18 / 49
18、雑談会議
しおりを挟む「まぁ……!そんなことがあったんですのね??」
そう驚いた声を上げたのはカルミアだった。寮の部屋でくつろぐカルミアとロベリアはブルーベルが煎れてくれたお茶を飲んでいる。
「学院ではそこまで目立ちませんでしたし……盲点でしたわ。……わたくしが言い出したばかりに……ごめんなさい」
カルミアは申し訳なさそうに謝罪する。ロベリアは慌ててフォローを入れた。
「私は大丈夫ですから気にしないでください、カルミア。貴女のせいではありません。それに、ゼフィランサス様もブルーベルもいてくれたので一人ではありませんでしたし」
ロベリアは先日の町で買ったプレゼントをカルミアに渡したのだ。そのついでに町であったことを説明していた。
「それはそうかもしれませんが……」
「それに、おかげでというか……ゼフィランサス様に贈り物をいただけましたし」
「ああ、それはもしやその耳につけている耳飾りの事ね?」
カルミアが声を弾ませてそう言うとロベリアも少し嬉しそうに耳飾りに手を添えた。
「ええ、なんでも森の精霊の加護が施されているそうです。私の癒しになればとくれました」
「なるほどなるほど。で、一体どこまでいったんですの?」
「え?町の中央くらいまでは……」
ニヤニヤしながらカルミアは質問したのだが、ロベリアは天然な返しをし、カルミアは思わず「ちっがーう!!」と叫んでしまった。叫ばれたロベリアは目を丸くした。
「違いますわよ!そういうことではなく、ゼフィランサスとの仲はどれくらい進展したのかを聞いてるんですのよ!」
むくれて怒るカルミアの発言に、ロベリアも意味を察して顔が赤くなった。
「な、何も無いですよ!?第一、私とゼフィランサス様は契約婚約を結んだ同士。何も起こるはずないじゃない」
務めて冷静な声でそう言い返したが顔がまだ赤かった。
「確かに契約婚約ですが、ならその贈り物はなんなんです?しかも彼の瞳の色と同じ翡翠石まで使われてますわ。貴女だって知っているでしょう?自分の髪や瞳の色と同じ物を贈るのは、好意の表れだってこと。特に貴族の間では流行りの方法ですわ」
「で、でも、ゼフィランサス様はそういうことに重きを置かれてないというか、流行りとか興味無さそうですし……」
「確かに……彼は流行りなどには興味無さそうですわね。けれど、普通、好意を寄せない相手に自分と同じ色の入った贈り物なんてしませんわよ」
「そ、それはそうでしょうけど……。でも、私は死神伯爵の娘ですよ?そんな私に好意なんて……」
自分に自信がなくて自身を卑下するようなことを言ってしまう。小さい頃から良く思われない一族の一員としてその空気に晒されてきたのだから仕方ないのかもしれない。けれど、カルミアはそんなロベリアのイジイジした部分を嫌っていた。
カーディナリス家は呪われてなんかないし死を呼ぶ訳じゃない。亡者と精霊が見えるだけで彼ら自身に誰かを意図して呪って殺したりする力がある訳じゃない。その上、その見る力は国のために、国王からも支持されている。恥ずかしいことなんてない。卑屈に思うことはない。悪いことなんてしていないのだから、堂々としていればいい。
「ロベリア」
カルミアに名を呼ばれてロベリアは言葉を止める。まっすぐに見据えてくるカルミアの視線とロベリアの視線がぶつかった。
「わたくしは貴女に幸せになって欲しいと思っていますわ。破滅を回避することはわたくし達の共通の目的ですけれど、その上でロベリアには幸せになって欲しいのです。小説の死神令嬢のような目にあって欲しくないですわ。だから、貴女にゼフィランサスを紹介したのです。可能なら、貴女方ふたりが本当の夫婦になれればと思っていますわ」
「カルミア……」
カルミアの言葉に胸が熱くなって涙腺が緩みそうになる。
ロベリアにとってカルミアはずっと味方でいてくれる大切な親友。小さい頃からずっと一緒の幼なじみ。いつだって手を差し出してくれる大事な人。
(それは私も同じよ、カルミア)
