氷炎の皇剣伝(ブレイド・ストーリー)

Orca Masa

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第2章 《煌帝剣戟》煌華学園予選 編

第18話 成長と不死鳥

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――煌華学園 第1アリーナ――


「次はユリの出番か。なんか真技が使えるようになったとか言ってなかったっけ?」

「……言ってた。」

「使うと思うか? 相手がほぼ同ランクのソン選手となると、使わないと俺は思うんだけど。」

「……同意。」 

 だよな。まぁ、勝てばそれに越したことはないんだけど。相手は一応にも格上だからな……。

「何の話だい?」

 トイレからアラムが戻って来た。こいつの場合は能力制御の度合いから言って、真技習得はもう少し先になりそうだな。

「お前はまだまだ弱いって話だよ。」

「嘘つけ! そんな話じゃないだろう?
 ねぇリンシン?」

「……雑魚。」

「ぐはっ!」

 なんか1人で勝手に胸を抑え始めた……。こういう時はスルーが一番だ。突っ込むと調子に乗るタイプだからな。

『会場の皆さま、お待たせしました!

 これより第2ブロック決勝戦を開始いたします!』

 アナウンスと共に入場門がゆっくり音を立てて開いていく。

『1年武術A組、城崎 百合選手
 並びに2年武術B組、ソン 南虎ナムホ選手の入場ー!』

 フィールドに進入する2人の手には、さっきのアッシュさんと卯月選手との試合の時と同じように《創現武装》があった。今回も《創現武装》の紹介をするのか。

『それでは第1ブロック決勝戦と同様に、各選手の《創現武装》の紹介をしていきます!

 まずは城崎選手の《創現武装》、紅桜です!』

『刀身に施された紅色のライン、刀を振ると残像のように空中に紅い軌跡が残ると言われていますね。

 加えて本人の容姿も美しいことから、剣を交えた選手からは「あんな美しい女性と刀に斬られるなら本望だ」などという声が届いています。』

 世の中には斬られて本望だ、なんて言うやつもいるのか……。たしかにユリは美人だけど……その発想はどうだかな……。

「リョーヤ、顔が引きつってるぞ? 大丈夫なのか?」

「あ、ああ。平気だ。」

 俺って結構思ってることが顔に出やすいタイプなんだな……。

『続きまして宋選手が持つのはハルバード型の《創現武装》、ボルガイストですね。』

『ハルバードは非常に強力な武器です。叩き斬る、刺す、引っ掛けるといった3つの用途を兼ね備えた武器は世界広しといえどなかなか無いでしょう。

 それを使いこなす宋選手は、10位以下のランカーに敵はいないと言っても過言ではありません。教職員の方々からも将来トップ10入りが期待される選手の1人ですね。』

 それほどの強さを持つ選手なのか。……ユリ……無茶はするなよ? そう思いながら俺は拳を膝の上で握りしめた。

『どうやら両者とも準備が整ったようです。

 それでは第2ブロック決勝戦

 試合開始!』

 ブザーと歓声がアリーナに響き渡った。頑張れユリ!

「行きます!」

 ユリが腰に紅桜を構えて、宋選手に向かってダッシュし始めた。幻獣は……ここでは出さないようだ。

「はあぁぁぁ!」

 あっという間に宋選手を間合いに入れたユリは、居合斬りを決めるべく勢いを殺さぬように踏み込んだ―――が

「ふん!」

 宋選手がボルガイストの柄でユリを弾き返した。さながら豪速球を打った剛腕スラッガーのような一撃だ。ユリは防御する間もなくスイングを食らって吹っ飛び、反対側のフィールドの壁にめり込んだ。

「ユリ!?」

「……あの一撃、重い。」

『キョーレツな一撃が城崎選手に命中したー!

