婚約破棄されたので貧乏令嬢の私は夜職に励みます。強いので冒険者もやりますし、隠れ聖女も。

川嶋マサヒロ

文字の大きさ
7 / 26

第7話「経営コンサル、二十五歳」

しおりを挟む
 その場所は街外れの貧乏街でした。貧乏人としては落ち着く感じですか。
 通りに並ぶバラックの店が、さまざまな商売の看板を掲げています。
 その中の一枚が目に付きました。紹介されたコンサルタントの事務所です。
 私はノックして扉を開けました。

「あのー」
「ん? 何か用か?」

 振り向いた男性はまだ若くて、なぜか冒険者の姿をしています。年配者を想像していたので意外でした。

「商業ギルドで紹介されまして……」
「ああ、経営コンサルの話か。まあ座んなよ」

 まずは互いに自己紹介をします。

「私はリニクライネン家のリューディアと申します」
「俺はエドヴァル・オウティルだ。エドとでも呼んでくれ。ああ、こんな格好しているが経営のコンサル全般をやっている。と言っても領地絡みになると自分で魔獣の対応をするんだ。まあ、零細だし冒険者の真似事もやっているのさ。口だけのコンサルじゃないんだな。書類と帳簿を見せてくれ」
「はい、どうぞ。私のことはリューと呼んでください」

 話の内容からしては信頼できそうです。ギルドでは、うちに見合った相手を紹介すると言っていましたから。
 ここが流行っているようには見えませんが、背に腹はかえられません。私はもう崖っぷちなのですから。
 ギルドの紹介なんだから、闇社会系の人ではないのでしょう。さっきのおじいさんとは違うはずです。

「胡散臭いって思ってるかもしれないが、俺はこれでも大学院で経営学を学んだんだ」

 オウティルは書類を読みながら一応経歴など話します。

「あなたも王都の大学院で?」
「ああ、ミュルデルだ」
「あら、私も同じですわ」
「学部は?」
「文化芸術学部です」
「あんな何の役にもたたないところか。どおりでな。俺は経済経営学部だった」
「そうですか!」

 それならば期待できますね。

「王都の中堅貴族の五男坊で、継げる領地なんかなかったからな。まあ、俺の話はいいか。で、今のところ何か具体的に行動しているか?」
「新規事業の融資は断られました。後は王都にいる友人たちの手紙を出したくらいですか……」
「だろうな――」

 エドは帳簿から顔を上げます。

「――この状況じゃあ、どこも金を貸してくれないなあ。俺の方から心当たりを当たってみるよ」
「よろしくお願いします」
「王都の有力貴族連中から、直接情報が届くのは有利だな。うまく商売に結びつけられれば……」
「あの、私の依頼を受けてくるのですか?」
「条件がある。その情報に俺も一枚かませてくれるか?」
「それはもちろん結構です。コンサルタントをお願いするのですから、当然かと思いますが」
「それは助かるよ。こちらが礼を言いたいくらいだ。俺にも運が向いてきたぜ」

 私は友人たちの顔を思い出しました。持つべき者は友達です。

「念のため卒業証書を見せて欲しい。今度持ってきてくれるか?」
「はいもちろんです。王都では経歴を偽る者も多いと聞きますし。明日の午前中に来ますので」
「悪いね。信用していないわけじゃないんだ。明日、今くらいの時間に来てくれ。それまでにいくつかネタを考えておくよ」
「分りました」


 エドの事務所を出て、せっかくですから周辺を見て回ります。貧乏街に来るのは初めてなのですよ。
 食べ物の屋台がいっぱい出ています。それに格安の衣料品店や、道具屋さんもあります。大勢の人たちが買い物をしていて、とても活気がありますね。
 本当に新規事業は大変そうです。

 せっかくですから、おいしそうなシュークリームの屋台に座りました。二つとお茶を注文いたします。味はすごく甘くておいしいです。最近は運動もしてますから、二個なら許容範囲でしょう。
 お茶は家と同じくらいの安お茶ですね。これもおいしいです。
 私は周辺を見て回ってから表通りに出ました。

「商売はとても無理だわ」

 貴族令嬢の思いつきで何かを売っても、勝負になんてなりません。早々に潰れるのが目に見えています。
 それから母親に頼まれたお買い物をしました。


 夕食前に今日の成果を一通り両親に説明します。娼婦ウンヌンのところは端折りました。

「つなぎ融資は助かるよ。延滞金も馬鹿にならないからな。金利を払ってもお釣りがくる」
「新規事業の融資なんて、断ってもらってよかったわ。だいたい何をするつもりなの?」
「これから考えます。それから商売はダメみたい。でも、なんとかこの領地から利益を上げる経営を考えます!」
「なんとかねえ……。オウティル家って子爵か?」
「武闘派の王政派ですね。息子さんが大学院で経済を勉強していたなんてねえ」
「五男坊じゃなあ。兄貴たちとは違う道に人生を見つけようとしてるんだ。なかなか見所のある奴じゃないか」

