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ある刑事の話
俺の部屋の押入れに死体がある
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俺の名前は諸江 淳一(もろえ じゅんいち)。〇〇県警で刑事部の捜査第一課で刑事として働いている。とにかく、自己紹介は後だ。
緊急事態だ!!
俺の前には死体がある。
より正確に言うと、俺の部屋の押入れの中に、死体が入っているスーツケースがある。
黒いウールのワンピースを着た女性の死体だ。
俺はこの死体を知らない。いや、この表現は誤解を招く。
『この死体が誰なのか?』は多分知っている。けど、『なぜ死んでいるのか?』と『なぜ死体が俺の部屋にあるのか?』は知らない。
この死体は俺が何度か会ったことがある女性だと思う。似ている女性かもしれないのだが。
だから、誰が死んでいるのかは多分知っている。多分・・・
でも、俺が殺したわけじゃない・・・と思う。
100%の自信はない。覚えていないんだ・・・
俺が犯人かもしれないし、犯人じゃないかもしれない。
こんなことしか言えなくて申し訳ないのだが、
記憶にございません・・・
俺は捜査第一課の刑事だ。殺人事件を扱う部署にいるから死体には慣れている。死体を見ても気持ち悪くて嘔吐しないし、そんなに驚きもしない。
ただ、俺の仕事は殺人犯を捕まえることであって、殺人ではないし、殺人犯になることでもない。
それよりも・・・
――この死体、どうしよう?
警察に通報すべきか、どこかに捨てるべきか。俺は今、この二択で迷っている。
警察に通報したら俺が疑われる。死体が出てきたのが俺の部屋の押入れだから。100%の確率で俺を犯人と疑うだろう。
俺が「知らないうちに、うちの押入れに死体が入ってたんです!」と言っても誰も信じてくれない。俺も逆の立場(刑事として捜査している場合)だったら信じない。完全に頭がおかしい奴のセリフだ。
――もし俺が警察に通報したらどうなるか?
俺は取調室でのやり取りをシミュレーションすることにした。ちなみに、シミュレーションにおける取調官は具体的な刑事をイメージした方が、何を聞かれるか、どういう反応があるかが予想できる。だから、今回は田畑部長を取調官としてイメージしてみる。
「知らないうちに、うちの押入れに死体が入ってたんです!」
「はいはい。諸江くん、冗談はそれくらいにして。動機は何なの?」
「いえ、だから、誰かに嵌(は)められたんです!」
「諸江くんは嵌められたんだね。じゃあ、誰か共犯がいるのかな?」
「いえ、分かりません。記憶がないんです」
「へー、記憶喪失って100%嘘だからね。人間の記憶って、そんなに都合よく消えないよ。諸江くんも知ってるよね?」
「まぁ、そうですね。記憶喪失なんてほぼ嘘ですね・・・」
「じゃあ、覚えてるでしょ?」
「だから、覚えてませんって」
「質問を変えよう。この人、知り合い?」
「ええ、知ってます。何度か会いました」
「じゃあ、もう・・・諸江くん犯人だよね?」
「えぇ?」
「だって、好意を寄せていた女性を部屋に連れ込んだんでしょ。エッチなことしようとして、断られた。かっとなった諸江くんが殺したんじゃないの?」
「それはちょっと強引じゃないですか? そんな動機で殺しますかね?」
「殺人の動機なんてそんなもんだよ。諸江くんも刑事になってから長いよね?」
「ええ、刑事になって5年です」
「だったら分かるでしょ。殺人なんて勢いだからね。結婚と一緒、勢いだよ! 分かる?」
「はぁ」
「今の「はい」は罪を認めた、ということでいいのかな?」
「僕は「はぁ」って言ったんです。認めてません」
「またまたー。やったんでしょ?」
ダメだ・・・。何を言っても取調官には信じてもらえない。担当官を岩元先輩にしてシミュレーションしてみたが結果は変わらない。
その後も何度かシミュレーションしてみたが、「エッチなことしようとして断られた」、「かっとなった諸江くんが殺したんじゃないの?」と「殺人なんて勢いだからね」が頭の中でループしている。
――やっぱり、捨てに行くか・・・
俺は死体を捨てに行くことにした。刑事としては、殺人事件の真犯人を捕まえるべきだと思う。でも、その前提は俺が犯人じゃない場合。俺が真犯人または容疑者である場合、この前提は崩れる。
今までの捜査で、俺は何度か殺人犯が死体を隠した事件に遭遇している。見つかりにくい死体の隠し場所は分かっている。
それに、警察の捜査手法についても人一倍理解している。警察に怪しまれない方法は熟知しているつもりだ。
だって、俺は刑事だから。
そんな俺が死体を捨てたら捜査は難航するだろう。死体が見つからなければ、女性がただ失踪しただけ。失踪事件だ。殺人事件ではない。
失踪事件としてこの件を警察が捜査するかもしれない。が、殺人事件に比べれば力の入れ方が違う。
交番の前に『この人知りませんか?』とチラシを貼っておくだけだ。この場合、俺は容疑者ではない。
いや、俺はこの女と知り合いだ。女性の失踪事件として俺のところに警察が聞き込みにくるかもしれない。そうしたら、俺が失踪事件の容疑者になる可能性はある。
俺は失踪事件の容疑者になるかならないかは、この女との関係を示す証拠があるか否か。それは後で調べればいい。
――それよりも、死体を見つからない場所に捨てに行こう・・・
そう俺は決心した。
緊急事態だ!!
