定はアクティビストファンドと買収ファンドの調整が必要になるはずだ。だから、ダウラファンドがTOB価格を1株当り800JDまで引き上げてくる可能性は低い、と俺は考えている。
アナンヤたちがMBOを成功させるためには、ネール・マテリアルをTOBによって買収する必要があるためアナンヤたちのTOB価格はダウラファンドのTOB価格よりも高くしないといけない。加えて、資金負担を考えると可能な限り安いTOB価格で株式を購入した方が良い。
俺がアナンヤにアドバイスできることは一つだけだ。
「私からのアドバイスは一つだけです。」と俺はアナンヤに言った。
「なんでしょう?」
「TOB価格の上限を1株当り800JDと考えて、ダウラファンドが出してきたTOB価格よりも少しだけ高い価格でTOB価格を引き上げていくしかありません。」
「牛歩戦術みたいですね。」とアナンヤは言った。
※牛歩戦術とは、議会内での投票の際、故意に投票箱までの移動に時間をかける行為です。 牛の歩みのようにゆっくりと投票箱まで移動することから、この名称で呼ばれます。
「確かに似ていますね。TOB価格の引上げとTOB期間の延長をし続けていくから、相手への嫌がらせですね。」
「分かりました。今後のダウラファンドへの対応は『牛歩戦術』でいくことにします。早速会社に戻って方針を決定します。」
アナンヤはそういうと俺たちに礼を言って総務省を後にした。
こうしてアナンヤたちネール・マテリアルのダウラファンドに対する『牛歩戦術』が開始した。
「ネール・マテリアルの株式市場における時価総額は10億JDだけど、収益性を考慮して株式価値を計算すると80億JDです。つまり、他社がネール・マテリアルを100%買収する際には80億JDが適正価格だと思っているのです。」
「80億JD・・・」
「言い方を変えると、1株当り800JDの価値があるネール・マテリアルは、株式市場では1株当り100JDと評価されている、ということですね。」と俺は言った。
「市場株価の8倍が適正価格・・・。」
「そういうことです。」
「じゃあ、ダウラファンドはTOB価格を1株当り800JDまで引き上げてくる、ということですか?」とアナンヤは言った。
「そこまで引き上げるかは分からないけど、可能性はあります。だから、ダウラファンドがどこまで本気かによる、と先ほど私は言ったんです。」
「例えば、ダウラファンドがネール・マテリアル株式を早く売却して利益を確定したいと思っていたら、我々がTOB価格を1株当り150JDに変更したら売るかもしれない。ということですね?」とアナンヤは言った。
「そうです。逆に、ダウラファンドが本気でネール・マテリアルを買収したいと考えていれば、TOB価格を1株当り800JDに設定しても売却しないかもしれません。」
まるで禅問答のようだ、と俺は思った。
ダウラアセットマネジメントの買収ファンドはPEファンドの出身者が運用している。
だから、ネール・マテリアルが非上場会社になったら80億JDで売却できることを当然知っている。
ただ、会社の株式価値は経済環境に影響を受けるから、どうしても割高な時期と割安な時期が存在する。つまり、ダウラファンドがネール・マテリアルを買収して数年後にネール・マテリアルを売却する場合、売却時点の経済環境が現時点と変わらなければ80億JDで売却できるが、売却時点の経済環境が現時点よりも悪化したら株式価値は80億JDよりも下がってしまう。
また、ダウラアセットマネジメントはアクティビストファンドと買収ファンドを運用しているが、両者の利益は厳密には一致しない。
アクティビストファンドはネール・マテリアル株式をできる限り高く売却したい。運用益を最大化するためだ。
一方、買収ファンドはネール・マテリアル株式をできる限り安く購入したい。ネール・マテリアルの取得価格が低い方が、売却時に利益が出やすいからだ。
すなわち、ダウラファンド内部におけるTOB価格の決定はアクティビストファンドと買収ファンドの調整が必要になるはずだ。だから、ダウラファンドがTOB価格を1株当り800JDまで引き上げてくる可能性は低い、と俺は考えている。
アナンヤたちがMBOを成功させるためには、ネール・マテリアルをTOBによって買収する必要があるためアナンヤたちのTOB価格はダウラファンドのTOB価格よりも高くしないといけない。加えて、資金負担を考えると可能な限り安いTOB価格で株式を購入した方が良い。
俺がアナンヤにアドバイスできることは一つだけだ。
「私からのアドバイスは一つだけです。」と俺はアナンヤに言った。
「なんでしょう?」
「TOB価格の上限を1株当り800JDと考えて、ダウラファンドが出してきたTOB価格よりも少しだけ高い価格でTOB価格を引き上げていくしかありません。」
「牛歩戦術みたいですね。」とアナンヤは言った。
※牛歩戦術とは、議会内での投票の際、故意に投票箱までの移動に時間をかける行為です。 牛の歩みのようにゆっくりと投票箱まで移動することから、この名称で呼ばれます。
「確かに似ていますね。TOB価格の引上げとTOB期間の延長をし続けていくから、相手への嫌がらせですね。」
「分かりました。今後のダウラファンドへの対応は『牛歩戦術』でいくことにします。早速会社に戻って方針を決定します。」
アナンヤはそういうと俺たちに礼を言って総務省を後にした。
こうしてアナンヤたちネール・マテリアルのダウラファンドに対する『牛歩戦術』が開始した。
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