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25【援軍到来】
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アレクシスにとって恐怖の夜がやって来た。今夜も一人森の中に立つ。
遠くから風に流れて戦いの気配が聞こえる。アレクシスは怖々と周囲を見回しながら、その方向へと進んだ。
「あれは……」
草原の真ん中でいつもの魔獣とマティアスが戦っている。今回は彼の方が早くこの世界がやって来ていたのだ。
(頑張って下さい……)
ここで出て行っては足手まといだと思い、アレクシスは木の影に隠れて様子を伺う。
今日のマティアスは考えていた。力勝負を捨て、魔獣の攻撃を受け流しながら反撃の隙をうかがっている。それで正解なのだが、相手の攻撃の一つ一つが重い。マティアスは徐々に疲れ、押されつつあった。一方、夢の中の魔獣は疲れ知らずだ。
「え?」
アレクシスは背中に気配を感じて振り返る。森の奥に、こちらに向かって走る黒い犬の影が見えた。野犬魔獣の群れだ。敵もまた新たな手を打っていたのだ。
アレクシスは草原に飛び出さざるを得ない。豊満な胸を揺らしながら、とにかく森から離れようと走る。マティアスはその姿を見て目を剥いた。
「なっ、こっちに来るな! なっ、なんだ!」
アレクシスに続き、野犬もまた飛び出す。
「くそっ!」
その時、アレクシスは空の遠方に黒い点を見た。それはかろうじて人だと分かる。
剣を抜き立ち姿のまま長い髪をなびかせ、ぐんぐんとこちらに近づいてくる。
「仮面令嬢!」
麗しの戦闘令嬢は、自らも回転しながら円機動し野犬の群れに飛び込んだ。アレクシスに追いすがる野犬たちを瞬時に切り裂く。そしてそのまま、剣を突き出し一気に空中を進撃する。巨大魔獣に体当たりするように、深々と細身の剣を突き刺した。
「力はあるようですが、速度が遅すぎますね。それではこの魔獣は倒せませんことよ」
マティアスに語りかけてから空中を機動し、魔獣の首を簡単に跳ね飛ばす。とどめとばかりにマティアスも胴体に剣を突き刺すと、黒い巨体は四散した。
安心感からかマティアスはガックリと膝を着く。
「ありがとうございます」
アレクシスが駆け寄り、仮面令嬢は剣を鞘に戻す。
「助かりました……」
肩で息をしながらマティアスも礼を言う。今回もいつもとおりに負け戦の展開だった。王宮が差し向けた、まさかの援軍が二人を救ったのだ。
「あなた様が来てくれるなんて……」
「知り合いから頼まれたのです。アレクシス嬢を助けて欲しいと」
「王宮なのですから、てっきり騎士が来るものと」
「わたくしの件は、家族以外には他言無用で願います。よろしいですね?」
「はい……」
「それでは、ごきげんよう」
仮面令嬢は飛び上がり、空中で姿を消した。アレクシスとマティアスは顔を見合わせる。突然現れ、あっというまに戦いを終わらせ去ってしまった。
アレクシスは、切り裂かれたネグリジェから肌が露出しているのに気がついた。
「嫌――」
そう言って身をよじる。しかし表情はまんざらでもない。終わり良しならばと、この冒険を楽しむ。
(やったわっ! こんな展開が欲しかったのよ)
「すっ、すいません」
マティアスは慌てて後ろを向き、アレクシスの夢はここで終わった。
遠くから風に流れて戦いの気配が聞こえる。アレクシスは怖々と周囲を見回しながら、その方向へと進んだ。
「あれは……」
草原の真ん中でいつもの魔獣とマティアスが戦っている。今回は彼の方が早くこの世界がやって来ていたのだ。
(頑張って下さい……)
ここで出て行っては足手まといだと思い、アレクシスは木の影に隠れて様子を伺う。
今日のマティアスは考えていた。力勝負を捨て、魔獣の攻撃を受け流しながら反撃の隙をうかがっている。それで正解なのだが、相手の攻撃の一つ一つが重い。マティアスは徐々に疲れ、押されつつあった。一方、夢の中の魔獣は疲れ知らずだ。
「え?」
アレクシスは背中に気配を感じて振り返る。森の奥に、こちらに向かって走る黒い犬の影が見えた。野犬魔獣の群れだ。敵もまた新たな手を打っていたのだ。
アレクシスは草原に飛び出さざるを得ない。豊満な胸を揺らしながら、とにかく森から離れようと走る。マティアスはその姿を見て目を剥いた。
「なっ、こっちに来るな! なっ、なんだ!」
アレクシスに続き、野犬もまた飛び出す。
「くそっ!」
その時、アレクシスは空の遠方に黒い点を見た。それはかろうじて人だと分かる。
剣を抜き立ち姿のまま長い髪をなびかせ、ぐんぐんとこちらに近づいてくる。
「仮面令嬢!」
麗しの戦闘令嬢は、自らも回転しながら円機動し野犬の群れに飛び込んだ。アレクシスに追いすがる野犬たちを瞬時に切り裂く。そしてそのまま、剣を突き出し一気に空中を進撃する。巨大魔獣に体当たりするように、深々と細身の剣を突き刺した。
「力はあるようですが、速度が遅すぎますね。それではこの魔獣は倒せませんことよ」
マティアスに語りかけてから空中を機動し、魔獣の首を簡単に跳ね飛ばす。とどめとばかりにマティアスも胴体に剣を突き刺すと、黒い巨体は四散した。
安心感からかマティアスはガックリと膝を着く。
「ありがとうございます」
アレクシスが駆け寄り、仮面令嬢は剣を鞘に戻す。
「助かりました……」
肩で息をしながらマティアスも礼を言う。今回もいつもとおりに負け戦の展開だった。王宮が差し向けた、まさかの援軍が二人を救ったのだ。
「あなた様が来てくれるなんて……」
「知り合いから頼まれたのです。アレクシス嬢を助けて欲しいと」
「王宮なのですから、てっきり騎士が来るものと」
「わたくしの件は、家族以外には他言無用で願います。よろしいですね?」
「はい……」
「それでは、ごきげんよう」
仮面令嬢は飛び上がり、空中で姿を消した。アレクシスとマティアスは顔を見合わせる。突然現れ、あっというまに戦いを終わらせ去ってしまった。
アレクシスは、切り裂かれたネグリジェから肌が露出しているのに気がついた。
「嫌――」
そう言って身をよじる。しかし表情はまんざらでもない。終わり良しならばと、この冒険を楽しむ。
(やったわっ! こんな展開が欲しかったのよ)
「すっ、すいません」
マティアスは慌てて後ろを向き、アレクシスの夢はここで終わった。
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