8 / 11
後輩刑事の話
あれは事故だった
しおりを挟む
死体の入ったスーツケースが、なぜ諸江先輩に渡ったかを説明しておこう。あれは事故だ。
今思い返しても、なぜあんなことが起きたのか分からない。
さっきも説明したが、僕は人殺しではない。死体は先生から受け取り、僕は小指を切断してからその死体を処分する。先生と僕はスーツケースを使って死体を受け渡していた。
今から3日前の7月22日の深夜、僕は先生と待ち合わせをして、死体の入ったスーツケースを受取った。待ち合わせ場所は繁華街だった。人通りがない場所で受け渡しするのは、お互いに危険だと感じていたのだろう。僕は先生が殺人犯であることを知っているし、先生は僕が死体を処分していることを知っている。犯行を隠蔽したければ、どちらかがもう一方を消せばいい。だから、人通りがある場所を死体の受け渡し場所に選んでいた。
待ち合わせ場所でスーツケースと死体女性の身分証明書を受取った僕は、自宅に帰ろうと道を歩いていた。その時、急な腹痛が僕を襲った。食中毒だ。多分、夜に食べたポテトサラダだろう。
僕はたまらずにトイレを借りにコンビニに入った。コンビニのトイレには、大型スーツケースを持ち込めるだけのスペースがなかった。
他のコンビニのトイレを借りるという選択肢もあったが、ことは急を要する。緊急事態だ。だから、僕はスーツケースを外に置いてトイレに入った。
そして、用を足してトイレから出てきたらスーツケースが無くなっていた。
僕は愕然とした。
緊急事態だった。とはいえ、完全に油断していた。治安のよい日本でスーツケースの盗難はないと思い込んでいたのだ。僕はコンビニを出てスーツケースを探した。
繁華街を足早に歩いていくと、僕がよく知っている二人組がいた。田畑部長と諸江先輩だ。なぜか僕のスーツケースを持っている。どうして、僕のスーツケースを? なんのために?
コンビニに不審なスーツケースが置いてある場合、警察は爆弾テロを疑う。警察官は巡回中に怪しいものが置いていないかをチェックする。
きっと、田畑部長と諸江先輩は怪しいスーツケースを発見したから、近くの交番に届けようとしているのだ。
僕は二人に気付かれないように近づいた。話し声が聞こえる。
「部長! 部長は今から海外旅行に・・・行くでありますか?」
「そのとーーり! 俺はこれから旅立つ。後のことは任せたぞー!」
「任されましたー! どこに行かれるでありますかー?」
「おフランス・・・ざます」
「ざます・・・。っぷ、つまんねーーー」
田畑部長のビンタが諸江先輩の顔に入った。
「無礼者!」
「失礼ぶっこきましたー! 部長はおフランスで何をするでありますか?」
「オリンピック! 全部見てくるよー」
「今からでありますか?」
「1年後、なんちゃってー」
僕は愕然とした。このやり取りを見れば分かる通り、この二人は完全に酔っ払い。怪しいスーツケースを交番に届けようとしているのではない。これ(海外旅行のコント)をやりたかったからスーツケースを持ってきた。人の物を盗んだという意識はない。
――コントの小道具・・・
そういえば、田畑部長は酔っぱらってケロちゃんを薬局の前から何度も拾ってきたのを聞いたことがある。そうすると、スーツケースは自宅に持って帰るか、どこかで捨てるか・・・
「ちょっとトイレ。諸江、これ持っといて!」
田畑部長はそういうとスーツケースを諸江先輩に渡した。
――スーツケースを奪うチャンスだ!
