僕と猫と明珍火箸 ー 勝手に他人の半生を書いてみた

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その霊はお菊さんではない。別の霊だ!

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(4)その霊はお菊さんではない。別の霊だ!

猫はアオヤマ(姫路のボス猫)から聞いた内容を武に話し続ける。

「播州皿屋敷の事件は1500年ちょっとだから、今から400年以上前だ。お菊はスパイとして青山家に入ってきたんだけど、青山鉄山の部下に町坪弾四郎(ちょうのつぼ だんしろう)って奴がお菊を気に入って、口説いたらしいんだ。」

「へー。」

武はイマイチこの話に興味が持てない。
大昔の色恋沙汰や恨みつらみを聞いても、ピンとこないからだ。

武が飽きているのを無視して、猫は話を続ける。

「弾四郎はお菊に振られた。逆恨みした弾四郎は、お菊が青山から管理を任されていた家宝の皿の1枚を隠したんだ。お菊は青山家の家宝をなくした責任を取らされて殺された。そして、お菊の死体は井戸に捨てられた。お菊の死体が井戸に投げ捨てられて以来、その井戸から夜な夜な皿を数える声が聞こえるようになった。」

「『い~ちま~い、に~ま~い』だよね?」と武が猫に聞いた。

「そう。それが皿屋敷伝説だ。」

「僕が知ってるのは『番町皿屋敷』だけど、姫路の皿屋敷も似てるな。」

「まあな。『番町皿屋敷』は姫路の『播州皿屋敷』が基になっている説があるからな。」

「それで、何が問題なんだよ?」武は猫に聞いた。

「出るんだよ。」と猫は言った。

「へ?何が?」

「お菊さん。」

「お菊さん?まだ出るの?」

「今でも毎晩出るらしい。」

「まじかー。400年以上?」と武が聞いた。

「ああ、400年以上。」

「毎晩?」

「毎晩。」と猫は答えた。

「青山家の人、毎晩『い~ちま~い、に~ま~い』を聞かされるのか?」

「ああ。気が狂うよな。」猫は同情するように言った。

猫の話では400年以上の間、毎晩お菊さんは皿を数えているらしい。
でも、武はお菊さんが成仏した話を聞いたことがある。

お菊さんは成仏していなかったのだろうか?

武は猫に確認することにした。

「そう言えば、偉い坊さんがお菊さんを成仏させた話を聞いたことがある。お菊さんが『八枚・・九枚・・』と言った後に坊さんが『十枚』と付け足したら成仏したんじゃなかった?」

※ここで言う偉い坊さんとは、了誉上人(りょうよしょうにん)です。

「ああ、あれな。お菊さんはその夜は出てこなかった。でも、次の日になったら、また『一枚・・二枚・・』と言って出てきたらしい。」

「成仏しなかった?」

「ああ。偉い坊さんは成仏したと言って帰ったらしい。でも、次の日になったら『やっぱり1枚足りない・・・』ってお菊さんが出てきた。」

「それって、詐欺じゃん。」武は呆れたように言った。

「またお菊さんが出てきたから、青山家の人間が偉い坊さんに文句言ったらしいんだ。」

「偉い坊さんは何て言ったの?」

「『その霊はお菊さんではない。別の霊だ!』ってよ。」

「ふざけんなよー。坊さんのくせにせこいなー。」

「そう思うだろ。その坊さん『お菊さんは成仏したから金は返さん。その霊を成仏させてほしかったら同じ金額払え!』って言ったんだよ。」

「そいつクソだな。」武は見たこともない坊さんに怒りをぶつけた。

「だろ?青山家の奴はキレて坊さんに除霊を頼まなかったらしい。だから、お菊さんはまだ出るんだよ。」

「青山家の奴の気持ちは分かるな・・・。でもさ、『十枚』を付け足したら、お菊さんはその日は出てこないんだよね?」

「その日だけ。効果は1日だ。だから青山家は毎晩お菊さんが出てくると、お菊さんが『九枚』と言った後に『十枚』と付け足してるんだ。」

「400年以上も?」

「400年以上だな。」

武は青山家の苦難の400年を理解した。

そして青山家に生まれなかったことに感謝した。
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