巻き添えで異世界召喚させられた?!世界を救うのは主人公にまかせてモブの俺は全力で逃げたいと思います!

yao

文字の大きさ
24 / 55

23 回想② ー セプター・バンテール ー

しおりを挟む
 
 
 
 
17歳になった頃、俺の部屋の掃除をすると来たメイド達は1時間経っても終わったと知らせに来ない。

伝え忘れて違う仕事に行ったんだろうと、自分の部屋に戻ると賑やかな話し声が溢れてくる。

まだ掃除が終わらないのかと呆れて立ち去ろうとすると、だらしなく開いているドアから話の内容が聞こえてきた。


「優秀な伯爵様だったら体を使ってでも仲良くなるけど、アレじゃあね。結婚したとしても上の生活は望めないし、堅苦しい人付合いだけが残るだけで良いことないから まっぴらごめんだわ。」

「そうよね。子供の髪色もどうせ、薄紫になるんだからさー。子供が可愛そうよ。」

「ねえねえ、あたし、この前お使いの時にアルーバ男爵のご子息を見かけたんだけど、野性味溢れてて格好良かったわ。髪色も濃い赤で素敵なの。」

「えー、でも噂じゃ、婚約者がいるのに女の影が耐えないって聞いてるわよ。」

「まあまあまあ、聞きなさいよ。最初は妾だとしてもご子息の髪色の子を産んだら妻の座も夢じゃないわよ。」


俺のことを蔑んでいるメイド達は掃除などしておらず、俺の椅子とデスクに腰掛けて無駄話をしていたのか。

どおりで部屋のあちこちにホコリが溜まっているわけだ。


ドアを開けるとメイド達は慌てて飛び退いて身なりを整えた。


「ちょっと、どうして呼んでないのに。」

「しっ、黙って!」

「あっ、あの坊っちゃん。今掃除を……」

「………掃除はもういい。アルーバ男爵家に紹介状を書いてやるから荷物をまとめなさい。」

「!」

「アルーバ男爵家に行ける!」

「バカ、クビになるのよっ!!」

「だって紹介状…」

「あの坊ちゃま、冗談を話していただけなんですよ。どうかここに置いて下さい。」

「あ、今夜は坊ちゃまのお部屋に私達3人でお伺いしてもいいですよ。」

「ええっ!」


紹介状に喜んでいたメイドは正直で嫌そうに声を上げてくれて助かる。


「色仕掛けで懐柔するつもりでも、一人は嫌そうだぞ?」

「もうっ!」

「バカ!」

「痛い!」

「3人共、今すぐ荷物をまとめて出ていけ。出て行かないなら、紹介状無しで追い出すぞ。」


アルーバ男爵家への紹介状もつけて、メイド達は互いを罵りながら屋敷を出ていった。

先日メイドが数名いなくなったと噂に聞いていたからアルーバ男爵家も喜ぶはずだ。





俺はこの出来事があってから屋敷で働く使用人の髪は薄い色の者しか雇わなくなった。



***


それなのにリーフはわざわざ俺の髪色と同じにしたいと言う。なんて変わっている奴なんだ。


店主が魔法で俺と同じ色に染め上げる………薄紫色の髪、毎日見ている嫌いな色。


「はい、出来ました。このお色でいいですか?」

「わあっ💗 本当にセプター様と同じ色だ。セプター様どうですか似合いますか?」


似合う?リーフは嬉しそうに笑顔で聞いてくるけれど、俺は黒髪の方が似合うと思うぞ。

店主も不安そうに俺の返答を待っている。


「ああ、よく似合う。」

「本当ですか?! 嬉しいな、綺麗な色ですよね。」


リーフは鏡に近寄って色んな角度で自分の髪を眺めて本当に喜んでいるようだ。


「あっと言う間に染めちゃって凄い魔法ですね。」

「コホン…この髪を染める魔法は、お祭りの時などにワンポイントで染めたり、このように光らせたりするんですよ。」


リーフの反応に店主も気を良くしたみたいで、光る魔法を見せてリーフを喜ばせた。


「この中からウィッグデザインを選んで下さい。」


ヘアカタログを渡されたリーフは10分ほど悩んでから店主を呼んだ。


「恐れ入ります。お客様、お決まりですか。」

「髪型は今の髪に近いこれでお願いします。」

「お色はどうしますか?」


店主は俺を見ず、今度はちゃんとリーフに注文を聞いてきた。


「この髪と同じ薄紫いろでお願いします。」



リーフはそう言うと思ったよ。
 
 
 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~

スサノワ
ファンタジー
「ここわぁ、地獄かぁ――!?」  悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、気がつきゃ金糸のような髪の小娘に!? 「えっ、ファンタジーかと思ったぁ? 残っ念っ、ハイ坊主ハラペコSFファンタジーでしたぁ――ウケケケッケッ♪」  やかましぃやぁ。  ※小説家になろうさんにも投稿しています。投稿時は初稿そのまま。順次整えます。よろしくお願いします。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~

たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。 たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。 薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。 仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。 剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。 ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。

処理中です...