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第二話 登場!聖美戦隊!

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体育館にはすでに多くの新入生達が指定された席へと座っていた。体育館内は女の子特有の、ふわっとした甘美な香りで鼻孔をくすぐられる…。
どうやらクラスが発表されて呼ばれた生徒から席へ座るようだ。幸い、順番が来る前に体育館に来れたようだ。
「1ーB 米俵結貴、こちらへ」
「あ、はい」
呼ばれたので指定された席に座る。ふと職員側の席へ振り向いてみると、曽祖母が笑顔で手を振っていた
(嬉しいけど恥ずかしいよ握子さん…)
思っていた通り、俺以外は全員女の子だ。小中時代も親友を除けばそんな感じだったので慣れてはいるけれど、やはり落ち着かない。
「1ーB ルナ・フェルメール」
「はい」
(ルナさんと同じクラスか!こりゃ嬉しい)
内心浮かれていると、ちょうど真後ろの席に座ったルナさんが声をかけてきた。
「同じクラスになれましたね。これからよろしくお願いします、おむすびくん」
「こちらこそ。結局おむすびって呼ぶんだね…」
「美味しそうでしょう。私はツナマヨが好きです」
「そうなんだ、俺も好きだよ」
「ふふっ、一緒ですね」
おむすびというあだ名でこれから呼ばれ続けるのかと思うと複雑な心境だが、まぁそのうち慣れるだろうと自分に言い聞かせる。同じツナマヨ好きという発見もあったわけだし。
しばらくすると、全ての生徒が呼ばれたようで、理事長兼校長の曽祖母がステージに上がって挨拶をし始めた。ここからは色んな人が挨拶をする。襲いくる睡魔と戦いながら話を聞いてると、ふいにルナさんの名前が呼ばれた。
「新入生代表の言葉、ルナ・フェルメール」
「はい」
へぇ、ルナさんが新入生の言葉を言うのか。
(やっぱり綺麗だな…)
流れる様な銀髪と、尻尾までピシっとした堂々たるたたずまいに見惚れていると、いつのまにか新入生代表の言葉は終わってしまったようだ。周囲からは拍手が送られていた。
(もっと見たかったな)
余韻に浸っているのも束の間、次は在校生代表の言葉らしい。
「在校生代表の言葉、生徒会長 如月きさらぎメイ」
「はい」
そう言われステージに上がってきたのは、猫耳とその尻尾が特徴的な、茶髪の美人だった。あの人が生徒会長らしい。

「桜の雨もふり止み、葉桜が萌えづる季節となって参りました。新一年生の皆さん、ご入学おめでとうございます。在校生を代表して、歓迎の言葉を述べさせて頂きたいと思います」
その凛とした佇まいと、芯のある真っ直ぐな声に魅せられ、俺はすっかり聞き入ってしまっていた。
「……最後に、皆さんの高校生活がより良いものとなりますよう、祈念きねん申しあげて祝辞しゅくじとさせて頂きます。本日はご入学、誠におめでとうございます」
そう言い終えると、お手本の様な最敬礼で代表の言葉を締めくくった。周りからは大きな拍手が送られている。俺も盛大に拍手を送った。すると、会長はマイクから手をはなし、口に手を当てた。何をするんだろう?
「すぅー…っ、みーーんなーーー!出ておいでーーー!」
いきなり会長が叫んだかと思うと、刹那せつな、後ろの扉がバーーンと開け放たれた!
「うッしゃー出番だ‼︎バシっと決めようぜ!」
「「「「yeahヤー‼︎」」」」
仮面をつけたカラフルな人達がそう叫ぶと、両端の二人が翼を広げ、俺達新入生の間のギリギリを低空飛行しながらステージまで飛び、残る三人は猛ダッシュでステージへと向かい、アクロバティックに前中をしながらステージに着地した!新入生達は大熱狂。もちろん俺も例外ではない。
(す、すげぇっ!なんだ?何が始まるんだ!?)
昔見た戦隊モノのショーを思い出しながら、俺は手に汗握って見ていた。
「学園の風紀とゴミの分別に青春を掛ける者‼︎セイビグリーン!」
「欲望のおもむくままに青春を駆ける者‼︎セイビピンク!」
「購買の30個限定揚げパンを買うために廊下を駆ける者‼︎セイビイエロー!」
「文武両道!己を磨き、技を磨くため剣道に青春をかけりゅッ、…か懸ける者‼︎セイビブルー!」
「陸上と赤点回避に青春を賭ける者‼︎セイビレッドォ!」
「「「「「(俺達)私達‼︎五人揃って!聖美戦隊、セイレンジャー‼︎」」」」」
ズバボーンという爆発音が聴こえてきそうな勢いで各々が名乗りをあげた!若干のポンコツ感はいなめないが、興奮した俺は思わずうおぉぉと席から立ち上がった。周りも大半は俺と同じ状態だ。
「ヒュー!黄色い歓声サンキューな!」
「今からうちらセイレンジャーが、この聖美学園について紹介するけんね!」
「耳の穴かっぽじってよぉーく聴けよ後輩諸君!」
それからはセイレンジャー達がこの聖美学園について、劇をまじえて紹介を始めた。この学園の成り立ち、購買での売り上げ人気ランキング、正しいゴミの分別方法、部活動についてなどなど。部活については気になるものもあって、特に文化部には「メイド喫茶」というこの学園特有のものもあるのだそう。すげぇ気になる
「……という訳で!ここら辺でセイビについての紹介は終わるぜ!分かんない事あったら、そこにいる会長サンに聞いてくれ!」
「ご清聴、ありがとうございました!」
「それでは後輩諸君、サラダバー!」
そう言うと、セイレンジャー達は舞台袖に戻っていた。
「以上、セイレンジャー達でした~。みんな個性豊かでしたね~。次は各教室への移動を行います。それでは先生方、お願いします」
猫耳会長がそう言うと、クラスの名前が書かれた看板を掲げた先生方がぞろぞろと現れた。
「1ーBはこっちだぞー。来た奴から順に並べー」
これから教室に案内されるのか。俺は1ーB看板を掲げた先生の列に並び、これから一年間を過ごす教室へと移動した。

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