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この世界の歴史について

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この世界の歴史
ー「門」の顕現ー 2000年
2000年、突如として東京新宿の上空に「門」の顕現を確認した。

ー「異世界固有種」ー
「門」内からは「異世界」の生物とみられる個体が次々と東京新宿に降り立った。我々はこの生命体を「異世界固有種(アンノウン)」と命名した。この異世界固有種は地球上の生物に敵意を持っていない事が確認されており、新宿に降り立った複数の個体は人間を避けながら町を練り歩いたりじっと人間を観察していたりと様々だったとの報告を受けている。異世界固有種の詳細な報告は別の報告書にまとめておく。

ー「終焉時代」の始まりー

ー「終末の薔薇ばら」問題ー 2002年
植物に酷似した性質の異世界固有種(植物種)である「終末の薔薇」によって日本人の半数が死去。その中でも男性の多くが死去し、国内の人類の男女比は2:8となってしまった。原因は「終末の薔薇」によって放出される「花粉」に酷似した粒子によって引き起こされた。問題は「終末の薔薇」の繁殖方法にあった。「終末の薔薇」が放出した「花粉」を人間が吸い込むと、その人間を媒介として繁殖するという方法である。「終末の薔薇」についての詳細資料は別の報告書にまとめておく。

ー「終末の薔薇」掃討作戦の始動ー 2005年
日本全国に分布した「終末の薔薇」を掃討するべく、政府が組織した特別作戦執行部隊。通称「戦乙女(ヴァルキリー)」部隊。
「固有種適合手術」に成功した者や「終末の薔薇」の「花粉」に強い耐性を持つ者達がこの部隊に集められた。隊長ナツミ・イウヴァルト率いる女性50人、男性1人、人型の異世界固有種1体の少数部隊である。「終末の薔薇」掃討作戦についての詳細は別の資料に残しておく。

ー「終末の薔薇」海外への分布ー 2007年
最初に中国、韓国への分布を確認し、その10日後にはモンゴル、インド、ミャンマー、カザフスタン、ロシア、タイ、ベトナムでの「終末の薔薇」発芽が確認された。この頃海外ではまだ「終末の薔薇」に対抗する技術が確立されておらず、「終末の薔薇」の繁殖拡大を許してしまった。

ー収束 「終焉時代」の終わりー 2050年
2050年4月10日「戦乙女」部隊の活躍により、全世界に分布していた「終末の薔薇」の掃討は完了した。この時点で全世界の人類の人口の男女比は1:9であり、この年に日本では「一夫多妻制度の合法化」が可決された。今や二万人に増え規模が大きくなりすぎた「戦乙女」達の待遇や、崩壊寸前の文明の復興など様々な問題は残るが、戦乙女部隊に所属していた人型種の「異世界固有種」がコミュニケーションがとれる他の「異世界固有種」を説得し、人類の力となる事を申し出た。我々人類と「異世界固有種」は協力し、共に歩む道を選んだ。戦乙女部隊に所属していた人型の異世界固有種は、のちにルナ・フェルメールと名付けられた。

ー異世界固有種共存社会ー 2100年代
そして現在の、人類と異世界固有種が共存する「異世界固有種共存社会(アンノウンきょうぞんしゃかい)」が誕生した。この頃になると人類と異世界固有種との違いがほとんどなくなり(人型種や一部の混合種)、角や尻尾などの外見的特徴以外はほとんど人間そっくりとなった。平和になったいまでも問題は残っており、いまだに全世界の男女比率は2:8と男性が少ないのである。共存後の異世界固有種の詳細は他の資料にまとめておく。

資料作成 戦乙女部隊指揮官 米俵握子               

ここからは詳細資料

「異世界固有種」詳細資料
「異世界固有種(アンノウン)」はこれまで様々な種の報告が確認された。大まかに部類分けをした結果、竜種、魚介種、植物種、人型種、混合種、機械種の計6種類に分類される。中には人類とコミュニケーションをとれる種もいるということが確認された。(竜種、人型種、機械種、混合種)

