ソーセージで世界を救う!?

製作する黒猫

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夏休みなんて、あっという間に終わる

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「魔力と向き合うか・・・」



 あれから、2週間たった。順調に旅を進めた結果、魔王城の前まできた。

 万全の態勢で望むべく、魔王城の城門前で野宿をする。魔王が恐ろしいのか、魔物と遭遇することはなく、城門前は普通に野宿するよりも安全だ。



「残された時間は少ない。これで片が付かなければ・・・」

 俺は手に持った相棒を眺める。素晴らしい一品となった、竜のソーセージ。ここまで苦楽を共にしてきた相棒だが、こいつがおいしく食べられるのはあと数日だ。



「できれば、お前と共に魔王を倒し、世界に平和を取り戻したい。」

 そのためには、力が必要だ。四天王に敗れた剣では、その上の魔王は倒せないだろう。

 実は、四天王の一人、レーズンという鎧騎士と戦ったのだが、俺の短剣では敵わなかった。俺では倒せないと判断した神父が・・・そう、神父は俺たちの旅についてきたのだ。その神父が、聖魔法で鎧騎士を倒したのだ。



 やっと眠れると言って、鎧騎士は48時間の眠りについている。



 剣は駄目だった。なら、魔法を鍛えるべきだ。そう思ったのが、3時間前。そう、遅すぎたのだ。もう魔王城前まで来ていて、引き返せる状況ではない。



「それでも、諦めない・・・」

 3時間、俺は自分の中の魔力を感じた。そして、わかったことがある。



「俺は、ソーセージに愛されている!」

「何馬鹿なこと言ってんのよ!」

「けふっ!?」

 背中をたたかれた。このようなことをするのは神父ではない。もちろんポメラだ。



「何すんだよ!?」

「こんな敵の目の前まで来て馬鹿なこと言ってるからよ。たく、本当に馬鹿なの?なんで城門前に野宿するわけ?あほでしょ?」

「いや、ここなら明日すぐに魔王城に向かえるだろ?」

「・・・もういいわ。寝込み襲われても知らないわよ。」

「ポメラ、お前のことはいい友達だと思っている。それ以上でもそれ以下でもないぞ。」

「は?・・・って、何勘違いしてんのよ!?襲ってくるのは魔王よ、魔王!」

「魔王はそんな奴じゃないぞ?」

「知り合いかよっ!?」

「いや、見たことすらない。」

「全く、神父様からも言ってやってよ。」

「そうですね、魔王の性格的に寝込みを襲うことはないと思うのでご安心を。あと、今は神父ではないですよ。」

「まさかの私に言ってきた!?なんでそこまで言い切れるの?」

 どうやらポメラは魔王の話を聞いたことがないらしい。俺も詳しくは勇者になってから知ったしな。



「魔王が村や町を襲い、略奪している話は知っているか?」

「もちろんよ。育てた牛や豚、畑のものも根こそぎ奪っていくのでしょう?」

「そうだ。しかし、その前に魔王は先ぶれを出すんだよ。あと何日後にこの町を襲うとかな。」

「え?」

「だから、避難さえしておけば、人的被害はないし、家畜や作物も一緒にもっていけば被害はないんだよ。ただ、それではいそうですかって、避難しない者もいるから・・・そういうのは連れ去らわれたり、殺されたりしているらしい。」

「・・・想像していたのと違うわ。」

「だろうな。これは城の奴が言っていたが、魔王は自然災害のようなものだ。どうにかするとかではなく、対処するしかない。だけど、そう思わないやつもいて、だから勇者が必要になったんだ。」

