Burn!エクスプローダーズ【小説版】

ひいらぎ ぎんが

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Burn!エクスプローダーズ2【小説版】

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【まえがき】
この小説は拙作漫画「Burn!エクスプローダーズ」(https://www.alphapolis.co.jp/manga/904387827/783238194)の1エピソードとして考えたものです。
人物関係や世界観は漫画を読んでいないと分かりにくいかもしれません。
本作は荒木飛呂彦先生の「武装ポーカー」のオマージュ作として当初20ページの漫画として発表しようとしていましたが、残念ながら描きかけの途中で頓挫してしまっています。
ですが、そのままではもったいないので漫画を描く時のシナリオを元に、小説として最低限読めるように書き直しました。
小説の経験が浅いので表現等稚拙な箇所があるかもしれませんが、お楽しみいただければ何よりですm(_ _)m
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 互いの手札がテーブルにオープンされた。
「フォアカード……また私の勝ちだな」
「く……!」
 マッキーはテーブルの向かい側に腰掛けている中年の紳士を悔しげに睨んだ。
 その紳士も目深にかぶった帽子から鋭い眼光を放ちながら言った。
「まだ掛け金はあるかね……?なぁに、なければそこにいるあんたのお友達共々、身体で払ってもらえばいいだけのことだがね……」
 そのお友達……マッキーの相棒リナは、椅子に縛り付けられ口には猿ぐつわをされて紳士の傍らに座らされていた。リナは意識を失っているのか頭を垂れたままである。
 紳士の傍らには黒服を来た二人組の男、背の高い男と背は低いが太った男が控えていた。その男たちはリナを覆い隠すように立ちふさがり、マッキーに睨みを効かせている。
 彼女は悔しげに緑髪をかきむしった。



 彼女らがポーカーでの勝負をする事になったのには理由がある。
 マッキー・J・Jとリナ・ハーディの悪友コンビは、今日も一攫千金を夢見て惑星レイドの荒野をさすらっていた。
 しかし人間腹が減っては何もできない。とある街で酒場に入って食事をすることにした。
 その酒場は昼間から安酒を飲んで大声で騒ぐ者、人を何人殺しただの隣町で強盗を何件やっただのウソかホントかわからないような物騒な大ぼらを吹く者とろくでもない連中がたむろしていた。
 他人には関心を持たない連中であるのと彼女らの下げている銃を見てやばい奴らだと判断されたのか、女二人酒場に入っても特に好奇の目で見られたりはしなかった。
 オーダー後にチンピラがナンパ目的でやってきたが、リナがデザートイーグルを抜いて追っ払った。
 ひと安心したところで食事がテーブルに来たので、二人共早速それにがっついた。
 マッキーは山盛りの骨付きの焼いた肉、リナは大盛りスパゲッチ。これまた大盛りのマッシュポテトの皿は二人で分け合った。

「ねぇマッキー……向こうのテーブル……」
「へ?」
 骨付き焼肉にかぶりついていたマッキーの耳元でリナが囁いた
「あの紳士……お金持ってそうじゃない?それにポーカー……下手そうだよ」
 そう言われてマッキーは向かいのテーブルの紳士を見やった。
 その紳士は老人と二人向かい合って席につき、ポーカーに興じている。
 紳士は暗い灰色の背広と帽子を着込み、帽子からは銀色の髪がのぞいている。
 帽子の奥に見える灰色の瞳には何か不気味な暗さを感じることができた。

