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異世界召喚1
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会社帰りで疲れ果てている時に突然足元が光って気付いたら、見知らぬ世界に立っていた。見渡すと周囲には多くの学生らしき人達が俺を凝視している。白、赤、青、黄、黒とそれぞれ色が違うローブを纏っているのは恐らく高校生くらいの若者達。
「カオル?」
「…………」
「なんで、お前が来るんだよ!? どうやって来たんだ!」
いや、急に胸ぐら掴まないでくれないか? 華奢で可愛らしい顔立ちをしているのに力は結構強いよな、お前。どうやって来たんだ? と聞かれても召喚されましたとしか答えられない。多分。物語ではよくある話で、突然異世界に召喚されましたってなったら普通は戸惑う。しかし、俺の場合は顔見知りが目の前に居るので心は落ち着いていて不安に思うこともない。
「黙ってないで答えろ!」
「…………」
「まさか、僕の言葉が分からないのか? なんで、話さないんだよ……」
いや、ごめん。ちゃんと聞こえてるよ? 聞こえてるんだけど、今は話したくないんだわ。周囲を見ると、嘲笑する者や、大声を出して笑っている者、目の前の美少年に暴言を吐く者など、状況はあまりよろしくない。異世界人だとバレたらどうなるんだろうな? それが怖くて敢えて分からないフリをしているのだが。
「終わったならさっさと戻れ。アルフィー」
「ですが! 彼は……」
異世界人ですと言おうとした美少年の肩をツンツンしてこれ以上言うなとジェスチャーする。コンビニで買ったばかりのエクレアを袋から取り出して不機嫌そうな彼の口の中に突っ込んで黙らせた。
「んぐ! はひを!」
多分、何をする! と言いたかったんだと思う。彼の文句はエクレアの美味しさに掻き消された。甘いものを食べたそうに見ていたもんな。願いが叶って良かったぜ。あの時、この美少年は幽霊のような状態だったから食べさせたくてもできなかったんだよな。肉体があるって素晴らしい。うんうん。エクレアを栗鼠のように頬張る美少年を微笑ましく眺めながら俺もおにぎりを取り出してもぐもぐと食べた。会社帰りでお腹が空いてたんだよ。空腹には勝てん。
「アルフィー! 何をしている! 授業中にも関わらず盗み食いを……む!」
ぎゃいぎゃい騒ぐ教師らしき人物の口にチョコレートを放り投げた。これで貴様も同罪だ。フフンと不敵な笑みを浮かべると、教師は何も言わなくなった。
「安心しろ。言葉はちゃんと分かるから」
美少年にしか分からない小さな声で俺が呟くと、彼はサッと俺を見上げた。大きく見開かれた瞳から涙が溢れそうになっていて、俺は彼の頭を撫でて微笑んだ。これでも年上なんでね。お兄ちゃんって呼んでも良いんだよ?
「……説明は、ちゃんとするから」
「頼む」
と言っても、この世界についてざっくり話は聞いてるんだけどな。周囲は相変わらず嫌味を言ってるけど、彼らが召喚したであろう獣? 精霊? 達は俺を見て何故か硬直してるんだよなあ。え? 俺にも特殊能力があるの? いや、ある訳ねえか。容姿も平凡だし、普通の会社員だし。あ、会社大丈夫かな? 連絡を入れてないから明日から無断欠勤扱いになるんだけど……
「カオル?」
「…………」
「なんで、お前が来るんだよ!? どうやって来たんだ!」
いや、急に胸ぐら掴まないでくれないか? 華奢で可愛らしい顔立ちをしているのに力は結構強いよな、お前。どうやって来たんだ? と聞かれても召喚されましたとしか答えられない。多分。物語ではよくある話で、突然異世界に召喚されましたってなったら普通は戸惑う。しかし、俺の場合は顔見知りが目の前に居るので心は落ち着いていて不安に思うこともない。
「黙ってないで答えろ!」
「…………」
「まさか、僕の言葉が分からないのか? なんで、話さないんだよ……」
いや、ごめん。ちゃんと聞こえてるよ? 聞こえてるんだけど、今は話したくないんだわ。周囲を見ると、嘲笑する者や、大声を出して笑っている者、目の前の美少年に暴言を吐く者など、状況はあまりよろしくない。異世界人だとバレたらどうなるんだろうな? それが怖くて敢えて分からないフリをしているのだが。
「終わったならさっさと戻れ。アルフィー」
「ですが! 彼は……」
異世界人ですと言おうとした美少年の肩をツンツンしてこれ以上言うなとジェスチャーする。コンビニで買ったばかりのエクレアを袋から取り出して不機嫌そうな彼の口の中に突っ込んで黙らせた。
「んぐ! はひを!」
多分、何をする! と言いたかったんだと思う。彼の文句はエクレアの美味しさに掻き消された。甘いものを食べたそうに見ていたもんな。願いが叶って良かったぜ。あの時、この美少年は幽霊のような状態だったから食べさせたくてもできなかったんだよな。肉体があるって素晴らしい。うんうん。エクレアを栗鼠のように頬張る美少年を微笑ましく眺めながら俺もおにぎりを取り出してもぐもぐと食べた。会社帰りでお腹が空いてたんだよ。空腹には勝てん。
「アルフィー! 何をしている! 授業中にも関わらず盗み食いを……む!」
ぎゃいぎゃい騒ぐ教師らしき人物の口にチョコレートを放り投げた。これで貴様も同罪だ。フフンと不敵な笑みを浮かべると、教師は何も言わなくなった。
「安心しろ。言葉はちゃんと分かるから」
美少年にしか分からない小さな声で俺が呟くと、彼はサッと俺を見上げた。大きく見開かれた瞳から涙が溢れそうになっていて、俺は彼の頭を撫でて微笑んだ。これでも年上なんでね。お兄ちゃんって呼んでも良いんだよ?
「……説明は、ちゃんとするから」
「頼む」
と言っても、この世界についてざっくり話は聞いてるんだけどな。周囲は相変わらず嫌味を言ってるけど、彼らが召喚したであろう獣? 精霊? 達は俺を見て何故か硬直してるんだよなあ。え? 俺にも特殊能力があるの? いや、ある訳ねえか。容姿も平凡だし、普通の会社員だし。あ、会社大丈夫かな? 連絡を入れてないから明日から無断欠勤扱いになるんだけど……
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