「あんたのことね。」

「あぁ。」

「ところで、ソーセージに愛されてるって、どういうこと?」

「あぁ、ちょっとお前たちを見習って、自分の魔力に向き合ってみたんだ。そしたら、ソーセージを作る魔法に適性があるのだと、確信が持てた。」

「そう。よかったわね。いい職人になれそうで。」

 心底どうでもいいという顔をしながら、ポメラはそう言って歩き出した。



「どこに行くんだ?」

「お花を摘みに。察しなさいよね。」

「あぁ、大きいほうか。ごゆっくり。」

「焦らずゆっくりどうぞ。」

「2人とも、一生彼女ができないわよ。」

 振り返ってこちらを人睨みしてから、ポメラは木の陰に消えていった。



「神父、頼みがあるんだ。」

「何でしょうか?」

「明日、魔王城へは俺一人で行こうと思っている。魔王になんて勝てるわけないからな。」

「そうだと思いましたよ。それで、頼みとは何でしょうか?」

「ポメラとともに、ここに残ってほしい。ポメラは納得しないだろうから、四天王にかけた魔法みたいなのを使って、明後日くらいまで眠らせてほしい。頼む。」

「・・・」

「神父?」

「約束はできませんね。」

「・・・俺は、死ぬつもりはない。でも、2人がいるより、一人のほうが逃げやすいんだ。だから、頼む。」

「そうですか。」

 神父はそれだけ言って、横になった。もう話を聞くつもりはないというように、目をつぶる。



「頼んだ・・・おやすみ。」

「おやすみなさい。」





 次の日

 目が覚めると、神父はもう起きていて朝食のスープを作っていた。いいにおいがあたりに漂っている。



「おはようございます。」

「おはよう・・・ポメラは?」

「見てわかりませんか?眠っていますよ。さ、早くお食べください。」

「・・・ありがとう。」

 よそわれたスープと、カバンから取り出したかたいパンで腹を満たした。



「あなたは、魔王城に何をしに行くつもりですか?」

「観光だな。お城を見学させてもらって、帰る。一度くらいは魔王城に乗り込むのが、勇者の義務だと思うしな。」

「・・・今までの勇者のお話はご存じで?」

「死んだって話だろ。魔王城に入ったものは死に、それ以外のものは行方不明・・・逃げたんだろうな。」

「見学なんて話、通用すると思いますか?」

「やってみなきゃわからないだろ?」

「・・・そうですね。」



「もう行くわ。」

 立ち上がって、俺は相棒を手に取った。



「短剣は?」

 俺の腰に短剣がないことに気づき、神父は俺に短剣を差し出した。でも、俺はそれを手で制す。



「いらない。」

「本気なのですね。わかりました。」

「そうだ。俺は見学に行くのだからな、武器はいらないんだよ。またな。」

「・・・ご武運を。」





「バカ・・・」

「ポメラさん、気持ちはわかりますが、少し辛抱してください。まだ近くにハムさんがいます。」



「もうだいじょ

「あんのっバカぁーーーーーっ!」

「ポメラさん、落ち着いてっ!」

「これが落ち着いてられるって?魔王城に見学に行く勇者!いいえっ!人間がどこの世界にいるのよっ!?」

「ソーセージ界にいましたね。」

「死人が出てるっていうのに、ソーセージ一本しか持っていかないなんて・・・もう、死ぬわよ?」

「でも、止めなかったんですね。」

「・・・」

「なぜ、止めなかったのですか?あなたは、眠ったふりをしていただけですので、止める機会はいつでも会ったでしょう?なぜ、止めなかったのですか?」

「決まっているじゃない。」

 ポメラは立ち上がって、いつも持っている白い布が巻かれた剣を担いだ。



「ハムがどんなバカなことをしても、私がフォローすればいい話だわっ!」

「ふふっ。では、私も手伝いましょう。」

「なら行くわよっ!」







 じめじめとした空気。時折吹く風がカビのにおいまで運ぶ悪環境。

 黒を基調とした城は、どこか陰鬱な空気を漂わせて、人間の住む場所ではないというのが全身で感じられる城だ。そんな城の門番、黒い鎧を着た騎士・・・どこか四天王に似ている騎士に俺は無防備に近づいて話しかけた。



「おはよう。俺は勇者に選ばれたハム・スター。今日は城の見学に来たんだが、通してもらえるか?」

「勇者が城に見学?・・・少し待ってくれ。お前、上に聞いてこい。」

 俺に答えた騎士は、近くにいた同じような騎士に命令した。

 そして、そう待たされず、俺は城の中へと通されることになった。



「見たところ丸腰だが、お前は魔法使いなのか?」

「一応魔法も使えるが、いつもは剣を使っているし、剣のほうが得意だ。」

「だろうな。だったらなんで丸腰なんだ?」

「見学に武器は必要ないだろ?それに、もし何かあったら・・・これがある。」

 俺はソーセージを掲げて見せた。



「それは・・・俺にはソーセージにしか見えないんだが・・・」

「ソーセージだ。俺は、ソーセージ屋の息子なんだよ。これは、俺の最高傑作「竜のソーセージ」だ。」

「おう、そうか。それで?」

「十分だろ?」

「あぁ、そうか。それはよかったな?」

 ごまかし笑いみたいなものを浮かべた騎士は、突然まじめな表情になって立ち止まる。それは、目的地に到着したということだろう。俺の前には、大きな扉があった。



「謁見の間だ。魔王様がお待ちだぞ。」

 そういって、騎士は扉をノックする。すると、数秒後その扉がゆっくりと開かれた。





 謁見の間で首を垂れる俺に、魔王は顔を上げるように言ったので、俺は顔を上げた。魔王の姿を視界に入れることになり、魔王の姿が確認できた。

 黒いライオン。それも、2足歩行の。

 それが魔王の姿だった。



「臣下から聞いたが、見学に来たというのは本当か?」

「はい。勇者というのは、魔王様に顔をお見せするのが仕事のようですからね。お会いすることができてよかったです。」

「・・・」

「まだ少ししか拝見していませんが、素人目から見ても素晴らしいつくりの城だと思います。」

「・・・本当に見学に来たのか?」

「はい。・・・まさかとは思いますが、私が魔王様を害すとでもお思いですか?いいえ、害せるとお思いですか?」

「思えないな。たとえ、我の時を止めたとしても、お前の力では我に傷一つ付けられないであろう。」

「はい。逆に、魔王様は勇者なんて名前だけの戦士を一瞬で死に至しめることができるでしょうね。そうされますか?」

「・・・それもよいかとは思うな。」

 なんだって!?

 冷汗が流れる。魔王は無駄な殺生は好まないと思ったが、別にそういうわけではないようだ。



「こちらもなめられては困るのでな。」

 すさまじい殺気が、俺にかかる。俺は這いつくばった。これでは逃げられない。



「見学に来たといったな。なら、我の魔法をその身をもって体験するがいい。」

「くっ・・・待ってくれ・・・」

「諦めろ、勇者に選ばれたことが、お前の運の尽きだ。」

「・・・せめて、火の魔法で・・・俺のソーセージを・・・」

「・・・?ソーセージ?」

 無情にも、俺の目の前にどこまでも続く穴のような闇が広がっていた。



 終わりか。



 でも、最後に・・・



 俺は火の魔法を相棒に放った。





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