 相手の老人は紳士のベットを受けレイズで応える。
 手札をオープンする。
 紳士は深いため息をついた。
 互いの掛け金が老人の方に移動した。

「そうかな……で、それが?」
「わたしちょっとしたイカサマができるのよ」
 思わずマッキーは緑色のどんぐり眼でリナの顔を見つめた。
 リナは口元に小悪魔のような笑みを浮かべながら続けた。
「あのおじさんだったらサシでやってもチョロいでしょうよ」
「リナ!」
「まぁ見ててよ あとでおごってあげるから!」
「ちょ……リナ!」
 言うが早いかリナは食べかけのスパゲッチを残したまま席を離れると、深紫の髪をなびかせて紳士と老人のテーブルに駆け寄っていった。
「……ったく」
 マッキーは思わず独り言を言った。
「こういう事だけは手が早いんだから……」
 向こうのテーブルではリナが紳士と老人と交渉を始めている。
 勝ちまくった老人は今が潮時とばかりに席を外して、紳士に会釈しながら酒場を出ていった。

 早速テーブルについたリナは紳士とサシでポーカーを始めた。
 スリーカード、フォアカードとリナの手札は勝ちを重ねていった。もちろん彼女の稚拙なイカサマ技術もあるのだろうが……
 鼻息を荒くして得意の絶頂にあるリナだが、その顔色が次第に青ざめていくことになる。
 ある程度勝ちが続いたところで急に負けだしたのである。
 イカサマでフォアカードを出しても、紳士の方はより強い手札を出してきた。
 べそをかきながらベットするが、紳士にレイズされ掛け金を吸い取られていく……
 負け続きの結果ついに掛け金はすべて奪われた。もはや掛けるものがなくなったリナは上着を掛け、次は父親の残した大切な銃、デザートイーグルまで紳士に持っていかれてしまった。
 そこで彼女は気力が尽きたのか、白目を向いて泡を吹いて失神したまま椅子に座わりこんでしまった。

「で……もう掛けるものはないのかね?」
 何も反応はない。
「仕方ない……」
 紳士はやれやれといった感じで深くため息をつきながら言った。
「あんたの身体で払ってもらおうか……」
 紳士が鋭い眼をリナに向けたその時、背中に声がかけられた。
「待てよ」
 紳士はその声の方を振り向いた。
「リナは渡さない」
 勝負を遠目に眺めていたマッキーが思わず声をかけたのだ。彼女はずかずかと紳士たちのテーブルに歩み寄ってきた。
 紳士は負けじと言い返した。
「なんだね……このお嬢さんは勝手に仕掛けてきて勝手に負けたんだよ。せめてこのお嬢さんの代金だけでも勝ってもらわんとね。それが賭けのルールというものだよ」
 しばし紳士と睨み合うマッキーだがゆっくりと口を開いた。
「わかった……あたしがリナの代わりに勝負を受けよう……」
 それを聞いた紳士は口元に一瞬笑みを浮かべたかに見えた。
 指を鳴らすと近くのテーブルについていた黒服の男二人が立ち上がって素早く紳士の傍らにやってきた。
 一人は長身、もう一人は背は低いが太った男だ。
 男たちは椅子に座ったまま気絶しているリナを素早く縛り付け、さるぐつわを噛ませた。
「!」
 その手際の良さにマッキーは戦慄した。
「とりあえずこのお嬢さんは人質だ……もう勝負する金はないようだな……私が貸そう……彼女を返してほしかったら勝負に勝つことだ……」
 紳士は男たちを睨んでいるマッキーの眼の前にカードを差し出した。
「君が親の番だ」

 カードを受け取り紳士の向かい側に座ったマッキーはカードをカットし始めた。
 ……がうまくいかず表を向けたままテーブルの上にぶちまけてしまった。
 慌てて広げてしまったカードをまとめようとするが不器用な手つきでモタモタとするばかりだ。
 思わず手下の男たちが悪態をついた。
「おいおい……ヘタクソが」
「こいつまともにカットもできないのかよ」
 紳士も呆れながら言った。
「やれやれ……しかたない仕切り直しだ……私が親になろう」

 ゲームは再開された。
 しかしツーペアを出せばスリーカードで返され、フォアカードを出せばフルハウスで返される……
 そんなペースでマッキーはあっという間に負け続けた。
 貸してもらった金貨はあれよあれよと減っていき、掛けることができる金もあとわずかだ。

 そんな時拘束されているリナの瞳が開きはじめた。気がついたのだ。
 最初自分の置かれた状況が理解できなかった。なぜ縛られている……? 口もきけなくされてる……?
 そして今まで自分がポーカーをしていた席に相棒のマッキーが座っている……
(マッキー!なんであんたが……!?)
 そして自分と同じく相棒の旗色が悪いことに気がつく。
(ま……負けてんの!?)

