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悪意への反撃2
僕が予想していた通り、オーバン様はパーティーで神官長達に絡まれて一悶着あったらしい。「パーティーに参加しないなんて神子失格だ」とか、「オーバン様一人だけ参加させるなんて非常識だ」とか。更には聖女様も便乗してきて本当に疲れたとオーバン様は愚痴をこぼす。
「クウを連れて行かなくて正解でした。口を開けばクウの悪口ばかり。聞いていて本当に腹が立ちました」
「大人の事情とか、どうしても僕を悪者にしなければならない理由があったのかもしれませんね」
正直、王宮での生活はとても窮屈で居心地が悪かった。フェリシアン様のお情けで選ばれた僕を、王宮の人達は受け入れなかった。みんな嫌そうな顔をしていたし、僕に聞こえるように悪意のある言葉をぶつけてきた。食事だって適当で雑だったし、酷い時には水やスープを頭からかけられたこともある。フェリシアン様に相談しようと思っても、彼らは口を揃えて「神子様が足を引っ掛けて転んだんです」とか「神子様の自作自演です」とか言って、全部僕のせいにしていた。フェリシアン様は、彼らの言葉を信じて、僕から距離を取るようになった。これも神官長達の策略だったと気付いたのは、フェリシアン様が聖女様を僕に紹介した時。
「クウ。貴方は、知っていたんですか? 奴らの思惑も、悪意も、醜い感情も……」
「あの人達の悪意に気付けないほど、僕は子どもじゃないし、鈍感でもありません。聖女様を紹介された時も『あぁ、僕は嵌められたんだ』と思いました。反論するだけ無駄だから、何も言わなかったけど」
フェリシアン様が僕を捨てて新しい聖女様を選んだと言えば、彼の評価が下がってしまう。だから、僕を悪者に仕立て上げる必要があった。僕がフェリシアン様の気を引きたくて暴れたとか、フェリシアン様に捨てられるのが嫌で聖女様に意地悪をしたとか。僕が悪者になればフェリシアン様の評価は下がらないし、聖女様の株上げにもなる。邪魔な僕を排除できて、困難を乗り越えて二人は結ばれたという演出も可能になる。
「殿下は、愚かですね。こんなにも優しくて聡明なクウを捨てて、真実も見抜けないバカ女を伴侶に選んだのですから」
「でも、そのお陰で僕はオーバン様の手を取ることができました。その点に関してだけは、フェリシアン様と聖女様に感謝しています」
最初は、フェリシアン様のことが好きだったかもしれない。けれど、彼と過ごせば過ごすほど、お互いに心は離れて行った。冷たい使用人達に、些細なミスでも怒鳴り散らす家庭教師、僕を見て嘲笑う貴族達。それでも、僕の居場所は此処しかないからと必死に耐えていた。耐えて、耐えて、耐え続けて、その結果がフェリシアン様に捨てられるという最悪の結末。フェリシアン様が優しかったのは最初だけ。何時からか僕は放置され、どんどん王宮の人達も僕から離れていった。
「クウは優しすぎます。殿下と聖女様のことが憎くはないのですか?」
「どうでもいいです。フェリシアン様とは、最初から赤の他人だった。あの人達がどうなろうと、興味ありません。だから、憎んではいません。でも、もう二度と、あの二人には関わりたくない」
お互いに愛はなかった。それでも、フェリシアン様に捨てられた時のことを思い出すと、今でも怖くて震えが止まらない。彼に捨てられたことが原因で、何度転生しても誰にも選ばれないなんて思わなかったんだ。悪い噂はどんどん酷くなって、僕の心は転生する度に疲弊していった。辛かった、寂しかった、悲しかった、怖かった。オーバン様に選ばれなければ、僕は魂ごと消えていたと思う。それすらも神官長達の思惑だったのかもしれない。
「当然です。クウには絶対に会わせません。王族だろうが、命令だろうが、クウが嫌と言うなら私が全て阻止します」
「ん」
オーバン様の優しい口付けを、僕は大人しく受け入れる。意気地なしでもいい。弱虫でもいい。情けなくてもいい。僕は、フェリシアン様達と関わりたくない。顔も見たくないし、声も聞きたくない。聖女様と結ばれたのなら、僕のことなんて気にせず愛を確かめ合えばいいのに。どうして今更、僕に関わろうとするのか、僕には理解できなかった。