 私から話しただけですが、父も母もエドに対して悪い印象は持たないようです。

「信用できる人だと思いますよ。私は人を見る目があるんですから」

 と言ってから、婚約破棄のことを思い出してしまいました。私に男性を見る目などあるはずがありません。


 夜は友人に手紙を書きました。それとお母様の両親、お爺様とお婆様にもです。
 いろいろありましたので一度は顔を出さなければなりません。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

誰もが我儘な私ではないお方が良かったようなので、悪役の私は残忍な猛将達に手酷く扱われに行きます。戻れ? 絶対に離れるなと脅されているのですが

迷路を跳ぶ狐
ファンタジー
 魔法もろくに使えない役立たずと言われ、婚約者にも彼の周りの人達にも馬鹿にされてきた私。ずっと耐えてきたつもりだったけど、誰もがこんな私よりも、もっと優秀な魔法使いがいたはずなのに、とため息をつく。  魔法によって栄え、王都にまでその名を知らしめた貴族の婚約者は、「なんでこんな役立たずが……」と私を蔑み、城の中で魔法使いたちを統率する偉大な魔法使いは、「こんな女がこの領地を任されるだなんて! なんて恐ろしく愚かなことだ!!」と嘆く。  貴族たちに囲まれ詰られて、婚約者には見放され、両親には罵声を浴びせられ、見せ物のように惨たらしく罰せられた。「なんでこんな役立たずがこの城に来たんだ……」そう落胆されながら。  魔法が苦手でここを出る手段はないけど……もうこんなところにいられるか!  そう決意した私に、私を虐げていた誰もが腹を立てる。激しくぶたれた私は、機嫌を損ねた残忍な竜たちに、枷をされて隣の領地まで連れて行かれることになった。  重労働を言いつけられ、魔物や魔獣、竜たちがうろつく森の城についてからは、暗く小さな部屋に放り込まれた。  たった一人で食事をして、何もない部屋から見窄らしい格好で窓の外を見上げる。  なんだこれ………… 「最高…………」  もう、私を踏み躙る奴らに好きに扱われることはないんだ! それだけで、何もかもが最高!!  金もなければ能力もまるでない! 魔法すらまともに使えない! だけど今は思いのままに身につけに行ける!! 何もないのでこれから欲しいもの全部、手に入れに行きます!  そんな風にして竜族の城に住むことになった私。気づいたらやけに皆さんとの距離が近い? 元婚約者も「戻って来い」なんてうるさいけど、知りません!! 私は忙しいので!

追放された聖女は旅をする

織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。 その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。 国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。

【完結】婚約破棄と追放された聖女は、国を出て新国家を作っていきます〜セッカチな殿下の身勝手な行動で国は崩壊しますが、もう遅いです〜

よどら文鳥
恋愛
「聖女レレーナよ、婚約破棄の上、国から追放する」 デイルムーニ王国のために政略結婚しようと言ってきた相手が怒鳴ってくる。 「聖女と言いながら未だに何も役に立っていない奴など結婚する価値などない」 婚約が決まった後に顔合わせをしたわけだが、ドックス殿下は、セッカチで頭の中もお花畑だということに気がつかされた。 今回の婚約破棄も、現在他国へ出張中の国王陛下には告げず、己の考えだけで一方的に言っていることなのだろう。 それにドックス殿下は肝心なことを忘れている。 「婚約破棄され国を出るように命令されたことは、お父様に告げることになります。そうなると──」 「そういう話はいらんいらん! そうやって私を脅そうとしているだけだ」 次期国王になろうとしているくせに、お父様がどれだけ国に納税しているか知らないのか。 話を全く聞かない殿下に呆れ、婚約破棄をあっさりと承認して追放されることにした。 お父様に告げると、一緒に国を出て新国家を創り出そうと言われてしまう。 賛同する者も多く、最初から大勢の人たちと共に移民が始まった。 ※タイトルに【ざまぁ】と書いてあるお話は、ざまぁパートへの視点変更となります。必ずざまぁされるわけではありませんのでご了承ください。

