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33「魅了の終焉」

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 そして更に長い年月がたちます。私は幸せでした。
 アルフォンス様は王位を継承し、この地に遷都いたします。

 部屋の扉が荒々しく開かれました。アルフォンスが怒りの形相で入って来ます。
「よくもこの私をたばかったな」
「何のお話ですか?」
「私の人生をっ、返せっ!」
「今あなたのいる場所が、あなたの人生です」
「貴様にもソランジュと同じ運命を味あわせてやるぞっ!」
「……」
 あの人は所詮革命家の血。そんな人を王妃になどできませんでした。
「なぜ私との婚約を破棄しようと思われたのですか?」
「気が付いたのだ。私の真の人生とはいったい何かと、気が付いたのだ! ソランジュのおかげだった」
「それが【魅了】だったのです。あなた……」
「いや、違う。断じて違う! 貴様こそが【魅了】だったのだ。ソランジュは【魅了】を防いでいただけだったのだ」
 だから、それは違うのですよ。
 私の治世は上手くいきました。成すべきは成しました。
 もう遺書も残しております。病に蝕まれた命は、もう長くはありません。
 愛するあなたの手で奪って欲しいとの、最後の願いでした。

  ◆

 背後精霊さんが現れます。いつ以来の再会でしょうか。
「あの力を使ったんだね」
「久しぶりですね、アスモデウスさん。あなたのことなど忘れていました」
「僕は他の世界から、時々君を見ていたけどね」
「他の世界?」
「力が衰えている」
「私ももう高齢ですから」
「【魅了】の効力も消えるよ。魔女さん」
「あなたの力添えです」
「君が運命を受け入れると決めたからさ」
「はい、覚悟のうえです」
「幸せそうだね?」
「愛する人のために生き、そして死ねるのですから」
「そう……」
「あなたの目的は何だったのですか?」
「火炙りさんにくっ付いていた背後精霊が気に入らなかったのさ。あいつを叩き潰すために、君に協力した」
「精霊同士の争いなどがあるのですか?」
「あの令嬢が王妃になり国を収めれば、この世界はもっともっと良くなった。そんなの面白くないだろ?」
「私の時代も平和でしたが……」
「君よりあの令嬢が上だったのさ。人間の世界ってさ、そこそこの平和があればいいのさ。理想を実現するなんて、クソくらえなんだよ。たかが人間風情が」
「よく分かりませんが、私は幸せでした。だからあなたには感謝しているのですよ」
「感謝? これだから人間は面白い。バイバイ……」
 牢獄に現れた精霊は、それだけ言って消えました。
「バイバイ?」
 バイバイとはどのような意味なのでしょうか? 人間の世界にはない言葉です。
 あなたの人生に幸あれ?
 または死ねば救われる、とでもいう意味なのでしょうか?

 私もそろそろこの世界から消えさせて頂きます。
「さよなら。私の【魅了】さん……」
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みんなの感想(1件)

ココナツ信玄

誤字報告です。
簒奪は王位、帝位など君主の立場を後継者ではないものが奪うことを言います。
婚約者の立場にたいしては使用しません。

解除
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