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ある女の話
この前の返事だけど
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私の名前は山本 奈那(やまもと なな)。私は今、先週付き合ってほしいと言われた相手に連絡するかどうかを迷っている。
その男性は私よりも5歳年上の警察官。
友人に誘われて参加したホームパーティで知り合った。私が彼の仕事を聞いたら「建設関係」と言っていたが、嘘なのがすぐに分かった。
少しお酒が入ってきて気が緩んだのだろう、彼は「昨日、車を運転していたらPCに止められてさー」と言った。普通の人のPCはパソコン、Police Car(パトカー)ではない。
職業は警察官だが、言いたくないようだった。きっと、警察官はモテないと思っているのだろう。ちょっと変わったところもあったけど話しやすい人だったので、私は彼と連絡先を交換した。
ホームパーティの後、彼から連絡がきて何度か食事に行った。そして、一週間前に〇〇(イタリアン居酒屋)に行ったときに、彼に「付き合ってほしい」と言われた。何の前触れもなく唐突だったから、その時に着ていた白いワンピースに赤ワインをこぼしてしまった。次の日にクリーニングに出したけど、ワインの色が取れているかな?
ワンピースを拭きながら私が「本当は警察官なんでしょ?」と聞いたら「刑事なんだ、黙っててごめん」と彼は白状した。
私はその場での回答を保留にした。人柄は悪くなさそうだけど、警察官と付き合ったことがなかったから。
警察官といっても、交番勤務の場合もあれば、凶悪犯罪や暴力団対応を専門にする部署もある。公安警察もある。所属によって危険度が違う。だから、少し調べてから付き合うかどうかを決めようと思ったのだ。
結論として、私はとりあえず彼と付き合ってみることにした。
情報ソースは警察官と付き合ったことがある友人。その友人には「とりあえず付き合ってみれば?」と言われた。友人が言うには、特殊な業務についている警察官は少ないからあまり気にしなくてもいい。職業がどう、というよりも本人次第だと言っていた。
彼への返事を先延ばしにしていた私は、彼にスマートフォンでメッセージを送った。
『この前の返事だけど 付き合ってもいいよ』
私が送ったメッセージは直ぐに既読になって、彼からすぐに返信がきた。
『大丈夫だった?』
大丈夫とはどういう意味だろう? あっ、赤ワインをこぼしたワンピースのことだ。私は彼に返信した。
『すぐにクリーニングに出したから大丈夫』
『そっちじゃなくて』
『そっち? なんのこと?』
しばらくしてから返信がきた。
『今日どこかで会えないか?』
今日は予定がない。まだ夕食を食べていなかったから、私は一週間前に行ったお店を提案した。
『1時間後に〇〇(イタリアン居酒屋)は?』
『了解道中膝栗毛!』
私は『了解道中膝栗毛』を使ったことないのだが、多分、『了解!』という意味だと思う。
私は彼に会うためにグレーのワンピースに着替えた。
***
私が〇〇(イタリアン居酒屋)に着いたら、彼は先に席についていた。
店員に案内されて彼のテーブルの前に立った私。彼は私を見るなりこう言った。
「本物?」
彼は私を見て驚いている。何か驚くことがあるのか?
私が『付き合ってもいいよ』と返信したことに驚いているのか?
