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クローン・シロヘビ・ギャル
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朝家を出た瞬間。シロヘビが目の前を通った気がした。最初は気のせいだと思った。それなりに都会。住宅街の家。その玄関先にヘビ。それもシロヘビがいるなんて寝ぼけているとしか思えない。
確かに最近、疲れ気味だったけどさ。さすがにシロヘビを見間違えたりしないよね。
シロヘビが消えていったはずの方向をじっと目を凝らすけれど何かが動いている気配は感じられない。まあ、蛇だったらいつまでもそんなとこにいないよな。当然の話だ。
「先輩っ。そんな入口でなにしてるんですか?」
後ろから声をかけてきたのは後輩だ。今日もまぶしいくらいキラッキラだ。同僚からギャルと呼ばれている後輩はいつも遅刻ギリギリなのに今日は早い。
「ちょっとね。ヘビがいてね。驚いちゃった」
「ヘビっすか? こんな都会に? どうしてまた?」
私が聞きたいんだよ。そんなこと分かるわけないじゃないか。
「どっち行ったんです?」
「あっちよ」
まさか探すわけじゃあるまい。そう思ったのにギャルはどんどんと私が指さした方に進んでいってしまう。敷地を隔てるように生えている生垣の下の方をかがみながら確認している。
そんなことをしていてホントに出てきたらどうするのさ。襲われても私は助けられないよ。
「ねえ。どんな見た目っすか。見当たらないんですけど」
「白いヘビよ。真っ白いの」
「白っすか。縁起いいんですよね。白いのって」
確かそうだったはずだ。でもそれって夢で見たときとかじゃなかったっけか。よくわからなかったのであいまいに返事をしておく。
「縁起物ー。縁起物ー♪」
なにかツボにはいったのか、ギャルは調子よさそうに口ずさみだした。
「もうきっといないよ。そろそろ行かなきゃ仕事遅れちゃうよ」
「えー。先輩ばっかりズルいっす。私も見たいっす。縁起物ー」
ついには手でがさがさと生垣を揺らし始めた。そんなんしたら、逆に逃げちゃうって。そう突っ込もうとした時だ。
「キャッ!」
ギャルの聞いたことがないくらい高い声があたりに響いた。
「ど、どうしたの?」
「なんか動いた。でも白くなかった」
残念そうにギャルは立ち上がる。とりあえず諦めてくれたみたいだ。
「あーあ。せっかくクローンみたいな人ばかりがいる会社から抜け出せるチャンスだったと思ったのに」
そうぼやくギャルの気持ちが分からないことはない。だって、私もさっきみたとき、もしかしたらここから抜け出せるかもしれないなんて思ったんだ。
今日も一日、クローンのようにもくもくと作業をしなくてはならない。それがいつまで続くのか分からないのはやっぱり精神的にも肉体的にも堪えるものがある。
「まっ。先輩。今日も頑張っていきましょう」
ギャルの底なしの明るさだけが今は支えだと思えた。
確かに最近、疲れ気味だったけどさ。さすがにシロヘビを見間違えたりしないよね。
シロヘビが消えていったはずの方向をじっと目を凝らすけれど何かが動いている気配は感じられない。まあ、蛇だったらいつまでもそんなとこにいないよな。当然の話だ。
「先輩っ。そんな入口でなにしてるんですか?」
後ろから声をかけてきたのは後輩だ。今日もまぶしいくらいキラッキラだ。同僚からギャルと呼ばれている後輩はいつも遅刻ギリギリなのに今日は早い。
「ちょっとね。ヘビがいてね。驚いちゃった」
「ヘビっすか? こんな都会に? どうしてまた?」
私が聞きたいんだよ。そんなこと分かるわけないじゃないか。
「どっち行ったんです?」
「あっちよ」
まさか探すわけじゃあるまい。そう思ったのにギャルはどんどんと私が指さした方に進んでいってしまう。敷地を隔てるように生えている生垣の下の方をかがみながら確認している。
そんなことをしていてホントに出てきたらどうするのさ。襲われても私は助けられないよ。
「ねえ。どんな見た目っすか。見当たらないんですけど」
「白いヘビよ。真っ白いの」
「白っすか。縁起いいんですよね。白いのって」
確かそうだったはずだ。でもそれって夢で見たときとかじゃなかったっけか。よくわからなかったのであいまいに返事をしておく。
「縁起物ー。縁起物ー♪」
なにかツボにはいったのか、ギャルは調子よさそうに口ずさみだした。
「もうきっといないよ。そろそろ行かなきゃ仕事遅れちゃうよ」
「えー。先輩ばっかりズルいっす。私も見たいっす。縁起物ー」
ついには手でがさがさと生垣を揺らし始めた。そんなんしたら、逆に逃げちゃうって。そう突っ込もうとした時だ。
「キャッ!」
ギャルの聞いたことがないくらい高い声があたりに響いた。
「ど、どうしたの?」
「なんか動いた。でも白くなかった」
残念そうにギャルは立ち上がる。とりあえず諦めてくれたみたいだ。
「あーあ。せっかくクローンみたいな人ばかりがいる会社から抜け出せるチャンスだったと思ったのに」
そうぼやくギャルの気持ちが分からないことはない。だって、私もさっきみたとき、もしかしたらここから抜け出せるかもしれないなんて思ったんだ。
今日も一日、クローンのようにもくもくと作業をしなくてはならない。それがいつまで続くのか分からないのはやっぱり精神的にも肉体的にも堪えるものがある。
「まっ。先輩。今日も頑張っていきましょう」
ギャルの底なしの明るさだけが今は支えだと思えた。
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