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第六話 揺れる影
高校でオリエンテーション合宿に行ったときのこと。
いわゆる、青少年自然の家という施設に一泊二日で宿泊することになった。
そこで新入生同士の自己紹介や、キャンプファイヤー、体育館でのビンゴゲームなどをして盛り上がった。
私の所属するクラスは特殊で、三年間クラス替えはなく、卒業するまで同じメンバーで過ごす。
喧嘩せず仲良くなることが、クラスにとって重要なのだ。
「合宿の夜と言えば、怖い話っしょ!」
修学旅行の夜と言えば、昔は先生の見回りをやり過ごし、遅い時間まで恋の話や、秘密の話をするのが定番だった。
残念ながら女子校だったので、恋の話よりも怪談話のほうが私たちの興味を引いた。
六人一組ほどの部屋に分けられ、怖い話が苦手な子は別の部屋に避難し、何人かがそこに残る。
その部屋には私の他にヤンキーやギャル、どちらにも所属していないグループの子たちなど、多種多様な子が集まっていた。
みんなが話す怪談の内容は、正直なところ、聞いたことがあるようなものばかりだったが、大盛り上がりだった。
部屋を暗くし、携帯の明かりだけを頼りに語っていたのだが、廊下の電気は安全のためか点けられている。
ドアの下框に隙間があり、私はそこから黒い影が行ったり来たりしているのが見えた。
「あれ……? 誰かいるのかな?」
私が思わず扉を指さすと、何人かがその影に気付いた。音もなく人の気配がする。
外からこちらの様子を伺い、ウロウロと入りたそうにしていた。
「え、誰?」
「ええ、なになにー! 怖い怖い!」
ギャルの麻美が扉に向かって呼びかけるが、一切反応はなく、ただただ人の気配だけがする。
その場にいた女子たちは、半ばパニックになりかけていた。
誰かが、それを察して部屋の電気を点けてくれた。
意を決し、麻美は扉の前まで行くと恐る恐るドアを開け、左右を確認した。
「はぁ? 誰もいねぇし。気のせいかなぁ」
麻美はそう言って笑うと、部屋に引っ込んだ。しばらくして、とっくの昔に見回りを終えた担任が部屋をノックし、顔を覗かせた。
「平野、お前先生の部屋に来たか?」
平野というのは麻美の苗字だ。
もちろん、ずっとこの部屋で怪談に参加していた麻美が、担任の部屋を訪ねるわけがない。
「えっ、行ってないけど? なんで」
「いや、人の気配がしてな。ノックされたから扉を開けたんだが、誰もいなくて。廊下を見たら、平野の後ろ姿が見えたんだ。用があって来たんじゃないのか?」
担任によれば、廊下の先を歩く麻美の後ろ姿が、角を曲がっていくのが見えたらしい。
不審に思った担任は、消灯を過ぎて出歩くなと注意しようと思い、この部屋を訪れたのだ。
それは麻美ではないと説明し、担任は納得いかない様子だったが、そのまま部屋へ帰っていった。
「どういうこと? あの影と関係あんの? あたしに何もないよね?」
青ざめた麻美に問い詰められたが、霊能者ではない私には、残念ながらそれが何なのか分からなかった。
ちなみにそれ以降、特に何も起こらなかった。
麻美は卒業まで怪我も病気もせず、日サロで肌を焼く、明るく元気なギャルを貫いた。
いわゆる、青少年自然の家という施設に一泊二日で宿泊することになった。
そこで新入生同士の自己紹介や、キャンプファイヤー、体育館でのビンゴゲームなどをして盛り上がった。
私の所属するクラスは特殊で、三年間クラス替えはなく、卒業するまで同じメンバーで過ごす。
喧嘩せず仲良くなることが、クラスにとって重要なのだ。
「合宿の夜と言えば、怖い話っしょ!」
修学旅行の夜と言えば、昔は先生の見回りをやり過ごし、遅い時間まで恋の話や、秘密の話をするのが定番だった。
残念ながら女子校だったので、恋の話よりも怪談話のほうが私たちの興味を引いた。
六人一組ほどの部屋に分けられ、怖い話が苦手な子は別の部屋に避難し、何人かがそこに残る。
その部屋には私の他にヤンキーやギャル、どちらにも所属していないグループの子たちなど、多種多様な子が集まっていた。
みんなが話す怪談の内容は、正直なところ、聞いたことがあるようなものばかりだったが、大盛り上がりだった。
部屋を暗くし、携帯の明かりだけを頼りに語っていたのだが、廊下の電気は安全のためか点けられている。
ドアの下框に隙間があり、私はそこから黒い影が行ったり来たりしているのが見えた。
「あれ……? 誰かいるのかな?」
私が思わず扉を指さすと、何人かがその影に気付いた。音もなく人の気配がする。
外からこちらの様子を伺い、ウロウロと入りたそうにしていた。
「え、誰?」
「ええ、なになにー! 怖い怖い!」
ギャルの麻美が扉に向かって呼びかけるが、一切反応はなく、ただただ人の気配だけがする。
その場にいた女子たちは、半ばパニックになりかけていた。
誰かが、それを察して部屋の電気を点けてくれた。
意を決し、麻美は扉の前まで行くと恐る恐るドアを開け、左右を確認した。
「はぁ? 誰もいねぇし。気のせいかなぁ」
麻美はそう言って笑うと、部屋に引っ込んだ。しばらくして、とっくの昔に見回りを終えた担任が部屋をノックし、顔を覗かせた。
「平野、お前先生の部屋に来たか?」
平野というのは麻美の苗字だ。
もちろん、ずっとこの部屋で怪談に参加していた麻美が、担任の部屋を訪ねるわけがない。
「えっ、行ってないけど? なんで」
「いや、人の気配がしてな。ノックされたから扉を開けたんだが、誰もいなくて。廊下を見たら、平野の後ろ姿が見えたんだ。用があって来たんじゃないのか?」
担任によれば、廊下の先を歩く麻美の後ろ姿が、角を曲がっていくのが見えたらしい。
不審に思った担任は、消灯を過ぎて出歩くなと注意しようと思い、この部屋を訪れたのだ。
それは麻美ではないと説明し、担任は納得いかない様子だったが、そのまま部屋へ帰っていった。
「どういうこと? あの影と関係あんの? あたしに何もないよね?」
青ざめた麻美に問い詰められたが、霊能者ではない私には、残念ながらそれが何なのか分からなかった。
ちなみにそれ以降、特に何も起こらなかった。
麻美は卒業まで怪我も病気もせず、日サロで肌を焼く、明るく元気なギャルを貫いた。
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