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38、顧みられない存在(エンリケ視点)
しおりを挟む(フレアフレア、みんなフレアのことばかり! 全部フレアが悪いんだ!)
エンリケは頭を掻き毟り、枕に拳を叩きつけた。力任せに何度も叩いていると、細かい羽毛が舞う。
苛々していると、唐突にエンリケの部屋の扉が開いた。許可もしていないのに足を踏み入れてきたのだ。ぎょっとしたエンリケだが、入ってきた人物にさらに目を剥く。それは王家を守るはずの王宮騎士達だったのだ。
彼らは有無を言わせずエンリケの腕を拘束し、引きずるようにして運んでいく。
「お、おい! まて! どこに連れて行くつもりだ!? 俺はこの国の王子だぞ!?」
流石に慌てるエンリケ。こんな乱暴な運び方、されたことなどなかった。当然である。いくら中身が腐りきった根性の女たらしでも、エンリケはブランデル王家の一粒種なのだ。
この状況が明らかに普通ではないことくらい、エンリケでも理解できた。
腕を引いても振っても屈強な騎士からは逃れられない。エンリケの抵抗に騎士たちは怯むどころか、一層強く腕を掴んできた。
「北の塔です。そちらで謹慎せよと陛下からの御命令です」
ひゅと、エンリケの喉が鳴った。
北の塔は頭がおかしくなった王族や、大罪を犯した王族が幽閉される白い建物だ。
魔法を使えなくさせ、身体を弱体化させる魔法が掛けられている。その為、屈強で精神の強い人間でない限り脱出どころか寝台から出られなくなると聞いたことが有る。
エンリケは泣き叫び激しく抵抗したが、碌に鍛錬もしていない彼が敵うはずもない。
部屋に放り入れられた途端、エンリケは強烈な虚脱感に見舞われる。
騎士達はそれが分かっていて、エンリケを投げ入れてこの部屋に入らなかったのだろう。階段や廊下よりはるかに辛い。
室内で倒れ伏すエンリケのことを見向きもせず、騎士達は施錠する。
そして、遠ざかる足音と鎧のこすれ合う音。
「どうなるんだ、あれ?」
「さあな、処刑されるんじゃないか?」
「それよりアシュトン公爵令嬢のお加減はどうだろうか? 王都の喧騒を離れて療養していらっしゃると聞くが……」
「この一件で、あのレディが心を痛めていなければいいが」
仕事を済ませ、エンリケにあっと言う間に興味を失った王宮騎士達。
たったいま投げたエンリケより、遠くのフレアを慮っている。
薄れゆく意識の中で、エンリケの絶対的な自信が崩れ始めていた。
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