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連載
偽神子たちの対立
「いつも思うが、ロックベル嬢。君はいつも友人とやらの陰に隠れているが、自分で何も言えないのか?」
マイルズは敵意を隠そうとしない。皮肉る口調に、彼の派閥の生徒たちは賛同するように嘲りが広がる。
それに厳しく睨み返すラミィ派閥だが、ラミィ本人はますます俯いて何も言わない。
当人たちは本気で争っているつもりかもしれないが、周囲の人垣の半分以上は、面白半分にこの状況を見ているのだろう。
意地の悪い行動にも見えるが、本来神子の話題はデリケートな問題。王家も絡むので、ノータッチにするべきなのだ。こんな問題を起こすほうがおかしい。
どちらかの派閥に加わってしまった時点で、親から叱責が飛ぶ可能性が高い。貴族なら家ごとその派閥に巻き込まれる可能性があるし、平民だった場合は後見人に見放されて退学になるかもしれない。
(……って、レニは言っていたけど、この偽神子派閥たちはしょっちゅうケンカしているよな)
この学園にはティンパイン王家の人間がいない。
唯一在学扱いのティルレインは、療養の関係で在席はしているが通学はしていない。色々複雑な事情があるので、割愛する。
神子はティンパインの王家にしか正体を知らされていない――ということになっている。貴族にはお披露目はあったが、多くの護衛がいる状態での交流。限られた時間でできるのは、手短な挨拶のみ。
その時の神子は長いヴェールを顔に降ろして年齢及び性別、本名出身地もすべて不明。厳重に秘匿されている。
万が一にも誘拐されないようにとの警戒もあるのだろう。
お披露目直後に、テイランの王妃が魅了のスキルで操った者たちを押しかけさせた前例もある。
あれ以来、神子の姿は一般公開されていない。
その厳重な情報封鎖もあり、神子の噂は独り歩きしていた。僅かな情報が想像と妄想でこねくり回され、色々な話になっている。
そんな状況だから、マイルズとラミィも神子の振りができている。
学園中の誰も正体を知らないから、僅かな可能性を否定できない。嘘でもその虚勢で利益を得られると踏んでいる者もいるだろう。
(そういえば神殿では加護が分かるんだよな)
シンの記憶の菫色の長髪と瞳を持つ神官が呼び起こされる。加護察知犬のような能力を持った神官アイザック・カイデンスキーは変態だった。猫吸いよろしくに体臭を嗅がれたのはトラウマだが、かなり稀少な能力だ。
ああいう芸当のできる者がここにきてしまえば、偽神子らは一発アウトだろう。
マイルズとラミィ本人は自分が神子でない自覚はあるはずだ。嘘でも誰かに持て囃されたかったのだろうか。虚栄心を満たすために愚行に及ぶ人間はどこの世界でもいるのかもしれない。嫌な共通点だ。
(関わらんでおこう)
目に見える地雷(時限爆弾機能付き)である。
その場から逃げるように立ち去るのだった。
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