ソーセージで世界を救う!?

製作する黒猫

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勇者に選ばれた、ソーセージ屋の息子

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 俺は、小さな町のソーセージ屋の息子、ハム・スター。

 実は俺、勇者に立候補して、見事その座を勝ち取ったんだ。つまり、俺は勇者ハムというわけだ。



 勇者の証として、伝説の剣を手に入れた俺は、一度帰郷した。もちろん、町のみんなは俺が勇者になったことをもう知っているので、祭りかというくらいのお祝いをしてくれた。

豪華な食事と普段は飲めないような酒もふるまわれ、町の人たちは2重に喜んだ。



「もう、こんなところにいたのねっ!」

「うおっ!?」

 背後から背中を思いっきりたたかれて、痛くはないが驚いて声を出した。



「なんだよポメラ。お前は普通に挨拶できないのか。」

 この宴の一番のスポンサーであろう、ポメラ・ニアンが座っている俺を見下ろして鼻で笑う。彼女は、この町一のお金持ちのお嬢様で、俺の幼馴染だ。



「あら、普通なんて誰が決めるのかしら?私にとってはこれが普通なのよ。」

「そんなんだから、俺しか友達がいないんだぞ。」

「失礼ね。学友はたくさんいるわっ!」

「はいはい、そうですね。」

 俺の隣にポメラが腰を掛けた。ちなみに、俺たちは今地べたに座っていて、まさか彼女がそのような場所に座ると思っていなかったので、俺は目を丸くした。



「何よ。」

「いや、尻汚れるぞ。」

「わかってるわよ。あんたがいけないんじゃない、こんなところに座って・・・私、あんたのことを見下ろして話す趣味は持っていないわ。友達は対等なのよ。」

「それは悪かったな。」

「本当よ。あんたは、ものすごく悪いことをしているわ。だから、今度私の言うことを一つだけ聞きなさいよ。」

「対等な関係じゃなかったのか・・・」

「悪いことをしたのなら、それなりのことをして償うべきよ。」

「いやいや。てか、お前が勝手に俺の隣に座っただけだよな!俺が悪いのか!?」

「さっき悪かったって、言ったじゃない!」

「それはその方が丸く収まるからだろっ・・・ま、いいか。お前だけだったしな。」

「何ひとりで納得してるのよ。」

 むすっとした顔をこちらに向けるポメラ。

 俺が勇者に立候補するといった時、彼女だけが真面目に聞いて応援してくれた。なれるわけがないと鼻で笑うやつを、挑戦もしない口だけの弱虫が何を言っているのだと、彼女は言ってくれた。



「ポメラ。俺、勇者になったよ。」

「知ってるわ。誰がこの宴を開いたと思っているの?お父様よ。」

「お前じゃないのかよ!」

「私にできることなんて限られているわ。」

「まーそれはそうだな。・・・それでポメラ、俺勇者になったんだけど。」

「・・・ふっふふっ!わかったわよ。全く、あんたってばそういうところが子どもよね。」

「悪かったな。」

「悪くないわ。・・・よくやったわね、ハム。褒めてつかわす。」

「くっ・・・なんだよそれ・・・ぷふっ!」

 確かにほめてほしかった。でも、最後のはいらないだろ。どこの女王様だよ。

 笑いあう俺たちの前に、その雰囲気をぶち壊す黒い影が落ちた。



「ハム・スター・・・勇者になったそうだな。」

 俺にそう声を掛けてきたのは、スキンヘッドの入れ墨男だ。実は顔なじみで、こいつも俺が勇者に立候補するといった時に鼻で笑ったやつだ。



「あぁ。これでお前との縁が切れるな。」

 俺は懐から重い袋を取り出して、男に渡した。中には、3年分ほどの生活費が入っている。勇者の支度金というやつだった。



「・・・ふん、いいだろう。これでお前の親父が俺にした借金はチャラだ。お前との約束も守り、俺は今後一切お前の親父さんに金は貸さない。」

「信じるぞ。」

「俺は嘘はつかない。金貸しだからな。お前も入用の時は声を掛けてくれ。じゃな。」

「誰が掛けるか。でも、ありがとな。ここまで待ってくれて。」

「はっ。それが金貸しっていうもんだ。」

 金貸しのスキンヘッドは、祝いムードの中へと溶け込んでいった。



「なんだ、あいつも参加する気か。」

「あいつが2番目のスポンサーよ。」

「まじかよ。」

「こんなことで嘘はつかないわ。でもよかったわね。これで心置きなく・・・」

「ソーセージが作れるなっ!」

「はっ!?・・・もう、勝手にしなさいよ!」

 突然怒り出したポメラも、俺の前から離れていってしまった。



「俺も帰るかな。」

 一応主役だが、主役がいなくてもこういうのは楽しめるものだ。俺は自分の家に帰った。





 家に帰ると、研究室の明かりがついていたので、俺はそちらへ向かった。そこには、予想通りソーセージの研究をする父の姿があった。



「帰ったぞ、親父。」

「おかえり。見てくれハム!新しいソーセージを開発したんだ!」

「げっ!なんかくせーぞ!」

「ブルーソーセージといって、カビをまとわせてみた!」

 どや顔でとんでもないことを言われた。いや、ブルーチーズから着想を得たことは分かったが、あれはチーズだからいけるんだろ?ソーセージをカビさせたって、食えなくなるだけだろ。



「もったいないことすんじゃねーよ!」

 俺の鉄拳が親父のボディにめり込む。



「ぐはっ!?いいこぶしだ・・・このこぶしで、世界を救うのだな。」

「は?んなわけねーだろ。この剣で救うんだよ。」

 俺は腰に下げていた剣を親父の前に出した。



「俺は、戦いなんてろくに出来ねーから、この伝説の剣の力に頼ることにする。」

「息子がものすごく情けなくて、父ちゃん悲しいよ。」

「俺は、親父が借金まみれになってまで研究して作ったものが、チーズのパクリで、しかも食えない物だったことが腹立たしいよ。勇者になってまで背負った借金だったのに。」

「・・・もう、払ったのか?」

「あぁ。もうスキンヘッドは親父の前には現れないって。全く、感謝しろよな本当に。だいたい、大恩人の俺を出迎えもしないってどういうことだよ。」

「・・・」

「おい、礼も言えねーのか!」

「・・・もう、金はないのか?」

 ぶちっと、俺の堪忍袋の緒が切れたとき、お馴染みの扉をたたく音と怒声が響き渡った。

 これはあれだ。借金取りが来た時の音だ。



「親父・・・」

「今度は、モヒカンに借金しちゃった・・・テヘ。」

 問答無用で、俺の鉄拳が親父のボディにめり込んだ。



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