婚約破棄されたので貧乏令嬢の私は夜職に励みます。強いので冒険者もやりますし、隠れ聖女も。

川嶋マサヒロ

文字の大きさ
23 / 26

第23話「二人の時間」

しおりを挟む
 翌日、私は優秀なコンサルタントさんを訪ねました。
 一応、家庭教師の第一回目は無事に終わったことや、開拓地北部の最新の様子などを伝えます。

「お茶を入れるわね。それとおやつ買ってきたから」
「今日はいろいろ連絡があるけど、その前に一息つくか」

 エドの机には書類が山積みです。忙しいのにごめんなさい。
 私は安いけど美味しく入れたお茶と、シュークリームをテーブルに並べました。心のこもったティータイムです。

「貧乏街のは、甘ったるいから食べ過ぎると太るぞ」
「大丈夫。順調に痩せています! 一生懸命運動してるしね」

 これは嘘や見栄ではなくて、少しずつですが私の体型は元に戻りつつあります。やはり運動は大切ですよね。

「水車の図面ができたので持っていってくれるか。それと見積もりも。アルヴォ様に見せてくれ」
「へえ。結構立派なものを作るのね」

 開拓地の中を流れる水路に印があり、水車小屋の図面には寸法が書かれていて大きさがわかります。

「小屋は水車二基用だ。とりあえず一基を稼働させる」

 私はシュークリームにぱくつきながら見積もり用紙を確認します。かなりお行儀が悪いんですが許してくださいね。

「費用が安いのだけれど……」
「中古だよ。建て替えられる解体水車の使える資材を寄せ集めた。大丈夫。耐久性のある部品を再利用する」
「貧乏貴族向きねえ」
「石臼も中古だしな。で、ここの街にいる修理屋が消耗品を新造して組み立てるんだ。だから安い」
「ふーん。感心するわ」
「一部の領地が、製粉する代わりに保証金を預けてくれる。それが集まってから、足りない分の融資を頼む」
「面白いことを考えるわよねえ」

 当初からそのような相談を受けていました。
 つまり我が家の水車で製粉する代金を先にいただいて保証金とするのです。そのかわり決められた量は優先的に作業しなければなりません。

「魔獣もうまく押さえ込んでいるし、収穫量も期待できる。早どりからどんどん収穫して売り捌こう」
「残り一個ね。早く食べないとなくなっちゃうわよ」
「まっ、太らないように協力するよ」

 エドは最後のシュークリームを平らげました。

「お茶のお代わりを入れるわね」
「ああ」

 ポットのお湯を沸かしつつ、お茶っ葉を取り替えてシュークリームの皿をパパッと洗います。
 空になったエドと私のカップにお茶を注ぎました。

「リュスターのおじいちゃんに美味いって褒められたのよ」
「お世話なんて、言わない御仁だ。本当にうまかったんだろう」
「うん」

 会話が途切れました。エドは何かを言おうと考えているようです。待ちましょう……。
 静かにお茶のカップに口をつけます。

「まだ話があるの?」

 何を話すかと思い、緊張してきました。

「そうだな。隠す話じゃないんだが……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

奥様は聖女♡

喜楽直人
ファンタジー
聖女を裏切った国は崩壊した。そうして国は魔獣が跋扈する魔境と化したのだ。 ある地方都市を襲ったスタンピードから人々を救ったのは一人の冒険者だった。彼女は夫婦者の冒険者であるが、戦うのはいつも彼女だけ。周囲は揶揄い夫を嘲るが、それを追い払うのは妻の役目だった。

追放された聖女は旅をする

織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。 その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。 国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。

【完結】婚約破棄された令嬢が冒険者になったら超レア職業:聖女でした!勧誘されまくって困っています

如月ぐるぐる
ファンタジー
公爵令嬢フランチェスカは、誕生日に婚約破棄された。 「王太子様、理由をお聞かせくださいませ」 理由はフランチェスカの先見(さきみ)の力だった。 どうやら王太子は先見の力を『魔の物』と契約したからだと思っている。 何とか信用を取り戻そうとするも、なんと王太子はフランチェスカの処刑を決定する。 両親にその報を受け、その日のうちに国を脱出する事になってしまった。 しかし当てもなく国を出たため、何をするかも決まっていない。 「丁度いいですわね、冒険者になる事としましょう」

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

役立たずと追放された聖女は、第二の人生で薬師として静かに輝く

腐ったバナナ
ファンタジー
「お前は役立たずだ」 ――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。 癒やしの力は弱く、誰からも冷遇され続けた日々。 居場所を失った彼女は、静かな田舎の村へ向かう。 しかしそこで出会ったのは、病に苦しむ人々、薬草を必要とする生活、そして彼女をまっすぐ信じてくれる村人たちだった。 小さな治療を重ねるうちに、カリナは“ただの役立たず”ではなく「薬師」としての価値を見いだしていく。

誰も信じてくれないので、森の獣達と暮らすことにしました。その結果、国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。

木山楽斗
恋愛
エルドー王国の聖女ミレイナは、予知夢で王国が龍に襲われるという事実を知った。 それを国の人々に伝えるものの、誰にも信じられず、それ所か虚言癖と避難されることになってしまう。 誰にも信じてもらえず、罵倒される。 そんな状況に疲弊した彼女は、国から出て行くことを決意した。 実はミレイナはエルドー王国で生まれ育ったという訳ではなかった。 彼女は、精霊の森という森で生まれ育ったのである。 故郷に戻った彼女は、兄弟のような関係の狼シャルピードと再会した。 彼はミレイナを快く受け入れてくれた。 こうして、彼女はシャルピードを含む森の獣達と平和に暮らすようになった。 そんな彼女の元に、ある時知らせが入ってくる。エルドー王国が、予知夢の通りに龍に襲われていると。 しかし、彼女は王国を助けようという気にはならなかった。 むしろ、散々忠告したのに、何も準備をしていなかった王国への失望が、強まるばかりだったのだ。

引きこもり聖女は祈らない

鷹 綾
恋愛
内容紹介 聖女ポーラ・スターは、引きこもっていた。 人と話すことができず、部屋から出ることもできず、 彼女の意思表示は、扉に貼られる小さなメモだけだった。 「西の街道でがけ崩れが起きます」 「今日は、クラムチャウダーが食べたいです」 祈らず、姿も見せず、奇跡を誇示することもない聖女。 その存在は次第に「役立たず」と見なされ、 王太子リチャードから一方的に婚約を破棄され、聖女の地位も解かれる。 ──だが、その日を境に、王国は壊れ始めた。 天候不順、嵐、洪水、冷害。 新たに任命された聖女は奇跡を演じるが、世界は救われない。 誰もが気づかぬまま、 「何もしない聖女」が、実はすべてを支えていた事実だけが残されていた。 扉の向こうで静かに生きる少女と、 毎日声をかけ続ける精神科医フォージャー。 失われていく王国と、取り戻されていく一人の人生。 これは、 祈らない聖女が選んだ、 誰にも支配されない静かな結末の物語。 『引きこもり聖女は祈らない』 ざまぁは声高でなく、 救いは奇跡ではなく、 その扉の向こうに、確かにあった。

処理中です...