真実の愛に目覚めた伯爵令嬢と公爵子息

藤森フクロウ

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卒業式ですわ!1

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 卒業式です!
 クロード様がエスコートしてくれて、ベアトリーゼは幸せの真っただ中。
 クロード様はこの日の為にドレスやアクセサリーを一式ご用意してくださいました。
 婚約者のいるレディの特権という奴ですわ。甲斐性のある婚約者がいる場合に限りますが。
 小さな宝石を刺繍と共に縫い留めた羅紗を、幾重も重ねた金のドレス。
 動くたびにフワフワと揺れるシルエットが可愛くて、それをあのちょっとお堅いクロード様がオーダーしてくださったと思うと嬉しくて仕方がない。
 髪飾りや手袋まで揃いで、ドレスと同じ刺繍や宝石で作られた花が模られている。
 思わずちょっと歩くたびにぴょこぴょこしてしまう。
 いや、その、卒業式前日にいきなりケッテンベル家にお泊りすることになった時はびっくりでしたが。
 ルンルンでクロード様とダンスのできる広場に向かおうとすると、何やら物々しい一団が。
 黒髪、赤髪、青髪、金髪、緑髪のキラッキラのオーラが鬱陶しいイキったジャリガキ貴族オールスターが大集合。その後ろには、セシリアがウルウルした目でくっついていた。
 テメー! 無断外泊していたと思ったら、男引っかけてたのか! 言っとくけどお前、単位足りてないだろうから卒業ヤベーと思うぞ!
 この構図、なんかどっかの小説で見たことある。
 あ、セシリアの大好きな脳の沸いた三文小説だ。無理やり読まされたんだよね。
 セシリアは真っ白なドレスを着ている。胸の部分に白い鳥の羽とキラキラしたビジューを縫い付けた、ドレープたっぷりのプリンセスライン。緑の宝石のついたティアラを被り、耳にはサファイアのイヤリングが揺れている。たっぷりとしたつやつやの金色の毛皮のケープが煌びやかだ。
 見たことないものだから、誰かに貢がせたか馬鹿親に我儘を言って新しく作らせたんだろう。

「ベアトリーゼ・マルベリー! 貴様は異母妹のセシリアをことあるごとに虐めていたそうだな!」

 その中のリーダー格らしい男が前に出て、唾が飛んできそうな大声で叫んできた。
 うるさ! クロード様に貴様のばっちい唾液が飛んだらどうする!

「お知り合いですか、ベアトリーゼ?」

「知らないです、こんなアオミドロ」

 とりあえず指さしてきたのはムカついたので「人を指さすのマナーがなくてよ」とバチンと引っぱたくと突き指したらしくもんどりうった。
 数秒蹲っていたが、真っ赤な顔でガバリと起き上がった。後ろでセシリアが応援していた。

「誰がアオミドロだ!」

「失礼しました、ボルボックス様」

「違う! 俺はボルクス公爵家、ガラフ・ボルクスだ!」

 へー、興味ない。
 しらーっとした私の反応が予想外だったのか、ボルボックスは懲りずに指さして喚いている。

「お前は自分が姉であることを笠に着て、ことあるごとにセシリアを虐めたそうだな!」

 そんな暇ないわ。セシリアが婚約者のいる男にばかり声をかけるから、クロード様の為に使う時間を費やす羽目になったのよ。
 父親も母親も頭がおかしいから、上位貴族に迷惑かけても謝らないのよ。
 だからつまはじきにされるか理解してないのよね。注意しても、逆切れか悲劇のヒロインごっこが再演されるだけだし。もうそれは飽きたってーの。
 そして私は虐めるほどセシリアに興味がない。

「ガラフ様、シシィはお異母姉様にさえ謝っていただければ」

「セシリア、顔が笑ってるよ。もっと悲劇のヒロインぽく女優しなきゃ」

「え!?」

 顔色を悪くさせ、悲劇のヒロインを忘れたセシリア。バッと凄い勢いで顔を押さえて隠す。
 その姿に、一瞬にして周囲がしらけるのが分かりました。
 そーいうところが杜撰なんだよ、セシリア。
 いつもお決まり、ワンパターンのセシリア主演のヒロインごっこはうんざりよ。


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