「本物って、どういう意味?」
「先週、この店で俺と会ったよね?」
「うん。会ったよ」
「その後……どうしてた?」
私は先週の〇〇(イタリアン居酒屋)からの帰り道を思い出す。たしか、彼にタクシーで家の近くまで送ってもらったんだ。
「先週はこの店を出た後、タクシーで家まで送ってくれたでしょ。そのまま家に帰った」
「ふーん」
「どうかした?」
彼は私の顔をジロジロと見ている。見惚(みと)れている、という意味ではなく・・・
「次の日は会社に行った?」
「もちろん。そんなにお酒飲んでなかったでしょ」
「その次の日も?」
「行ったよ」
「じゃあ、あれは誰なんだ?」
「あれって誰のこと?」
彼は私の質問には答えない。何かを考えているようだ。
しばらくすると、彼はため息をつきながら呟いた。
「やっぱり、捨てに行くか・・・」
<おわり>
【ネタバレ的な解説】
前話で事件の内容は分かったと思いますが、念のために物語の設定を解説します。
殺害された女性は鶴崎彩(25歳)です。山本奈那(27歳)とは別人です。
鶴崎彩は自殺幇助サイトにアクセスし、法医学者の伊美昌宏に自身の殺害を依頼します。そして、伊美はこの依頼を受けて、鶴崎彩を殺害しました。
殺害時期は春なので、第1話の死体は『黒いウールのワンピースを着た』となっています。この物語は7月下旬ですから、黒いウールを着る女性はいません。
伊美は鶴崎彩の死体を防腐処理して保管していましたが、7月22日に石倉昌隆(後輩刑事)に引き渡します。その後、死体は諸江淳一(優柔不断な刑事)のもとに渡ります。諸江は鶴崎彩を山本奈那と勘違いし、捨てきれずに一緒に生活を始めました。
石倉昌隆(後輩刑事)は鶴崎彩が春に殺害されていたことを知りません。また、先輩刑事(諸江淳一)が好意を寄せていた女性(山本奈那)の名前を知りません。死体の名前は伊美(法医学者)から入手した身分証明書から鶴崎彩であることは知っています。
だから、諸江が好意を寄せていたのは鶴崎彩(25歳)だと勘違いしています(第2話)。
ちなみに、コンビニの防犯カメラを確認した刑事(第3話)は石倉昌隆(後輩刑事)です。伊美昌宏(法医学者)が女性(山本奈那)を殺害前に先輩刑事(諸江淳一)に接触していないかを確認するために調べていました。
なお、法医学者の伊美昌宏は石倉昌隆(後輩刑事)から殺害された女性と先輩刑事が数日前に会ったことを聞かされて驚いています(第10話)。
さて、諸江淳一(優柔不断な刑事)は死体を捨てることができるのでしょうか?
私(筆者)は捨てられないような気がします。
その男性は私よりも5歳年上の警察官。
友人に誘われて参加したホームパーティで知り合った。私が彼の仕事を聞いたら「建設関係」と言っていたが、嘘なのがすぐに分かった。
少しお酒が入ってきて気が緩んだのだろう、彼は「昨日、車を運転していたらPCに止められてさー」と言った。普通の人のPCはパソコン、Police Car(パトカー)ではない。
職業は警察官だが、言いたくないようだった。きっと、警察官はモテないと思っているのだろう。ちょっと変わったところもあったけど話しやすい人だったので、私は彼と連絡先を交換した。
ホームパーティの後、彼から連絡がきて何度か食事に行った。そして、一週間前に〇〇(イタリアン居酒屋)に行ったときに、彼に「付き合ってほしい」と言われた。何の前触れもなく唐突だったから、その時に着ていた白いワンピースに赤ワインをこぼしてしまった。次の日にクリーニングに出したけど、ワインの色が取れているかな?