 ファーストヒットは城崎選手が取ったと思われましたが、取ったのは宋選手だぁー!』

『今の宋選手の攻撃には正直驚かされましたね。
 まさか柄の部分で棍のように打撃を与えるなんて……。

 やはり宋選手はボルガイスト、いや、ハルバードの扱いに長けているようですね。』

 ユリは壁から脱すると、ここで幻獣を生成した。
 いい判断だ。相手に接近戦が通用しないと早々に判断し、遠距離戦に転換する。無駄な時間と労力を割かなくて済む点で善策だ。

 そう考えると最初に接近戦を仕掛けたのにもちゃんとした理由があるのか。

 どちらかと言えば不得手な接近戦で相手の動きで判断した方が、得意な遠距離戦において速やかに対抗手段を展開できるからだろう。
 そしてその接近戦で分かったことは―――

「見た目より素早い動きができるようだな。」

 俺の独り言にリンシンが反応した。俺の考えていることがなんとなく分かったようだ。

「……さっきのスイング?」

「ああ、格闘戦に長けたリンシンならかわせたかもしれないな。

 でもユリは格闘戦より能力戦、とくに遠距離型の能力戦の方が得意だからね。
 予想よりも宋選手に素早い動きをされて判断が遅れる、その影響で回避するのができなかったと考えると納得がいく。」

「……私との試合は接近戦だった。」

「あれは……きっと意地だと思う。ユリにもユリなりの正々堂々とした勝負を、友人であるリンシンに仕掛けていくつもりだったんだろうさ。

 んまぁ結局のところ、遠距離攻撃も使ってたけどな。」

「……じゃあ今回あの戦法は?」

「あぁ……あれはまだ宋選手に通用するか俺にも分からない。あの人の技術がどれほどのレベルなのか、もう少し見極める必要があるかな。」

 あの戦法……以前俺が教えた、幻獣の攻撃の最中に相手の不意を突いた接近戦を挑むという戦法だ。

 さっきの一瞬の接近戦で得た情報だけでは、この戦法を使うべきかどうかは判断しかねるだろう。大人しく遠距離戦で―――って、何だあれ!?

「みんな、お願い!」

 いつも通りキマイラやケルベロスなどの幻獣を選手するかと思っていたのに、生成されたのは―――

「ファーブニル、フェニックス!」

 お馴染みのドラゴン、そして見たことのない巨大な鷹のような火の鳥だった。朱雀とはまた違うその姿に畏怖さえ感じる。

『キター! 城崎選手の新たな幻獣が、この決勝戦でついにお披露目だぁー!

 観客席は城崎選手の新技披露で大盛り上がりです! かく言う私も興奮してきました!』

 《希望の闇ダークネス・ホープ》の襲撃からまだそんなに日数は経っていない。そんな短い期間の練習で新たな幻獣を生成できるようになるなんて……思った以上にユリの能力の制御は完成形に近いようだ。

 いや、もはや完成形なのかもしれない……。

「真技が使えるようになったって話もうなずけるな。」

 ユリは刀先で宋選手を示し、2体の幻獣に単純だが十分な指示を出した。

「行っけぇぇ!」

 ファーブニルとフェニックスは指示に従って宋選手の元へと飛び込んで行く。

『ファーブニルとフェニックスが宋選手に突っ込んでいく! 

 これはまさかの決勝戦ではなかなか見られない、短時間で決着がつくパターンか!?』

 あのバカ実況! 変なフラグを立てるなよ!

 なんて思ったが時既に遅し。宋選手はニヤリと笑って2体をギリギリまで引きつけると、ボルガイストを構え―――

「〈獄雷の雷刃撃ヘルサンダー・スラッシュ〉」

 身体全体を大きく捻って薙ぎ払った。ボルガイストから放たれた雷の刃は一瞬にしてファーブニルとフェニックスを消し去ってしまい、刃も消滅した。あの技はどうやら短距離の技らしい、が巨大な幻獣を消し去るだけの威力は十分にあった……。

『宋選手、試合開始わずか3分で真技を発動したー!

 さすがのファーブニルとフェニックスもこれに耐えられなかったか!? 跡形もなく消えてしまった!』

「終わりだ城崎さんよ。準優勝おめでとうな!」

 最大の皮肉を言って、宋選手は再びボルガイストを構えた。接近戦に持っていくつもりなのだろう、さっきの真技の疲れを全く感じさせない威圧的な構えだ。

「我がボルガイストの糧にしてくれる!」

「私も負けるわけにはいかないのよ!」

 ユリはケルベロスとキマイラを生成し、それぞれ宋選手を攻撃させた。

「小賢しい!」

 ボルガイストを振り回し、あっという間にケルベロスを両断した。時間差で炎を吐き出したキマイラ目掛けてボルガイストを投げつけると、その身体を串刺しにした。

『宋選手のボルガイストがいくつのもの戦いを経てきた城崎選手の幻獣を容易く葬っていく!

 ついに両者の距離は5mを切った!』

「〈雷神の―――」

 宋選手がさっきとは違う真技を発動させようとした時だった。

「今よ! 出てきて!」

 ユリの掛け声とともに両者の間の地面から炎が吹き出し、消えたはずのフェニックスが姿を現した。

『ななななんということだ! 消えたはずのフェニックスが復活したぁー!

 これには宋選手も驚きを隠せないようだ!』

「なっ―――!」

 見ると宋選手の目は見開き、口も開けっ放しにしになっている。それもそうだ、消し去ったはずのフェニックスが目の前に立ちはだかっているのだからな。

「今度はこちらから決めさせてもらうわ!」

 ユリがそう言うとフェニックスがユリと同化し、その脚で宋選手を掴んで垂直に舞い上がった。

「うぉぉ!?」

 ユリは天井ギリギリの所まで飛ぶと宋選手を解放した。支えが無くなった宋選手は地面に向かって自由落下し始める。

「クソぉぉぉ!」

 虚しく手足をばたつかせる宋選手に、上空からフェニックスと一体化したユリが、紅桜の切っ先を向けて急降下していく。その姿はまるで巨大な炎の槍だ。

 ……なるほど、これがユリの真技か。幻獣使いらしい技だ。

「〈不死鳥の紅焔槍ブレイズスピア・オブ・フェニックス〉!」

 ユリの紅桜が宋選手の腹に突き刺さり、そのままフィールドの地面に勢い良く激突した。衝撃波と共に舞った土煙が観客の目と喉を容赦なく襲う。

「ゲホッゲホッ……ど、どうなった?」

 見ようとしても、細かい塵が目に入りそうになるのを手で防ぐので精一杯だった。

『決まったぁー! 城崎選手の真技が宋選手に炸裂したぁー!

 果たして試合の行方は……?』

 ようやく土煙が晴れたフィールドに立っていたのは―――

『試合終了!

 第2ブロック優勝者は城崎百合選手だぁー!

 トップ10入りを期待された宋選手をわずか約5分で、しかもほとんど能力を使わせずにねじ伏せたその実力は計り知れない!』

 フィールドにはクモの巣状にヒビが入り、中心には気を失っている宋選手が横たわっている。負けたとはいえ彼も《超越者エクシード》、さすがに出血は止まっている。

「さすがは僕らがユリだね。
 先生からも一目置かれる生徒をこんなに簡単に倒してしまうなんてね。」

「だな。俺の試合の展開予想がここまで完全に外れたのは初めてだ……。まさかいつも使っていた戦法を使わずに倒すなんて思ってもなかったね。
 正直言って今かなり驚いてるよ。」

 最初のスイングのダメージもそこまで無いようだしな。本当に凄いな。

 ユリは担架で運ばれていく宋選手に付き添ってフィールドを後にした。優しい人だな、ユリは。


 ユリの試合は俺たちが全く予想してなかった試合運びで幕を下ろした。
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