「……ところで君、私がここで何と呼ばれているか知ってるかね」
 勝ち続けている紳士の声色に余裕が出てきたのがわかる。
 マッキーは答えなかった。
「蟻地獄(アントライオン)さ……」
 紳士はニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながらカードを捨て、山札から三枚ドローする。
 思わず緊張した表情を浮かべるマッキー。
「私は君たちみたいなカモが近づいてくるのを辛抱強く待っているんだよ……私の事を舐めてかかってくる連中を。そして私に関わった時からそいつらにとっての地獄が始まる……」
 お互いの手札をオープンする。
 マッキーは6のスリーカード……紳士はAが二枚と10が三枚のフルハウス。
「さて、もう掛けるものはないようだし……君たちの完全な負けだな」
 勝った紳士は今まで見せなかった得意満面の笑顔を浮かべた。
 負けてしまったマッキーはがっくりと頭を下げている。

「負債は私のところで働いてきっちりと返してもらおうかな」
 紳士はニヤニヤと笑いを浮かべながら言った
「……おじさん……まだ掛けるものがあるよ……」
「……?」
 相手の思わぬ一言に紳士はいぶかしげな表情を浮かべた。
「あんたとわたしのさ……お互いの命だよ!」
 顔を上げたマッキーの瞳には強い意志が込められていた。
 その瞳を見た紳士は一瞬動揺した。
 紳士の部下たちも思わず言い返した。
「てめえ 何言ってやがる!?」
「負け続けで頭にきたのかよ!?」
 マッキーは席から立ち上がり、紳士に向かってよく通る声で言った。
「なんならそこにいるリナの命も掛けたってかまわないんだけどね。ろくでなし二人とあんた一人の命だ……フェアな話だろ?」
「てめぇ……!」
 紳士はマッキーに飛びかかりそうになった長身の部下を制した。
「……受けよう……」
 真剣な表情で紳士は答えた。
「私の娼館で稼げる間はこき使おうかと思ってたが……君たちはちょっと変わった趣味のお得意さんに売っぱらうことにするよ……まぁそうなったら長生きはできんがね」

 マッキーはテーブルの上のカードの山を手に取った。
「親はあたしの番だよ」
 言うが早いか目にも止まらないスピードでカードをシャッフルし始めた。
 オーバーハンドシャッフルに続き、手の中でのリフルシャッフル……カードの扱いは手慣れていた。
「!?」
 紳士と部下たちは眼の前で何が起こっているかをすぐには理解することができなかった。
 そんな連中の見ている目の前でカードを指ではじくようにして互いに5枚ずつ配った。
 カードが配られてから紳士は彼女をぎろりと睨んだ。
「……貴様……」
(マッキー!?あんた……)
 リナも驚異の目で相棒を見つめた。
(やられた……とんだ相棒だわ……)
 マッキーはにやりと笑って自分に配られたカードを拾い上げた。
「あたしはドローは結構」
 そしてそのまま手札をオープンしたのだ。
「ストレート・フラッシュ」
 まさかと紳士はカードを見やった。
 ハートの7,8,9、10,J……間違いはない……
「あんたの手札はどうだい?」
 紳士は恐る恐る自分の手札を見返した。
 スペードとクラブの2、ダイヤとクラブの6……ツーペアだ。
「なんなら一回だけドローしてもいいんだよ?」
 紳士の瞳の色が変わったように見えた。
 手が細かく震えているようだ……
 なんとかそれを抑えようと必死になっているのが傍目にもわかる。

