169 / 197
第7回活動報告:通貨危機を回避しろ
名探偵を探せ!(その3)
しおりを挟む
(2)名探偵を探せ! <続き>
ジョルジュが言うには、警察の捜査においては犯人が分かっても事件は解決しないらしい。俺の予想に反した回答だ。
「犯人を推理したら終わりじゃないの?」と俺はジョルジュに聞いた。
「犯人が分かっても事件は終わりませんね。もし名探偵の推理が間違っていたらどうします?」
「誤認逮捕ということ?」
「そうです。冤罪(えんざい)です。誤認逮捕した後に真犯人が見つかったら大変です。警察の威信に係ります。だから、冤罪の可能性を下げるために捜査は慎重にしないといけないんです。」
「じゃあ、捜査に名探偵は必要ないってこと?」
「そこまでは言いません。私が言いたいのは、名探偵がいても事件が解決する訳ではないということです。」
「事件を解決するスペシャリストを目指せってことかな?」
「そうです。事件を解決するためにはスペシャリストでないといけないのです。ちなみに、今まで内部調査部で調査した事件は解決したと仰いましたが、どういう調査の流れだったのでしょうか?」とジョルジュは俺に質問した。
「言うのは恥ずかしいんだけど・・・。」
「大丈夫ですよ。笑いませんから。」
そう言いながらも、ジョルジュの目は笑っていない。
俺はジョルジュに内部調査部の調査内容を説明することにした。
「例えば、3つ目の案件は劣後社債を使った高齢者向けの投資詐欺事件だと思っていた。そして怪しいと思っていた証券会社を調べたんだけど、証券会社は犯人じゃなかった。次に怪しいと思った運用会社を調べたんだけど、運用会社も犯人じゃなかった。最後に疑ったのはIFA(Independent Financial Advisor)だ。IFAも調べたけど犯人じゃなかった。」
「犯人はいたんですか?」
「結論として、この事件を起こした直接の犯人はいなかった。偶然にも投資家の社債売却時期が重なって、他の投資家の狼狽売りが発生したんだ。それで、金融市場がクラッシュしそうになった・・・。」
「犯人はいなかった。つまり、容疑者を全部潰していって、最終的に事件の結論に到着した。そういうことですか?」
「事件の結論が『犯人がいなかった』であればそうだね。」
「いいと思いますよ。捜査の進め方として間違っていません。」とジョルジュは言った。
「いいって、どういうこと?」
「捜査に必要な手続きを全て網羅(もうら)しているわけですから、あるべき捜査をしています。例えば、警察の捜査においては効率性よりも網羅性を重視します。」
「網羅性?」
「つまり、容疑者への聴取を全て行ったか、証拠は全て集めたか、犯行の動機を全て検討したか、といった捜査手続きの網羅性です。先ほど説明したように、警察は誤認逮捕を避けるために捜査手続を全て網羅しないといけません。効率が悪くても、網羅性が重視されます。」
「へー。網羅性かー。」
「いま聞いた感じでは、内部調査部は名探偵ではなさそうです。だけど、スペシャリストと言えるでしょう。」とジョルジュは俺に言った。
「俺たちがスペシャリスト?」俺はジョルジュに聞いた。
「ええ、スペシャリストです。」
俺は『名探偵』を目指していたはずだ。
でも、『スペシャリスト』と言われると悪い気はしない。
これからはスペシャリストと名乗ればいいのではないか?
調査のスペシャリスト・・・、カッコイイかもしれない。
俺は名探偵ではない。スペシャリストだ。
俺は名探偵ではない。スペシャリストだ。
俺は名探偵ではない。スペシャリストだ。
3回唱えてみた。
何となく俺はスペシャリストな気がしてきた。
***
こうして俺は名探偵を目指すことを止めた。
名探偵の採用も中止だ。
なぜなら、俺たちはスペシャリストだから!
ジョルジュが言うには、警察の捜査においては犯人が分かっても事件は解決しないらしい。俺の予想に反した回答だ。
「犯人を推理したら終わりじゃないの?」と俺はジョルジュに聞いた。
「犯人が分かっても事件は終わりませんね。もし名探偵の推理が間違っていたらどうします?」
「誤認逮捕ということ?」
「そうです。冤罪(えんざい)です。誤認逮捕した後に真犯人が見つかったら大変です。警察の威信に係ります。だから、冤罪の可能性を下げるために捜査は慎重にしないといけないんです。」
「じゃあ、捜査に名探偵は必要ないってこと?」
「そこまでは言いません。私が言いたいのは、名探偵がいても事件が解決する訳ではないということです。」
「事件を解決するスペシャリストを目指せってことかな?」
「そうです。事件を解決するためにはスペシャリストでないといけないのです。ちなみに、今まで内部調査部で調査した事件は解決したと仰いましたが、どういう調査の流れだったのでしょうか?」とジョルジュは俺に質問した。
「言うのは恥ずかしいんだけど・・・。」
「大丈夫ですよ。笑いませんから。」
そう言いながらも、ジョルジュの目は笑っていない。
俺はジョルジュに内部調査部の調査内容を説明することにした。
「例えば、3つ目の案件は劣後社債を使った高齢者向けの投資詐欺事件だと思っていた。そして怪しいと思っていた証券会社を調べたんだけど、証券会社は犯人じゃなかった。次に怪しいと思った運用会社を調べたんだけど、運用会社も犯人じゃなかった。最後に疑ったのはIFA(Independent Financial Advisor)だ。IFAも調べたけど犯人じゃなかった。」
「犯人はいたんですか?」
「結論として、この事件を起こした直接の犯人はいなかった。偶然にも投資家の社債売却時期が重なって、他の投資家の狼狽売りが発生したんだ。それで、金融市場がクラッシュしそうになった・・・。」
「犯人はいなかった。つまり、容疑者を全部潰していって、最終的に事件の結論に到着した。そういうことですか?」
「事件の結論が『犯人がいなかった』であればそうだね。」
「いいと思いますよ。捜査の進め方として間違っていません。」とジョルジュは言った。
「いいって、どういうこと?」
「捜査に必要な手続きを全て網羅(もうら)しているわけですから、あるべき捜査をしています。例えば、警察の捜査においては効率性よりも網羅性を重視します。」
「網羅性?」
「つまり、容疑者への聴取を全て行ったか、証拠は全て集めたか、犯行の動機を全て検討したか、といった捜査手続きの網羅性です。先ほど説明したように、警察は誤認逮捕を避けるために捜査手続を全て網羅しないといけません。効率が悪くても、網羅性が重視されます。」
「へー。網羅性かー。」
「いま聞いた感じでは、内部調査部は名探偵ではなさそうです。だけど、スペシャリストと言えるでしょう。」とジョルジュは俺に言った。
「俺たちがスペシャリスト?」俺はジョルジュに聞いた。
「ええ、スペシャリストです。」
俺は『名探偵』を目指していたはずだ。
でも、『スペシャリスト』と言われると悪い気はしない。
これからはスペシャリストと名乗ればいいのではないか?
