【完結】死にたくないから、ヒロインたちを殺すことにした

製作する黒猫

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22 ゲーム世界

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 1週目では気づかなかったが、この世界の異常性をエンの死をきっかけにして気づくことができた。



 いつものように登校し、エンがいない教室でいつものように過ごす。そう、この時点でおかしいのだ。取り巻きたちは普通に話しかけて来るし、教室でうわさ話に花を咲かせる生徒たちもエンについて全く触れていない。

 一国の王子が死んだというのに、この状況はおかしい。笑い声さえ聞こえる教室を異常だと考えているのは私だけのようで、気持ちが悪いぐらいに日常が過ぎる。



王子でなくても、クラスメイトが死んだ、同じ学園にいる生徒が死んだ・・・その状況で誰もその話題を口にしないなんておかしい。まさか、このまま何食わぬ顔でエンが教室に入ってきたりするのだろうか?私が殺したはずのエンが・・・いや、それはさすがにないだろう。



確認するのは怖かったが、私はお昼休みに取り巻きの一人のアイモアを呼び出して話を聞くことにした。



「殿下の噂ですか?」

「えぇ。どのように周囲が思っているのかと思って。アイモアが聞いた範囲でいいから教えてくれないかしら?」

「噂はありません。」

「・・・本当に?一国の王子の噂くらい1つや2つあると思うのだけれど?」

「エン・F・ペンプトンの噂はありません。」

「・・・」

 様子がおかしいと気づいて、まじまじとアイモアの顔を見ると、よく見れば表情が抜け落ちたように無表情で、その瞳に感情などないように見えた。



「アイモア?」

「何ですか、ミデン様?」

 呼びかければにっこりとほほ笑まれて、先ほどまでの異様さが消えた。



「ありがとう。先に戻っていて。」

「わかりました。教室で待っていますね、ミデン様。」

 きれいな礼をして私の前から立ち去るアイモアは、いつものアイモアだ。でも、よくよく見れば、何かが足りないような気がした。

 いや、それはアイモアだけではない。思い返せば、エアンヌ、セリア、メルパーラと私の他の取り巻きたちも何かが足りない。



 何が足りないのか・・・別に今まで違和感を感じていなかったが、よくよく考えればいつもそばにいるソーニャにも何か物足りないと感じる。



 エンを殺した時、この人は誰なのかと疑問に思った時と似ている。私の知っている1週目のエンとはもう会えないのだと気づいて、今のエンは私の知っているエンではないと気づいた。ゲームのエンでも、1週目のエンでもない。私が殺したのは今のエンだ。



 他の人に抱く違和感も、1週目と今を比べているからなのだろうか?いや、根本的に何かが違う気がする。

 どこかで同じような状況があった。それが1週目ではなかった・・・なら、ゲーム?そうか、ゲームだ!



「みんな、ゲームのキャラみたいだ・・・」

 どこがと聞かれれば難しいが、接していくうちにそう感じたのだ。生身の人間ではなく、プログラム通りに動くキャラクターのようだと。

 私に合わせて反応を返してくれるが、そこに彼らの意思はないような気がした。



 そこまで考えて、私は止めていた息を吐きだす。



 一体何を考えているんだろう。私が感じたものが正しかったとして、それがあらわすことはつまりここが「アリスモスの恋」の世界だということだ。1週目は、「アリスモスの恋」に類似した現実世界というなら、今は「アリスモスの恋」に類似したゲーム世界。それが本当だとしたら恐ろしすぎる。



 どれだけあがいて生き残ったとして、この世界で生き残ることに何の意味がある?これが生きていると言えるのだろうか?



 生きるということは、人間同士の交流が不可欠だと私は思っている。人との交流によって、私は変わり、私によって周囲は変わる。そんな変化を起こすことが生きることだと、私は思うのだ。

 その道理で行くと、今の私は・・・死んでいる。



「まだ決まったわけじゃない・・・」

 今の学園の様子、先ほどのアイモアの様子を見ると、ここがゲーム世界ではないかと思えてくるが、他にも意志を持つ人がいるかもしれないし、すべて勘違いということもある。



 アイモア二重人格説を出してもいい。

 冗談はさておき、意思を持っていそうな人には心当たりがある。



 ちょうどそんなことを考えたためか、あちらから声をかけてきた。



「月姫ではないですか。こんなところで何を?」

「会長・・・」

 私の目の前に現れたのは、生徒会長ペンデ・S・アンティカトプトリスモスだった。珍しく、黒髪からのぞく金の瞳を見て、私は少しだけほっとする。



 この人はプログラムではない。それが、目を見ればわかった。変な話だが、目を見て違和感がないのだ。普通の人間だとわかる。



 もしも、周囲がプログラムされていたとしても、あがく価値はありそうだ。





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