俺の前には死体がある。
より正確に言うと、俺の部屋の押入れの中に、死体が入っているスーツケースがある。
黒いウールのワンピースを着た女性の死体だ。
俺はこの死体を知らない。いや、この表現は誤解を招く。
『この死体が誰なのか?』は多分知っている。けど、『なぜ死んでいるのか?』と『なぜ死体が俺の部屋にあるのか?』は知らない。
この死体は俺が何度か会ったことがある女性だと思う。似ている女性かもしれないのだが。
だから、誰が死んでいるのかは多分知っている。多分・・・
でも、俺が殺したわけじゃない・・・と思う。
100%の自信はない。覚えていないんだ・・・
俺が犯人かもしれないし、犯人じゃないかもしれない。
こんなことしか言えなくて申し訳ないのだが、
記憶にございません・・・
俺は捜査第一課の刑事だ。殺人事件を扱う部署にいるから死体には慣れている。死体を見ても気持ち悪くて嘔吐しないし、そんなに驚きもしない。
ただ、俺の仕事は殺人犯を捕まえることであって、殺人ではないし、殺人犯になることでもない。
それよりも・・・
――この死体、どうしよう?
警察に通報すべきか、どこかに捨てるべきか。俺は今、この二択で迷っている。
警察に通報したら俺が疑われる。死体が出てきたのが俺の部屋の押入れだから。100%の確率で俺を犯人と疑うだろう。
俺が「知らないうちに、うちの押入れに死体が入ってたんです!」と言っても誰も信じてくれない。俺も逆の立場(刑事として捜査している場合)だったら信じない。完全に頭がおかしい奴のセリフだ。
――もし俺が警察に通報したらどうなるか?
俺は取調室でのやり取りをシミュレーションすることにした。ちなみに、シミュレーションにおける取調官は具体的な刑事をイメージした方が、何を聞かれるか、どういう反応があるかが予想できる。だから、今回は田畑部長を取調官としてイメージしてみる。
「知らないうちに、うちの押入れに死体が入ってたんです!」
「はいはい。諸江くん、冗談はそれくらいにして。動機は何なの?」
「いえ、だから、誰かに嵌(は)められたんです!」
「諸江くんは嵌められたんだね。じゃあ、誰か共犯がいるのかな?」
「いえ、分かりません。記憶がないんです」
「へー、記憶喪失って100%嘘だからね。人間の記憶って、そんなに都合よく消えないよ。諸江くんも知ってるよね?」
「まぁ、そうですね。記憶喪失なんてほぼ嘘ですね・・・」
「じゃあ、覚えてるでしょ?」
「だから、覚えてませんって」
「質問を変えよう。この人、知り合い?」
「ええ、知ってます。何度か会いました」
「じゃあ、もう・・・諸江くん犯人だよね?」
「えぇ?」
「だって、好意を寄せていた女性を部屋に連れ込んだんでしょ。エッチなことしようとして、断られた。かっとなった諸江くんが殺したんじゃないの?」
「それはちょっと強引じゃないですか? そんな動機で殺しますかね?」
「殺人の動機なんてそんなもんだよ。諸江くんも刑事になってから長いよね?」
「ええ、刑事になって5年です」
「だったら分かるでしょ。殺人なんて勢いだからね。結婚と一緒、勢いだよ! 分かる?」
「はぁ」
「今の「はい」は罪を認めた、ということでいいのかな?」
「僕は「はぁ」って言ったんです。認めてません」
「またまたー。やったんでしょ?」
ダメだ・・・。何を言っても取調官には信じてもらえない。担当官を岩元先輩にしてシミュレーションしてみたが結果は変わらない。
その後も何度かシミュレーションしてみたが、「エッチなことしようとして断られた」、「かっとなった諸江くんが殺したんじゃないの?」と「殺人なんて勢いだからね」が頭の中でループしている。
――やっぱり、捨てに行くか・・・
俺は死体を捨てに行くことにした。刑事としては、殺人事件の真犯人を捕まえるべきだと思う。でも、その前提は俺が犯人じゃない場合。俺が真犯人または容疑者である場合、この前提は崩れる。
今までの捜査で、俺は何度か殺人犯が死体を隠した事件に遭遇している。見つかりにくい死体の隠し場所は分かっている。
それに、警察の捜査手法についても人一倍理解している。警察に怪しまれない方法は熟知しているつもりだ。
だって、俺は刑事だから。
そんな俺が死体を捨てたら捜査は難航するだろう。死体が見つからなければ、女性がただ失踪しただけ。失踪事件だ。殺人事件ではない。
失踪事件としてこの件を警察が捜査するかもしれない。が、殺人事件に比べれば力の入れ方が違う。
交番の前に『この人知りませんか?』とチラシを貼っておくだけだ。この場合、俺は容疑者ではない。
いや、俺はこの女と知り合いだ。女性の失踪事件として俺のところに警察が聞き込みにくるかもしれない。そうしたら、俺が失踪事件の容疑者になる可能性はある。
俺は失踪事件の容疑者になるかならないかは、この女との関係を示す証拠があるか否か。それは後で調べればいい。
――それよりも、死体を見つからない場所に捨てに行こう・・・
そう俺は決心した。
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