第4王子は中途半端だから探偵することにした

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回顧録2

若かりし記憶(その5)

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(3)若かりし記憶 <続き>

・帰ってきたら、また会おう

私はルイスに上場することを提案して考えてもらうことにした。
ルイスは『考えてみる』と言っていたが、前向きとは思えなかった。
結論が出るのに時間が掛かりそうだから、2~3日後に連絡して状況を聞こうと私は考えた。

ネール・マテリアルから立ち去ろうとする私をアナンヤが引き留めた。
私はアナンヤの近況を知らなかったから、どう話しかけていいか考えていた。
私のその状況を見たアナンヤは私に言った。

「私が留学する時、ホセは『帰ってきたら、また会おう』って言ってたよね。だから来てくれたの?」

私はあの時『帰ってきたら、また会おう』とアナンヤに言ったのは覚えていた。
でも、アナンヤがジャービス王国に帰ってきたことは知らなかった。
事実に即した答えは『No』だ。

でも、私は空気が読める。
この状況で正解と思われる回答をした。

「そうだよ。あの時『また会おう』って言ったよね。」

「ありがとう。」とアナンヤは言った。

私は内心ほっとした。
もし、『私が帰ってきたのを伝えてなかったけど、どうやって知ったの?』とアナンヤに言われたらどうしようかと思っていたが、その質問はなさそうだ。

私は去り際に「また、前みたいに連絡してもいいかな?」と聞いたら、アナンヤは「どうでしょう?」と返してきた。

あれから40年経つ。
懐かしい話だ・・・。


・そして現在

仕事が終わって総務省から自宅に帰ってきた。

今日も疲れた・・・。
風呂に入ってビールでも飲もう!

今日はネール・マテリアルの『牛歩戦術』について部長と話していた。

部長は私に「いいぞ、その調子だ!もう少しでダウラファンドの心が折れるよ。」と言った。

確かにその通りだと思う。
ダウラファンドは投資家から資金調達しているから、契約で定められた投資可能な期間がある。
ネール・マテリアルへのTOB(株式公開買付け)が長引くほど、投資可能な期間が削られていくからダウラファンドは不利になる。

正直に言うと、初めに『牛歩戦術』を聞いたときは『何だ?このふざけた作戦は?』と思った。
でも、今思えばこの作戦は有効だ。この上ない効果を上げている。

私がネール・マテリアルへのTOBの対応を考えていたら妻が部屋に入ってきた。

「あら、早かったのね。飲み会は無かったの?」

「今日は何も無かったから、そのまま帰ってきた。」

「そう言えば、部長は何て言ってた?」

「今のまま『牛歩戦術』を続ければいいと言ってたよ。『もう少しでダウラファンドの心が折れる』ってさ。」

「はははー。あなたの部長、面白いわねー。」

「そうだね。あの兄弟は長男以外、性格が悪いんだって。」

私はそう言って、冷蔵庫に缶ビールを取りに行った。

「アナンヤも飲むかい?」

「後にする。私はまだ仕事が残っているから。」

アナンヤはそういうと、自宅の隣にあるネール・マテリアルに戻っていった。

<終わり>
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