「終末の薔薇」詳細資料
「終末の薔薇」は「花粉」に似た粒子を放出し人間を媒介として繁殖する。人間の体内にこの「花粉」が入ると、血液と溶け合い体中に根を張る。(この時血液は青色に変化する)「終末の薔薇」の宿主となった人間は、数日間身体中の激痛と異物感、めまいに苛まれ、根が脳にまで達すると根は宿主の体を突き抜け、頭部であったところからは青色の薔薇の花が咲くことが確認された。尚、女性に比べ男性は「花粉」の耐性が極端に弱い事が報告されている。

戦乙女・掃討作戦報告書
ー「戦乙女(ヴァルキリー)」についてー
異世界固有種の遺伝子を人間に組み込ませる「固有種適合手術」により大幅な身体能力の強化、外見の変化(角や尻尾が生えるなど)に成功した者達のを「戦乙女(ヴァルキリー)」と呼ぶ。この「固有種適合手術」は男性が受けると激しい拒絶反応が出るとの報告があるが、1人の男性が「固有種適合手術」に成功した。彼は隊長の夫であるジーク・イウヴァルトである。最初は少数部隊であった戦乙女部隊だったが、一刻も「終末の薔薇」の掃討を完了させるべく戦乙女の人数は増加傾向にある。

ー「終末の薔薇」掃討詳細ー
「終末の薔薇」の討伐方法は確立している。「終末の薔薇」の宿主である人間の心臓を破壊すれば枯れて「花粉」を放出することは無くなる。しかし、「終末の薔薇」には自衛機能が備わっているらしく、無数の触手で外敵を攻撃したり、宿主の心臓付近は鉄よりも硬い細胞壁で守られているため、掃討も楽ではない。まれに生かされたまま「終末の薔薇」の宿主になっている人間もいた。また、「花粉」による「終末の薔薇」の繁殖拡大を防ぐため、日本の市民には政府が開発した「終末の薔薇」の「花粉」に対する抵抗力を強めるワクチン「REワクチン(RoseExecution)」の投与を義務付けられた。抵抗力が極端に弱い男性には、比較的「終末の薔薇」の分布が少ない長崎、沖縄での隔離生活を余儀なくされた。
ー追伸ー
先日、中国で3人、韓国で1人の「終末の薔薇」の発芽が確認されたとの報告を受けた。このままではやがて全世界にまで「終末の薔薇」が分布拡大してしまうだろう。

共存後の異世界固有種について
人類と共に共存している者の多くは人型種、混合種、機械種の異世界固有種である。人類と共に協力、共存をしたことで進化し、人の心や道徳を学んだ。この頃には異世界固有種との結婚(人型種、一部の混合種のみ)が可能となり、今では頼もしい人類のパートナーとも言えるべき存在となった。個性豊かで皆良い子である。他の異世界固有種については、コミュニケーションを取ることが可能とされている竜種が危険な異世界固有種を「門」内に戻したり人類に有害な異世界固有種が現れぬ様に監視をしたりと日々我々を守ってくれている。

異世界固有種の繁殖について(人型種、一部の混合種)
人間の女性の身体的特徴を持った個体のみで構成されているが、つがいとなるパートナーを見つけた時、パートナーのどちらかが「両性具有」と呼ばれる両性の性器を備えた状態となり、行為をする。「両性具有」の状態へと変わるためにかかる期間は3~5ヶ月とされており、この期間を「変性期」と呼ぶ。行為を終えた後はおよそ一週間程度で元に戻る。


「門」の機密資料
※この資料は一般市民の閲覧を硬く禁ずる。

突如として東京新宿に顕現した「門」。まだ「門」については謎が多く、現在確認出来ていることは「門」を通じここではない異世界への移動が可能だということだ。学者達はここではない、どこか遠くの銀河にあり、地球よりも遥かに文明レベルの高い惑星と繋がっているのではないか?と憶測している者も多い。「終末の薔薇」の様な人類に有害な異世界固有種の持ち込みを防ぐため、現在では新宿を封鎖し「門」付近では人類と交友関係にある竜種と引退した元戦乙女が監視を担っている。
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