彼女には幸せになって欲しい。ふたりが願う共通の想い。
「……カルミアはいつも私の幸せを願ってくれますね。他の同じ六家の幼なじみでさえそんなことは言ってくれないのに」
「あら、一番の親友が親友の幸せを願うなんて当たり前のことですわ!わたくし貴女の花嫁姿を見たいんですのよ。きっと綺麗ですわ!!銀色に輝く髪と左右色の違う瞳。真っ白なドレスを彩ってくれますのよ!」
半ば夢現になりながらカルミアが熱弁する。そして、カルミアの脳裏には今よりもっと幼い頃の記憶が横切る。
親からの愛情は嫡男の兄に向かっていて、それが気に食わないと周囲にわがままばかり言っていたほんとに小さな頃だ。定期的に行われていた六家の当主同士の会合に初めてついて出かけて行った日、カルミアは初めて天使に出会った。白いドレスに銀の長い髪。そして左右色の違う大きな瞳。控えめで、親の後ろに隠れてしまうお人形のような可愛らしい同じ年頃の女の子。それは一目惚れのような衝撃だった。心から「こんなに可愛い子が存在するの!?」と思った。
そんな出会った時のことを思い出す。
あの日からカルミアはロベリアの幸せを願っている。もちろんそれだけではないが。だが、だからこそ小説のような展開にさせる訳にはいかない。だから先手を打って婚約まで漕ぎ着けた。後は、ゼフィランサスにロベリアを意識してもらい、本気になってもらうだけだ。
(てっきり、好意を持っていると思ったのに……違うのかしら?)
公爵家嫡男は女嫌いと小説にあったように、該当するだろうゼフィランサスもまた女性に良いイメージは持っていなかったはず。だが、契約とはいえ婚約しており、先日の贈り物を買いに行くというデートもどきやプレゼントを渡すというような好感度に関わることを自身で行なっている。
それに小説には無かった悪役令嬢と死神令嬢を生徒会に勧誘するという主人公もびっくりなことをしている。
(彼の行動って小説に添っているようでどこか違うのよね。はっきり自分の意思で動いてるようだし、それで言うなら随分とロベリアのこと好いてると思うのですけど……)
生徒会室でだってロベリアの腰に手を回して引き寄せていた。あれは牽制じゃないのだろうか?
カルミアがそんなロベリアとゼフィランサスの恋愛模様に思考を巡らせていると、ロベリアが逸れた話を元に戻そうと口を開いた。
「と、とりあえず、私の話は置いておいていいです。それよりも今日の生徒会でのことですよ」
ロベリアは部屋の入口で待機していたブルーベルに近くに来るように指示を出す。呼ばれて隣に来たブルーベルの手を軽く握る。ブルーベルはロベリアに手を握られて少し嬉しそうだ。
「ねぇ、ブルーベル。貴方もあの時一緒にいたし、魔法が発動したのは感じたわよね?」
ロベリアがそう尋ねるとブルーベルはコクリと頷く。その反応にカルミアも「あっ」と声を上げて思い出したように言った。
「あの時、ネリネさんは涙を浮かべていたわね。けど……何も起こらなかった。いえ、正確にはネリネさんの近くにいたふたりは少し様子がおかしくなったような気がしますわ……。それって、ブルーベルには誰に魔法がかかったかとかわかりますの?」
カルミアが尋ねるとブルーベルはコクリと頷くが、それ以上は答えない。カルミアが首を傾げるとブルーベルも真似っこして首を傾げる。そんなふたりのやり取りを見ていたロベリアは思わず笑ってしまった。
「カルミア、その聞き方じゃブルーベルが答えられないわ。ブルーベルには私達くらいしか名前がわからないんですもの」
「ああ、そうですわね。えっと、じゃあなんて聞けばよろしくて?」
「えっとね、ブルーベル。ネリネさんの魔法にかかったと思われるのは何人だった?」
ロベリアがそう聞くとブルーベルは指でチョキの形を作る。
「……ふたり、ってことですわね。という事は、あの時ネリネさんの近くにいたのは……」
カルミアはふたりの姿を思い出し、虚空を残念なものを見る目で見つめ「ああ、あの人達か……」と呟いた。