調査のスペシャリスト・・・、カッコイイかもしれない。
俺は名探偵ではない。スペシャリストだ。
俺は名探偵ではない。スペシャリストだ。
俺は名探偵ではない。スペシャリストだ。
3回唱えてみた。
何となく俺はスペシャリストな気がしてきた。
***
こうして俺は名探偵を目指すことを止めた。
名探偵の採用も中止だ。
なぜなら、俺たちはスペシャリストだから!
0
あなたにおすすめの小説
『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』
月神世一
SF
【あらすじ】
「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」
坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。
かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。
背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。
目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。
鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。
しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。
部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。
(……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?)
現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。
すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。
精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。
これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。
音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、
幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。
魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。
そして再び出会う幼馴染。
彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。
もういい。
密かにやってた支援も打ち切る。
俺以外にも魔道具職人はいるさ。
落ちぶれて行く追放したパーティ。
俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。
魔輝石探索譚~大賢者を解放するため力ある魔石を探してぐるぐるしてみます~≪本編完結済み≫
3・T・Orion
ファンタジー
周りと違う異端の色合いを持つ少女は、通りすがりの若くしてオジサンになった訳あり男に力を借り、賢者の塔に縛られ続ける大切な美しき大賢者様の開放を目指し力ある魔石を求める。
助けを求めたオジサン、実は逃亡中の強者であり…ちょっと情けないのに強い。
見た目ギリ40代、実年齢…自称26歳の…人は好さそうなオジサン。
体内に持つ魔物魔石により、17歳の時に今の見た目となり…時が止まる。
隠された素性が少しずつ明らかになってゆくが、其の強さの理由は…少女達と同じ様な存在だったから。
少女もオジサンも…自身が持つ運命に、気付かぬ内に巻き込まれていく。
少女は自身の抱える不自由さと戦いながら、守護者となったオジサンや…途中得た仲間と共に目的に向かい道を進める。
だが…選んだ道は険しく、狙われ…翻弄され…其々が望む結果から少しずつズレていく…。
それでも守られるだけだった少女は、一歩踏み出し…困難に立ち向かうべく…思い定め進む。
賢者の石を体内に持つ、大賢者たちが継承する繋がりが鍵となる。
魔石から魔力を導き出し縦横無尽に戦う世界。
脱出し…求め…助け出し…逃れ…勝ち取り収める、5章完結。
力ある希有な魔輝石・天空の天輝石を探して少女もオジサンも周りもぐるぐると、運命に吹き飛ばされつつ色々な場所を回りながら…願い叶えます。
本編完結済みで、完結後のおまけ話を時々追加。
おまけ1は、オジサンと思いを寄せる美少女との話。2話完結
おまけ2は、他国の賢者の塔での、大賢者継承の話。3話完結
おまけ3は、少女と賢者の石に取り込まれた麗しの大賢者様のその後の話。6話完結
おまけ4は、少女のちょっとした悩みと仲間の日常。別立ての "守護者契約" と平行した話。7話完結
別に立ち上げてある2つも、本編のおまけ話。
魔心を持つ大賢者の周りの子 は、樹海の集落で自身の手で進む道を選び取る若者の話。26話+おまけ4話 完結
守護者契約~自由な大賢者達 は、守護者契約の解約の話。26話+おまけ4話 完結
※小説家になろうさんに投稿したものです。(直接投稿もしてみることにしました。結末は同じですが、一部変更点あり。)
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収
ソラ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ち、ソラ。
彼はレベル1の無能として蔑まれ、魔王討伐を目前に「お前のようなゴミはいらない」と追放を言い渡される。
だが、傲慢な勇者たちは知らなかった。
自分たちが人間最高峰の力を維持できていたのは、すべてソラの規格外のステータスを『借りていた』からだということを。
「……わかった。貸していた力、すべて返してもらうよ」
契約解除。返還されたレベルは9999。
一瞬にして力を失い、ただの凡人へと転落しパニックに陥る勇者たち。
対するソラは、星を砕くほどの万能感を取り戻しながらも、淡々と宿を去る。
静かな隠居を望むソラだったが、路地裏で「才能なし」と虐げられていた少女ミィナを助けたことで、運命が変わり始める。
「借金の利息として、君を最強にしてあげよう」
これは、世界そのものにステータスを貸し付けていた最強の『貸与者』が、不条理な世界を再定義していく物語。
(本作品はAIを活用して構成・執筆しています)
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる