異世界召喚されたら悪役令息に溺愛されました

トキ

文字の大きさ
1 / 9

異世界召喚1

しおりを挟む
 会社帰りで疲れ果てている時に突然足元が光って気付いたら、見知らぬ世界に立っていた。見渡すと周囲には多くの学生らしき人達が俺を凝視している。白、赤、青、黄、黒とそれぞれ色が違うローブを纏っているのは恐らく高校生くらいの若者達。

「カオル?」
「…………」
「なんで、お前が来るんだよ!? どうやって来たんだ!」

 いや、急に胸ぐら掴まないでくれないか? 華奢で可愛らしい顔立ちをしているのに力は結構強いよな、お前。どうやって来たんだ? と聞かれても召喚されましたとしか答えられない。多分。物語ではよくある話で、突然異世界に召喚されましたってなったら普通は戸惑う。しかし、俺の場合は顔見知りが目の前に居るので心は落ち着いていて不安に思うこともない。

「黙ってないで答えろ!」
「…………」
「まさか、僕の言葉が分からないのか? なんで、話さないんだよ……」

 いや、ごめん。ちゃんと聞こえてるよ? 聞こえてるんだけど、今は話したくないんだわ。周囲を見ると、嘲笑する者や、大声を出して笑っている者、目の前の美少年に暴言を吐く者など、状況はあまりよろしくない。異世界人だとバレたらどうなるんだろうな? それが怖くて敢えて分からないフリをしているのだが。

「終わったならさっさと戻れ。アルフィー」
「ですが! 彼は……」

 異世界人ですと言おうとした美少年の肩をツンツンしてこれ以上言うなとジェスチャーする。コンビニで買ったばかりのエクレアを袋から取り出して不機嫌そうな彼の口の中に突っ込んで黙らせた。

「んぐ! はひを!」

 多分、何をする! と言いたかったんだと思う。彼の文句はエクレアの美味しさに掻き消された。甘いものを食べたそうに見ていたもんな。願いが叶って良かったぜ。あの時、この美少年は幽霊のような状態だったから食べさせたくてもできなかったんだよな。肉体があるって素晴らしい。うんうん。エクレアを栗鼠のように頬張る美少年を微笑ましく眺めながら俺もおにぎりを取り出してもぐもぐと食べた。会社帰りでお腹が空いてたんだよ。空腹には勝てん。

「アルフィー! 何をしている! 授業中にも関わらず盗み食いを……む!」

 ぎゃいぎゃい騒ぐ教師らしき人物の口にチョコレートを放り投げた。これで貴様も同罪だ。フフンと不敵な笑みを浮かべると、教師は何も言わなくなった。

「安心しろ。言葉はちゃんと分かるから」

 美少年にしか分からない小さな声で俺が呟くと、彼はサッと俺を見上げた。大きく見開かれた瞳から涙が溢れそうになっていて、俺は彼の頭を撫でて微笑んだ。これでも年上なんでね。お兄ちゃんって呼んでも良いんだよ?

「……説明は、ちゃんとするから」
「頼む」

 と言っても、この世界についてざっくり話は聞いてるんだけどな。周囲は相変わらず嫌味を言ってるけど、彼らが召喚したであろう獣? 精霊? 達は俺を見て何故か硬直してるんだよなあ。え? 俺にも特殊能力があるの? いや、ある訳ねえか。容姿も平凡だし、普通の会社員だし。あ、会社大丈夫かな? 連絡を入れてないから明日から無断欠勤扱いになるんだけど……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。

時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!? ※表紙のイラストはたかだ。様 ※エブリスタ、pixivにも掲載してます ◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。 ◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います

【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました

ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。 タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

【本編完結】最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!

天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。 なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____ 過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定 要所要所シリアスが入ります。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

弟勇者と保護した魔王に狙われているので家出します。

あじ/Jio
BL
父親に殴られた時、俺は前世を思い出した。 だが、前世を思い出したところで、俺が腹違いの弟を嫌うことに変わりはない。 よくある漫画や小説のように、断罪されるのを回避するために、弟と仲良くする気は毛頭なかった。 弟は600年の眠りから醒めた魔王を退治する英雄だ。 そして俺は、そんな弟に嫉妬して何かと邪魔をしようとするモブ悪役。 どうせ互いに相容れない存在だと、大嫌いな弟から離れて辺境の地で過ごしていた幼少期。 俺は眠りから醒めたばかりの魔王を見つけた。 そして時が過ぎた今、なぜか弟と魔王に執着されてケツ穴を狙われている。 ◎1話完結型になります

異世界オークションで売られた俺、落札したのは昔助けた狼でした

うんとこどっこいしょ
BL
異世界の闇オークションで商品として目覚めた青年・アキラ。 獣人族たちに値踏みされ、競りにかけられる恐怖の中、彼を千枚の金貨で落札したのは、銀灰色の髪を持つ狼の獣人・ロウだった。 怯えるアキラに、ロウは思いがけない言葉を告げる。 「やっと会えた。お前は俺の命の恩人だ」 戸惑うアキラの脳裏に蘇るのは、かつて雨の日に助けた一匹の子狼との記憶。 獣人世界を舞台に、命の恩人であるアキラと、一途に想い続けた狼獣人が紡ぐ、執着と溺愛の異世界BLロマンス。 第一章 完結 第二章 完結 第三章 完結

悪役のはずだった二人の十年間

海野璃音
BL
 第三王子の誕生会に呼ばれた主人公。そこで自分が悪役モブであることに気づく。そして、目の前に居る第三王子がラスボス系な悪役である事も。  破滅はいやだと謙虚に生きる主人公とそんな主人公に執着する第三王子の十年間。  ※ムーンライトノベルズにも投稿しています。

処理中です...