(や……やった!?)
 リナは眼の前で起こった事が奇跡としか思えず実感ができなかった。
 が、しかし相棒の勝ったことだけは確信できた。

(……こいつに勝てる手札があるはず……椅子の下か……ポケットか……いやいや、テーブルだ……)
 紳士は額に脂汗を浮かべて、テーブルの下にあるであろうカードのセットを右手で探した。
 イカサマ用のカードのセット……それはテーブルの下にいくつかテープで止められていた。
 そしてさまよう手がお目当てのカードを探し当てた。
(舐めやがって……このアバズレが……これで一気に逆転……)
 そのカードに手を伸ばす……

 その時、けたたましい銃声が酒場に響き渡った。
 マッキーの愛銃、MAC11が火を吹いたのだ。
 フルオートで吠えたMAC11から放たれた銃弾はテーブル滅多撃ちにし、一瞬で蜂の巣にした。
 突然の銃声に酒場に緊張が走った。だが周囲の客はやっかい事に関わり合いになるのを避けるためか、いつものように無視をした。
 マッキーは椅子に乗り上げテーブルに片足をかけ、紳士に銃口を向けながらきびしい口調で言った。
「イカサマはいけないな……イカサマは……」
 いきなりの銃撃に思わず紳士は左手で右手を抑えた。弾は右手をかすっただけで直撃してはない。
 手を避けて脅しで撃ったのだろう。
 しかし後から後から冷や汗が流れてくる。膝がガクガクと震えだした。
 だが彼は気丈に振る舞った。
「……貴様だって……イカサマを……」
「あたしはあんたの目の前でカードを切って配っただけだよ。それのどこがイカサマなんだ?」
 打ち尽くしたマガジンを抜き取り、ボルトハンドルを引きながらマッキーは答えた。
 素早く予備マガジンにチェンジして銃口を紳士に向けた。そして彼女は悪魔のような笑みを浮かべた。
「さてと……それじゃあんたの命をいただくとするかな……」
 部下たちは思わず紳士の前に立ちはだかろうとした。
 が、彼はあえて手で制した。彼なりにプライドというものがあるのだろう。
 紳士は彼女を恨みがましく睨みつけた。

 銃声が一発、酒場に響きわたった。
 弾は紳士の右手のひらに一発当たって貫通していた。
「ぐっ!!」
 紳士は思わず撃たれた手を抑え、痛みに顔を歪めた。
「これでしばらくはイカサマはできないだろ。元はと言えばうちのリナがやらかした事だし、これで勘弁してやるよ。」
 彼は恐ろしい形相でマッキーを睨み返したが、プライドを傷つけられ、力のない声で部下たちに命令した。
「……その女を離してやれ……」
 部下たちはとまどいながらも、リナの拘束を解きはじめた。
「マッキー!」
 拘束の解けたリナは思わず涙目で相棒に抱きついた。
 取り返した相棒を片手で抱きかかえ、紳士に向かって言った。
「悪かったな。あ……そうだ、ついでにうちらの飯代も払っといてよ!リナの命の代金でさ!」
 抱きついていたリナは思わず悪態をついた。
「私の命は飯代程度!?」
「悪いかい?元はと言えばあんたが悪いんだよ?イカサマで背中から撃たれても文句は言えないんだよ?」
 と相棒に向けて睨みをきかせた。
 そう言われてリナはぐうの音も出なかった。

 二人共、銃を持ったまま酒場を後にしようと背を向けた時、その背中に紳士の声がかけられた。
「今度……今度会った時は……容赦せん……!」
 振り返って見た紳士の灰色の瞳には、静かな怒りの色が現れていた。
 マッキーは苦笑いを浮かべた。
「この世界で……またどっかで出会える保証なんてないよ……」
 二人は酒場を後にした。
 そして酒場はいつもどおり酔っぱらいが騒ぎ、殺人や強盗の数を自慢するような連中の自慢げな大声で溢れた。
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