僕が諸江先輩にタックルしたら、諸江先輩はよろけてスーツケースから手を離した。僕はスーツケースを持って立ち去ろうとした。
「もろえーーー、あぶなーーーい!」
田畑部長の大声が聞こえた。僕が振り返ると、諸江先輩は車と接触して地面に倒れていた。
諸江先輩は僕のタックルでバランスを崩し、道路に飛び出したようだ。交通事故の加害者は僕。繫華街だから、僕が諸江先輩を押したことを見た目撃者が大勢いる。
僕はスーツケースを引きずって逃げようとしたが、重くて走れそうにない。しかたなく、僕はスーツケースを諦めて全力で走って逃げた。
その後、スーツケースは諸江先輩と一緒に病院に運ばれ、田畑部長によって諸江先輩の部屋に運ばれた。この顛末は、次の日、田畑部長から聞いた。
諸江先輩は事故の後遺症からか、事故のことはほとんど覚えていなかった。諸江先輩は僕が道路に突き飛ばしたこともしらないし、田畑部長も泥酔状態だったから犯人の顔を覚えていないらしい。
スーツケースが回収できないのは残念だが、僕は諸江先輩が無事で良かったと思っている。諸江先輩はアホだけどいい人だから。
あれは事故だった。コントのような事故だったと思う・・・
今思い返しても、なぜあんなことが起きたのか分からない。
さっきも説明したが、僕は人殺しではない。死体は先生から受け取り、僕は小指を切断してからその死体を処分する。先生と僕はスーツケースを使って死体を受け渡していた。
今から3日前の7月22日の深夜、僕は先生と待ち合わせをして、死体の入ったスーツケースを受取った。待ち合わせ場所は繁華街だった。人通りがない場所で受け渡しするのは、お互いに危険だと感じていたのだろう。僕は先生が殺人犯であることを知っているし、先生は僕が死体を処分していることを知っている。犯行を隠蔽したければ、どちらかがもう一方を消せばいい。だから、人通りがある場所を死体の受け渡し場所に選んでいた。
待ち合わせ場所でスーツケースと死体女性の身分証明書を受取った僕は、自宅に帰ろうと道を歩いていた。その時、急な腹痛が僕を襲った。食中毒だ。多分、夜に食べたポテトサラダだろう。
僕はたまらずにトイレを借りにコンビニに入った。コンビニのトイレには、大型スーツケースを持ち込めるだけのスペースがなかった。
他のコンビニのトイレを借りるという選択肢もあったが、ことは急を要する。緊急事態だ。だから、僕はスーツケースを外に置いてトイレに入った。
そして、用を足してトイレから出てきたらスーツケースが無くなっていた。
僕は愕然とした。
緊急事態だった。とはいえ、完全に油断していた。治安のよい日本でスーツケースの盗難はないと思い込んでいたのだ。僕はコンビニを出てスーツケースを探した。
繁華街を足早に歩いていくと、僕がよく知っている二人組がいた。田畑部長と諸江先輩だ。なぜか僕のスーツケースを持っている。どうして、僕のスーツケースを? なんのために?
コンビニに不審なスーツケースが置いてある場合、警察は爆弾テロを疑う。警察官は巡回中に怪しいものが置いていないかをチェックする。
きっと、田畑部長と諸江先輩は怪しいスーツケースを発見したから、近くの交番に届けようとしているのだ。
僕は二人に気付かれないように近づいた。話し声が聞こえる。
「部長! 部長は今から海外旅行に・・・行くでありますか?」
「そのとーーり! 俺はこれから旅立つ。後のことは任せたぞー!」
「任されましたー! どこに行かれるでありますかー?」
「おフランス・・・ざます」
「ざます・・・。っぷ、つまんねーーー」
田畑部長のビンタが諸江先輩の顔に入った。
「無礼者!」
「失礼ぶっこきましたー! 部長はおフランスで何をするでありますか?」
「オリンピック! 全部見てくるよー」
「今からでありますか?」
「1年後、なんちゃってー」
僕は愕然とした。このやり取りを見れば分かる通り、この二人は完全に酔っ払い。怪しいスーツケースを交番に届けようとしているのではない。これ(海外旅行のコント)をやりたかったからスーツケースを持ってきた。人の物を盗んだという意識はない。
――コントの小道具・・・
そういえば、田畑部長は酔っぱらってケロちゃんを薬局の前から何度も拾ってきたのを聞いたことがある。そうすると、スーツケースは自宅に持って帰るか、どこかで捨てるか・・・
「ちょっとトイレ。諸江、これ持っといて!」
田畑部長はそういうとスーツケースを諸江先輩に渡した。
――スーツケースを奪うチャンスだ!
僕が諸江先輩にタックルしたら、諸江先輩はよろけてスーツケースから手を離した。僕はスーツケースを持って立ち去ろうとした。
「もろえーーー、あぶなーーーい!」
田畑部長の大声が聞こえた。僕が振り返ると、諸江先輩は車と接触して地面に倒れていた。
諸江先輩は僕のタックルでバランスを崩し、道路に飛び出したようだ。交通事故の加害者は僕。繫華街だから、僕が諸江先輩を押したことを見た目撃者が大勢いる。
僕はスーツケースを引きずって逃げようとしたが、重くて走れそうにない。しかたなく、僕はスーツケースを諦めて全力で走って逃げた。
その後、スーツケースは諸江先輩と一緒に病院に運ばれ、田畑部長によって諸江先輩の部屋に運ばれた。この顛末は、次の日、田畑部長から聞いた。
諸江先輩は事故の後遺症からか、事故のことはほとんど覚えていなかった。諸江先輩は僕が道路に突き飛ばしたこともしらないし、田畑部長も泥酔状態だったから犯人の顔を覚えていないらしい。
スーツケースが回収できないのは残念だが、僕は諸江先輩が無事で良かったと思っている。諸江先輩はアホだけどいい人だから。
あれは事故だった。コントのような事故だったと思う・・・
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる