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バジル・レシート・ライトセーバー

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 はい。と、手渡されたライトセーバーを片手にどうしていいのか戸惑っていると体育館の明かりが煌々とスポットライト並みにこちらを照らし始めた。

 とりあえずさ。体育館は借りといたから時間になったら来てほしいんだよね。なにをするとか、そんな説明もなく呼び出されただけ。素直に出向いたのは提示された報酬がそれなりによかったのと単純に暇なの。それと一応友人のお願いであるからにほかならない。

「なあ。これでなにすればいいんだ?」
「とりあえずかっこいいシーンさえ撮れればそれでいいんだけど。動きは決めてないって言うか、正直分かんね。どうやったらかっこいいアクションシーンて撮れるの?」

 知るか。

 って言うかそんな無計画な撮影のために呼ばれたし報酬も払うっていうのか。大体このライトセーバーのおもちゃだって決して安くはないはずだ。それくらい気合が入っているというのに肝心なところがなにも決まっていない。やる気だけが空回りしているようにしか思えない。

 あとでレシートを出されてライトセーバー代を請求されたりしないだろうか心配になってきた。そういうところがある。報酬を用意しておいてあとで請求するのも度々あった。それを知っておきながらのこのこと出て来た自分にも問題はあるのだけれど、やっぱり無計画な友人がよくないと思う。

 バジルを育てたいと昔に言い出した時もそうだった。育てて利用しながらも売りさばいていこうみたいな話だった。けれど、あっという間に飽きてしまって結局種代金だけ取られたこともあった。

 そうでないときだってもちろんあるのだけれど、今の友人はその気配がする。

「とりあえずライトセーバー同士をぶつけてみるか?」

 うなずきながらとりあえずは指示に従ってみる。プラスチックのポコンと言う音が虚しく響いただけで、とても間抜けな絵面だけがそこにはあった。

「なあ、これ、なんの意味があるんだ?」
「さあ? とりあえず金かけちゃったし、色々試してみようぜ」

 それからしばらくの間、動き続けてみた。年甲斐にもなく暴れ回った自覚はある。おかげで体の節々が痛くなり始めた頃だ。友人が息を切らしながらその場に座り込んだ。

「もう。やめ、やめだ」
「ああ。そうしよう」
「ってことで、そのライトセーバーやるからよ。ほら」

 案の定、物欲しそうに手を出してくる友人にいくらか聞いて、ライトセーバーは買い取った。なぜって? 思った以上に楽しくなってしまったんだ。これを振り回すのは悪くない気分だ。

 そう新しい発見をさせてくれた友人に感謝した。
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