ワンピースを拭きながら私が「本当は警察官なんでしょ?」と聞いたら「刑事なんだ、黙っててごめん」と彼は白状した。
私はその場での回答を保留にした。人柄は悪くなさそうだけど、警察官と付き合ったことがなかったから。
警察官といっても、交番勤務の場合もあれば、凶悪犯罪や暴力団対応を専門にする部署もある。公安警察もある。所属によって危険度が違う。だから、少し調べてから付き合うかどうかを決めようと思ったのだ。
結論として、私はとりあえず彼と付き合ってみることにした。
情報ソースは警察官と付き合ったことがある友人。その友人には「とりあえず付き合ってみれば?」と言われた。友人が言うには、特殊な業務についている警察官は少ないからあまり気にしなくてもいい。職業がどう、というよりも本人次第だと言っていた。
彼への返事を先延ばしにしていた私は、彼にスマートフォンでメッセージを送った。
『この前の返事だけど 付き合ってもいいよ』
私が送ったメッセージは直ぐに既読になって、彼からすぐに返信がきた。
『大丈夫だった?』
大丈夫とはどういう意味だろう? あっ、赤ワインをこぼしたワンピースのことだ。私は彼に返信した。
『すぐにクリーニングに出したから大丈夫』
『そっちじゃなくて』
『そっち? なんのこと?』
しばらくしてから返信がきた。
『今日どこかで会えないか?』
今日は予定がない。まだ夕食を食べていなかったから、私は一週間前に行ったお店を提案した。
『1時間後に〇〇(イタリアン居酒屋)は?』
『了解道中膝栗毛!』
私は『了解道中膝栗毛』を使ったことないのだが、多分、『了解!』という意味だと思う。
私は彼に会うためにグレーのワンピースに着替えた。
***
私が〇〇(イタリアン居酒屋)に着いたら、彼は先に席についていた。
店員に案内されて彼のテーブルの前に立った私。彼は私を見るなりこう言った。
「本物?」
彼は私を見て驚いている。何か驚くことがあるのか?
私が『付き合ってもいいよ』と返信したことに驚いているのか?
「本物って、どういう意味?」
「先週、この店で俺と会ったよね?」
「うん。会ったよ」
「その後……どうしてた?」
私は先週の〇〇(イタリアン居酒屋)からの帰り道を思い出す。たしか、彼にタクシーで家の近くまで送ってもらったんだ。
「先週はこの店を出た後、タクシーで家まで送ってくれたでしょ。そのまま家に帰った」
「ふーん」
「どうかした?」
彼は私の顔をジロジロと見ている。見惚(みと)れている、という意味ではなく・・・
「次の日は会社に行った?」
「もちろん。そんなにお酒飲んでなかったでしょ」
「その次の日も?」
「行ったよ」
「じゃあ、あれは誰なんだ?」
「あれって誰のこと?」
彼は私の質問には答えない。何かを考えているようだ。
しばらくすると、彼はため息をつきながら呟いた。
「やっぱり、捨てに行くか・・・」
<おわり>
【ネタバレ的な解説】
前話で事件の内容は分かったと思いますが、念のために物語の設定を解説します。
殺害された女性は鶴崎彩(25歳)です。山本奈那(27歳)とは別人です。
鶴崎彩は自殺幇助サイトにアクセスし、法医学者の伊美昌宏に自身の殺害を依頼します。そして、伊美はこの依頼を受けて、鶴崎彩を殺害しました。
殺害時期は春なので、第1話の死体は『黒いウールのワンピースを着た』となっています。この物語は7月下旬ですから、黒いウールを着る女性はいません。
伊美は鶴崎彩の死体を防腐処理して保管していましたが、7月22日に石倉昌隆(後輩刑事)に引き渡します。その後、死体は諸江淳一(優柔不断な刑事)のもとに渡ります。諸江は鶴崎彩を山本奈那と勘違いし、捨てきれずに一緒に生活を始めました。
石倉昌隆(後輩刑事)は鶴崎彩が春に殺害されていたことを知りません。また、先輩刑事(諸江淳一)が好意を寄せていた女性(山本奈那)の名前を知りません。死体の名前は伊美(法医学者)から入手した身分証明書から鶴崎彩であることは知っています。
だから、諸江が好意を寄せていたのは鶴崎彩(25歳)だと勘違いしています(第2話)。
ちなみに、コンビニの防犯カメラを確認した刑事(第3話)は石倉昌隆(後輩刑事)です。伊美昌宏(法医学者)が女性(山本奈那)を殺害前に先輩刑事(諸江淳一)に接触していないかを確認するために調べていました。
なお、法医学者の伊美昌宏は石倉昌隆(後輩刑事)から殺害された女性と先輩刑事が数日前に会ったことを聞かされて驚いています(第10話)。
さて、諸江淳一(優柔不断な刑事)は死体を捨てることができるのでしょうか?
私(筆者)は捨てられないような気がします。
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