【完結】王太子に婚約破棄され、父親に修道院行きを命じられた公爵令嬢、もふもふ聖獣に溺愛される〜王太子が謝罪したいと思ったときには手遅れでした

まほりろ
恋愛
【完結済み】 公爵令嬢のアリーゼ・バイスは一学年の終わりの進級パーティーで、六年間婚約していた王太子から婚約破棄される。 壇上に立つ王太子の腕の中には桃色の髪と瞳の|庇護《ひご》欲をそそる愛らしい少女、男爵令嬢のレニ・ミュルべがいた。 アリーゼは男爵令嬢をいじめた|冤罪《えんざい》を着せられ、男爵令嬢の取り巻きの令息たちにののしられ、卵やジュースを投げつけられ、屈辱を味わいながらパーティー会場をあとにした。 家に帰ったアリーゼは父親から、貴族社会に向いてないと言われ修道院行きを命じられる。 修道院には人懐っこい仔猫がいて……アリーゼは仔猫の愛らしさにメロメロになる。 しかし仔猫の正体は聖獣で……。 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」 ・ざまぁ有り(死ネタ有り)・ざまぁ回には「ざまぁ」と明記します。 ・婚約破棄、アホ王子、モフモフ、猫耳、聖獣、溺愛。 2021/11/27HOTランキング3位、28日HOTランキング2位に入りました! 読んで下さった皆様、ありがとうございます! 誤字報告ありがとうございます! 大変助かっております!! アルファポリスに先行投稿しています。他サイトにもアップしています。

捨てられた元聖女ですが、なぜか蘇生聖術【リザレクション】が使えます ~婚約破棄のち追放のち力を奪われ『愚醜王』に嫁がされましたが幸せです~

鏑木カヅキ
恋愛
 十年ものあいだ人々を癒し続けていた聖女シリカは、ある日、婚約者のユリアン第一王子から婚約破棄を告げられる。さらには信頼していた枢機卿バルトルトに裏切られ、伯爵令嬢ドーリスに聖女の力と王子との婚約さえ奪われてしまう。  元聖女となったシリカは、バルトルトたちの謀略により、貧困国ロンダリアの『愚醜王ヴィルヘルム』のもとへと強制的に嫁ぐことになってしまう。無知蒙昧で不遜、それだけでなく容姿も醜いと噂の王である。  そんな不幸な境遇でありながらも彼女は前向きだった。 「陛下と国家に尽くします!」  シリカの行動により国民も国も、そして王ヴィルヘルムでさえも変わっていく。  そしてある事件を機に、シリカは奪われたはずの聖女の力に再び目覚める。失われたはずの蘇生聖術『リザレクション』を使ったことで、国情は一変。ロンダリアでは新たな聖女体制が敷かれ、国家再興の兆しを見せていた。  一方、聖女ドーリスの力がシリカに遠く及ばないことが判明する中、シリカの噂を聞きつけた枢機卿バルトルトは、シリカに帰還を要請してくる。しかし、すでに何もかもが手遅れだった。

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

誰も信じてくれないので、森の獣達と暮らすことにしました。その結果、国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。

木山楽斗
恋愛
エルドー王国の聖女ミレイナは、予知夢で王国が龍に襲われるという事実を知った。 それを国の人々に伝えるものの、誰にも信じられず、それ所か虚言癖と避難されることになってしまう。 誰にも信じてもらえず、罵倒される。 そんな状況に疲弊した彼女は、国から出て行くことを決意した。 実はミレイナはエルドー王国で生まれ育ったという訳ではなかった。 彼女は、精霊の森という森で生まれ育ったのである。 故郷に戻った彼女は、兄弟のような関係の狼シャルピードと再会した。 彼はミレイナを快く受け入れてくれた。 こうして、彼女はシャルピードを含む森の獣達と平和に暮らすようになった。 そんな彼女の元に、ある時知らせが入ってくる。エルドー王国が、予知夢の通りに龍に襲われていると。 しかし、彼女は王国を助けようという気にはならなかった。 むしろ、散々忠告したのに、何も準備をしていなかった王国への失望が、強まるばかりだったのだ。

辺境伯聖女は城から追い出される~もう王子もこの国もどうでもいいわ~

サイコちゃん
恋愛
聖女エイリスは結界しか張れないため、辺境伯として国境沿いの城に住んでいた。しかし突如王子がやってきて、ある少女と勝負をしろという。その少女はエイリスとは違い、聖女の資質全てを備えていた。もし負けたら聖女の立場と爵位を剥奪すると言うが……あることが切欠で全力を発揮できるようになっていたエイリスはわざと負けることする。そして国は真の聖女を失う――

処理中です...