「あのふたりならどうでも良いですわ」
ため息混じりにカルミアがそう言うとロベリアも遠い目をした。大分、失礼な態度を取りまくっていたのでネリネの信者になろうがどうでも良かった。
「まぁ、あの人達は置いておいて、……という事は、ゼフィランサス様もジニア様も平気だったという事ね?」
「ですわね。ライラックも特に異変はないようでしたし……。でも、渡り廊下の時は……あの時は殿下にもかかっていましたわよね?何故今回は平気だったのかしら?」
「ジニア殿下のすぐ傍にネリネさんもいましたけど平気だったみたいでした……。あの時と何が違うと言えば……」
ふたりが同じ顔して悩ませると同時に同じ顔が頭に浮かんだ。
「……あ!!!」
少し白みがかった金髪と意地悪そうな顔がニヤニヤと笑っていた。
0
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
悪役令嬢だったので、身の振り方を考えたい。
しぎ
恋愛
カーティア・メラーニはある日、自分が悪役令嬢であることに気づいた。
断罪イベントまではあと数ヶ月、ヒロインへのざまぁ返しを計画…せずに、カーティアは大好きな読書を楽しみながら、修道院のパンフレットを取り寄せるのだった。悪役令嬢としての日々をカーティアがのんびり過ごしていると、不仲だったはずの婚約者との距離がだんだんおかしくなってきて…。
【完結】第一王子と侍従令嬢の将来の夢
かずえ
恋愛
第一王子は、常に毒を盛られ、すっかり生きることに疲れていた。子爵令嬢は目が悪く、日常生活にも支障が出るほどであったが、育児放棄され、とにかく日々を送ることに必死だった。
12歳で出会った二人は、大人になることを目標に、協力しあう契約を交わす。
虜囚の王女は言葉が通じぬ元敵国の騎士団長に嫁ぐ
あねもね
恋愛
グランテーレ国の第一王女、クリスタルは公に姿を見せないことで様々な噂が飛び交っていた。
その王女が和平のため、元敵国の騎士団長レイヴァンの元へ嫁ぐことになる。
敗戦国の宿命か、葬列かと見紛うくらいの重々しさの中、民に見守られながら到着した先は、言葉が通じない国だった。
言葉と文化、思いの違いで互いに戸惑いながらも交流を深めていく。
妹のために愛の無い結婚をすることになりました
バンブー竹田
恋愛
「エミリー、君との婚約は破棄することに決まった」
愛するラルフからの唐突な通告に私は言葉を失ってしまった。
婚約が破棄されたことはもちろんショックだけど、それだけじゃない。
私とラルフの結婚は妹のシエルの命がかかったものでもあったから・・・。
落ちこむ私のもとに『アレン』という大金持ちの平民からの縁談が舞い込んできた。
思い悩んだ末、私は会ったこともない殿方と結婚することに決めた。
公爵令嬢クラリスの矜持
福嶋莉佳
恋愛
王太子に「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄された公爵令嬢クラリス。
だがその瞬間、第二王子ルシアンが彼女の手を取る。
嘲笑渦巻く宮廷で、クラリスは“自分に相応しい未来”を選び抜いていく物語。
離宮に隠されるお妃様
agapē【アガペー】
恋愛
私の妃にならないか?
侯爵令嬢であるローゼリアには、婚約者がいた。第一王子のライモンド。ある日、呼び出しを受け向かった先には、女性を膝に乗せ、仲睦まじい様子のライモンドがいた。
「何故呼ばれたか・・・わかるな?」
「何故・・・理由は存じませんが」
「毎日勉強ばかりしているのに頭が悪いのだな」
ローゼリアはライモンドから婚約破棄を言い渡される。
『私の妃にならないか?妻としての役割は求めない。少しばかり政務を手伝ってくれると助かるが、後は離宮でゆっくり過ごしてくれればいい』
愛し愛される関係。そんな幸せは夢物語と諦め、ローゼリアは離宮に隠されるお妃様となった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる