僕と猫と米沢牛 ― 勝手に他人の半生を書いてみた

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僕と猫と米沢牛

米沢派 VS シン米沢派

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(14)米沢派 VS シン米沢派

「そうだな。米沢牛ビジネスは金が物を言う。資金力のある畜産業者はいくらでも賄賂を払えるから、自分の黒毛和牛を優先的に米沢牛に認定してもらう。資金力のない畜産業者は賄賂を払えないから、黒毛和牛を育てても米沢牛として認定してもらえない。つまり、金持ちだけが米沢牛を育てていて、その金持ちはみんな米沢派だ。」と猫は説明した。

「金持ちがもっと金持ちになる仕組みか・・・。」

「そうだな。米沢派とはそういうシンジケートだ。」

「でも、米沢派のやっていることは畜産業を冒涜する行為じゃないのか?」と武は声を荒げて言った。

「そうだ。だから、米沢市の畜産業を守るため、米沢派に対抗しようという連中が出てきた。
米沢牛ではなく、黒毛和牛をシン米沢牛として認定して、高級和牛として販売することを目指すグループだ。それが『シン米沢派』だ。」と猫は言った。

また武が知らない言葉が飛び出した。

「シン米沢派?」

「つまりシン米沢派は、金が支配する米沢牛ビジネスを正しい方向に軌道修正しようとしている集団だ。本当にいい黒毛和牛を世に認めてもらおうと活動しているから、金の亡者の米沢派とは関係性が良くない。」

「じゃあ、シン米沢派に頑張ってもらわないといけないな。」武はしみじみと言った。

「そうだな。いま米沢市では米沢派とシン米沢派の争いが起きている。米沢市は大雑把に言うと、北部が米沢派、南部がシン米沢派だ。」

「僕の団地は南部だから、シン米沢派のテリトリーか。」

「ここで武に問題だ。」

「なに?」

猫のムハンマドは武にクイズを出した。

「シン米沢派のシン米沢牛は米沢南警察署の地下で飼育されている。米沢派の米沢牛はどこで飼育されていると思う?」

武は少し考えてから言った。

「分かった!米沢牛は米沢北警察署の地下!」

「惜しいなー。正解は、米沢北消防署の地下でしたー。警察署ではありませーん。」猫は笑いながら言った。

武はムハンマドのトラップに引っ掛かったようだ。

「警察署と消防署なんて、ほぼ同じじゃないか。僕の答えはほぼ正解だろ。」武は悔しそうに言った。

「惜しいけど不正解だ。それと、米沢北消防署には近づくなよ。」

「米沢派のアジトだから?」

「そうだ。南部の人間が行くと、スパイだと思われて直ぐに米沢派に拉致されるからな。気を付けろよ。」と猫は念押しした。

「分かったよ。それにしても、ここは厳重な管理だな。シン米沢牛の牛舎の入り口が留置所なんて。」と武は言った。

「米沢派にシン米沢牛の情報が洩れたら大変なことになるからな。留置所の外に軍人崩れが何人かいただろ?」

「あの人たち、看守じゃないのか?」武は猫に聞いた。

「地下の留置所に看守なんていない。あの軍人崩れはシン米沢牛の警備が任務だ。留置所に人を入れたりしない。だから、中を見張る必要はない。シン米沢牛の牛舎の入り口は、留置所にカモフラージュしたダミーの部屋だからな。」

「僕は留置所の中に入れられてたよね?」

武はナカムラのことをまだ恨んでいるようだ。

「あれはナカムラがお前の身を案じてのことだ。お前は米沢派が起こした事件の情報提供者だからな。米沢派に狙われる可能性があった。」と猫は言った。

「え?」

「だーかーらー、シン米沢派の米沢南警察に強盗のことを話しただろ。」

「それって・・・・、強盗は米沢派の人間だったのか?」

「そうだ。だから、お前の同級生は事件に巻き込まれて殺されたんだよ。」と猫は言った。

だから、主税(ちから)が殺された?
どういうことだ?
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