「クウを連れて行かなくて正解でした。口を開けばクウの悪口ばかり。聞いていて本当に腹が立ちました」
「大人の事情とか、どうしても僕を悪者にしなければならない理由があったのかもしれませんね」
正直、王宮での生活はとても窮屈で居心地が悪かった。フェリシアン様のお情けで選ばれた僕を、王宮の人達は受け入れなかった。みんな嫌そうな顔をしていたし、僕に聞こえるように悪意のある言葉をぶつけてきた。食事だって適当で雑だったし、酷い時には水やスープを頭からかけられたこともある。フェリシアン様に相談しようと思っても、彼らは口を揃えて「神子様が足を引っ掛けて転んだんです」とか「神子様の自作自演です」とか言って、全部僕のせいにしていた。フェリシアン様は、彼らの言葉を信じて、僕から距離を取るようになった。これも神官長達の策略だったと気付いたのは、フェリシアン様が聖女様を僕に紹介した時。
「クウ。貴方は、知っていたんですか? 奴らの思惑も、悪意も、醜い感情も……」
「あの人達の悪意に気付けないほど、僕は子どもじゃないし、鈍感でもありません。聖女様を紹介された時も『あぁ、僕は嵌められたんだ』と思いました。反論するだけ無駄だから、何も言わなかったけど」
フェリシアン様が僕を捨てて新しい聖女様を選んだと言えば、彼の評価が下がってしまう。だから、僕を悪者に仕立て上げる必要があった。僕がフェリシアン様の気を引きたくて暴れたとか、フェリシアン様に捨てられるのが嫌で聖女様に意地悪をしたとか。僕が悪者になればフェリシアン様の評価は下がらないし、聖女様の株上げにもなる。邪魔な僕を排除できて、困難を乗り越えて二人は結ばれたという演出も可能になる。
「殿下は、愚かですね。こんなにも優しくて聡明なクウを捨てて、真実も見抜けないバカ女を伴侶に選んだのですから」
「でも、そのお陰で僕はオーバン様の手を取ることができました。その点に関してだけは、フェリシアン様と聖女様に感謝しています」
最初は、フェリシアン様のことが好きだったかもしれない。けれど、彼と過ごせば過ごすほど、お互いに心は離れて行った。冷たい使用人達に、些細なミスでも怒鳴り散らす家庭教師、僕を見て嘲笑う貴族達。それでも、僕の居場所は此処しかないからと必死に耐えていた。耐えて、耐えて、耐え続けて、その結果がフェリシアン様に捨てられるという最悪の結末。フェリシアン様が優しかったのは最初だけ。何時からか僕は放置され、どんどん王宮の人達も僕から離れていった。
「クウは優しすぎます。殿下と聖女様のことが憎くはないのですか?」
「どうでもいいです。フェリシアン様とは、最初から赤の他人だった。あの人達がどうなろうと、興味ありません。だから、憎んではいません。でも、もう二度と、あの二人には関わりたくない」
お互いに愛はなかった。それでも、フェリシアン様に捨てられた時のことを思い出すと、今でも怖くて震えが止まらない。彼に捨てられたことが原因で、何度転生しても誰にも選ばれないなんて思わなかったんだ。悪い噂はどんどん酷くなって、僕の心は転生する度に疲弊していった。辛かった、寂しかった、悲しかった、怖かった。オーバン様に選ばれなければ、僕は魂ごと消えていたと思う。それすらも神官長達の思惑だったのかもしれない。
「当然です。クウには絶対に会わせません。王族だろうが、命令だろうが、クウが嫌と言うなら私が全て阻止します」
「ん」
オーバン様の優しい口付けを、僕は大人しく受け入れる。意気地なしでもいい。弱虫でもいい。情けなくてもいい。僕は、フェリシアン様達と関わりたくない。顔も見たくないし、声も聞きたくない。聖女様と結ばれたのなら、僕のことなんて気にせず愛を確かめ合えばいいのに。どうして今更、僕に関わろうとするのか、僕には理解できなかった。
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