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番外編「お弁当」3
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急いでオーバン様の部屋に戻ると、オーバン様が泣きながら駆け寄ってきて僕を抱きしめた。寝巻きがはだけて、髪も乱れて、ベッドはぐちゃぐちゃ。
「クウ! クウ! 何処に行っていたんですか!? 私に何も言わず突然いなくなって」
「ご、ごめんなさい。オーバン様。僕……」
「消えたかと思いました。また、私の前から消えてしまったと」
「不安にさせてごめんなさい。どうしてもやりたいことがあって」
「やりたいこと?」
「はい。お仕事へ行く直前に教えます」
「今ではダメなんですか?」
「ダメです」
だって、今教えてしまったらサプライズの意味がない。お仕事に行く直前に渡した方がきっと喜んでくれる。ちゃんと美味しく作れたんだ。
「クウがそう言うなら、待ちましょう」
「はい」
顔を洗って、歯を磨いて、服も着替えて、髪を整える。着替えが終わるとボーモンさんが朝食を用意してくれて二人で食べた。やっぱり料理長さん達が作る料理の方が美味しいなあ。当たり前だけど。
「クウ。もうお仕事に行く時間です。そろそろ教えてくれませんか? クウが、朝早くに何をしていたのか」
オーバン様は少しせっかちだ。早く教えてと全身で訴えてくる。そんなオーバン様も可愛い。仕事に出掛ける準備をしている間にお弁当を取りに行こうと思っていたのに。
「クウ様。どうぞ」
「え? どうして、ボーモンさんが?」
ボーモンさんから渡されたのは、オーバン様の為に作ったお弁当だ。ボーモンさんは嬉しそうに笑って「料理長に頼まれまして」と教えてくれた。僕が調理場まで行くのは大変だろうから、ボーモンさんから渡すように依頼してくれたんだ。りょ、料理長さん、本当にいい人。
「クウ?」
「オーバン様。サンドイッチを作ったので、お昼、食べてください!」
バッと、サンドイッチの入ったバスケットをオーバン様に差し出す。や、やっぱりドキドキする。僕は素人同然で、オーバン様の口には合わないかもしれない。余計なお世話だった、かな? オーバン様、何も言ってくれない。
「…………」
「あの、オーバン、さま?」
「クウが、作ったんですか?」
「はい」
「私の、ために?」
「はい。えっと、迷惑、でしたか?」
「クウ! 貴方って人は!」
「うぐ!」
また、ぎゅうぎゅうと抱きしめられた。バスケットはボーモンさんが預かっている。い、何時の間に……
「ありがとうございます! クウ! 私の為にサンドイッチを作ってくれるなんて! あぁ、もう! クウが愛しすぎて仕事に行きたくない!」
「ぇえ!?」
お仕事は行かなきゃダメですよ! オーバン様!
「オーバン様。そろそろ出発しないとお仕事に遅れてしまいますよ?」
「く! 分かっている。分かっているが、クウと離れたくない」
「オーバン様」
「……分かりました。いってきます。クウ」
「はい。いってらっしゃい。オーバン様。お昼、ちゃんと食べてくださいね」
「勿論、ちゃんと食べますよ。クウ」
僕のおでこにちゅ、と口付けてからオーバン様は馬車に乗った。バスケットを大切に抱えて。よかった。喜んでくれた。美味しいって言ってくれたら、また作りたいな。
「クウ! クウ! 何処に行っていたんですか!? 私に何も言わず突然いなくなって」
「ご、ごめんなさい。オーバン様。僕……」
「消えたかと思いました。また、私の前から消えてしまったと」
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「やりたいこと?」
「はい。お仕事へ行く直前に教えます」
「今ではダメなんですか?」
「ダメです」
だって、今教えてしまったらサプライズの意味がない。お仕事に行く直前に渡した方がきっと喜んでくれる。ちゃんと美味しく作れたんだ。
「クウがそう言うなら、待ちましょう」
「はい」
顔を洗って、歯を磨いて、服も着替えて、髪を整える。着替えが終わるとボーモンさんが朝食を用意してくれて二人で食べた。やっぱり料理長さん達が作る料理の方が美味しいなあ。当たり前だけど。
「クウ。もうお仕事に行く時間です。そろそろ教えてくれませんか? クウが、朝早くに何をしていたのか」
オーバン様は少しせっかちだ。早く教えてと全身で訴えてくる。そんなオーバン様も可愛い。仕事に出掛ける準備をしている間にお弁当を取りに行こうと思っていたのに。
「クウ様。どうぞ」
「え? どうして、ボーモンさんが?」
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「クウ?」
「オーバン様。サンドイッチを作ったので、お昼、食べてください!」
バッと、サンドイッチの入ったバスケットをオーバン様に差し出す。や、やっぱりドキドキする。僕は素人同然で、オーバン様の口には合わないかもしれない。余計なお世話だった、かな? オーバン様、何も言ってくれない。
「…………」
「あの、オーバン、さま?」
「クウが、作ったんですか?」
「はい」
「私の、ために?」
「はい。えっと、迷惑、でしたか?」
「クウ! 貴方って人は!」
「うぐ!」
また、ぎゅうぎゅうと抱きしめられた。バスケットはボーモンさんが預かっている。い、何時の間に……
「ありがとうございます! クウ! 私の為にサンドイッチを作ってくれるなんて! あぁ、もう! クウが愛しすぎて仕事に行きたくない!」
「ぇえ!?」
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「オーバン様。そろそろ出発しないとお仕事に遅れてしまいますよ?」
「く! 分かっている。分かっているが、クウと離れたくない」
「オーバン様」
「……分かりました。いってきます。クウ」
「はい。いってらっしゃい。オーバン様。お昼、ちゃんと食べてくださいね」
「勿論、ちゃんと食べますよ。クウ」
僕のおでこにちゅ、と口付けてからオーバン様は馬車に乗った。バスケットを大切に抱えて。よかった。喜んでくれた。美味しいって言ってくれたら、また作りたいな。
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