僕と猫と米沢牛 ― 勝手に他人の半生を書いてみた

kkkkk

文字の大きさ
5 / 32
僕と猫と米沢牛

男の友情は容易く崩壊するものだ

しおりを挟む
(4)男の友情は容易く崩壊するものだ

家に帰ってきた武は、台所で夕飯を作っていた母親に「ただいま」と言って子供部屋に向かった。本当は一人の部屋が欲しいのだが、当時の子供たちはみんな同じ部屋で勉強したり遊んだりしていたから贅沢は言えない。

既に主税が殺害されたのだから、次は武が狙われるかもしれない。
犯人が次の行動を起こすまでどれくらいの時間が残されているだろう?

あまり時間的な猶予があると考えない方がいいだろう。できるだけ早く対策を決める必要がある。

兄弟が帰ってくるまであと30分。
武は兄弟が帰ってくるまでの間に今後の方針を考えることにした。兄弟が帰ってくると騒がしくて集中できない。

白い猫は放火犯を教えてくれても良さそうなものだが、どこかに行ってしまった。
犯人は教えてくれなかったがヒントはくれた。何もないよりはマシだ。

白い猫は、放火犯は同級生の誰かだと言っていた。
秘密の共有が男の友情だと思っていた武にとっては、ショッキングな事実だ。

武の読んだ少年漫画では『男同士の友情』死ぬまで続くように描かれていた。だから、『男同士の友情』がこんなに容易く崩れさるものだとは思っていなかった。
『女同士の友情』は男が絡むと直ぐに崩れると聞いたことがあるが、男の友情も負けず劣らず脆いものだ。

愚痴っても仕方ないから、武は今回の件を整理することにした。

まず、放火犯は同級生の4人だと仮定して考えることにする。
犯人が同級生4人以外だったら、武に危険がおよぶ可能性が低いから無視してもいい。

放火犯の同級生は、あの日みんなで家を出た後に主税の家に戻ったわけだ。武と同じ方向に帰った同級生がいれば容疑者から除外できるのだが、残念ながら全員武と別の方向だった。容疑者は4人のままだ。

武は4人の名前と顔を思い浮かべた。

中村昭、井上聡、堤博、安部茂

まず、放火犯として一番怪しいのは昭だ。
なんせ強盗を火かき棒で殴り殺した張本人だ。昭を犯人と仮定して事件を考えてみよう。

昭がみんなと別れた後、こっそりと主税の家に戻って、主税を殺害して、放火して強盗と主税の死体を焼いた。

これだけの手順を小学生が一人でこなせるのだろうか?

小学生の体力には大きな差はない。
もし昭が武器を使わなかったとしたら、主税を殴り殺すのは難しいだろう。
小学生が主税を殺害するには、凶器はマストだ。

凶器を使ったとしても、殺されそうになった主税は必死に抵抗しただろう。
昭が主税を一撃で殺害できなかったら、主税は家の中にある物を使って応戦したはずだ。
仮に主税を殺害できたとしても、昭も無傷では済まない。

あの日、強盗の後頭部に火かき棒が刺さったのは運が良かっただけだ。
強盗を一撃で殺害できたから良かったものの、もし失敗していたら強盗の激しい抵抗に遭っていただろう。武たちも無事ではなかったはずだ。
そんな奇跡が1日に2回も起きない。

武は考えた末に、小学生が単独で主税を殺害するのは難しいという結論に達した。

昭が犯人かどうかは置いておいて、主税をどうやって殺害したんだろう?
犯人の候補として考えられるのは2だ。

候補1:同級生の誰かが大人に頼んで主税を殺害してもらった
候補2:同級生が複数人で主税を殺害した

武はそれぞれの候補について考えてみた。


【候補1について】

一対一で小学生が主税を殺害するのは難しい。でも、大人だったら簡単に主税を殺害できる。武器を使ってもいいし、何なら素手で殴り殺すことも可能だろう。
犯人は大人というのは悪くない仮説だと武は思った。

でも、強盗が死んだのは事故だし、正当防衛だ。もし警察に知られても子供だから大した罪にはならない。それなのに分別のある大人が、小学生の依頼で主税を殺害するのだろうか?

大人が子供の依頼で殺人するケースは、親が子供のために殺害する、殺し屋が金で雇われて殺害する、この2つのどちらかだ。どちらも現実離れしているような気がする。

もし何らかの事情で大人が主税を殺害したとすると、次に武を狙ってくる可能性もありえる。はたして、大人の殺人者を相手にして逃げられるのだろうか?

難しいかもしれない・・・・


【候補2について】

白い猫は『同級生の一人が家に火を付けた』と言っていた。
つまり、放火したのは一人。白い猫は、主税を一人で殺害したとは言ってない。

複数人で主税を殺害した後に同級生の一人が放火した場合、白い猫が言った『同級生の一人が家に火を付けた』と矛盾しない。

それに、小学生が一人で主税を殺害できなくても、2~3人いれば殺害できるだろう。
一人が羽交い絞めにしている間に、灯油を主税にかけて火を付ければ殺害できる。
または、一人が主税を油断させている間に、包丁で主税を後ろから刺せば殺害できる。

容疑者4人のうち50%以上が犯人。ひょっとすると武以外の4人全員が犯人かもしれない。
容疑者4人と会う場合は特に注意が必要だ。容疑者4人全員が武を殺害しようと狙っている危険があるから。


武は犯人の候補について考えた結果、候補2の可能性が高いと思った。
ただ、候補1と候補2のどちらが正解だったとしても、犯人捜しは時間が掛かるし、相当の危険を伴うだろう。
もし次に武が狙われた場合、殺人を依頼された大人あるいは複数の小学生から逃げることは難しい、と認識しておく必要がある。

困ったな・・・

武は犯人を言わなかった猫を恨めしく思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...