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前編
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邪魔ですから外してくださいと言われて、渋々巻いていたタオルを外す。今まで気にも留めていなかったけど、銭湯とかでもないのに他人の前ですっぽんぽんって、意識すると恥ずかしい。いくら裸の付き合いって言葉がある日本人だったとしても、抵抗感が無いわけじゃない。特に自分だけが裸というこの状況はじわじわと羞恥心が湧きあがってくる。思わず外したタオルで前を隠した。
「何をそんなに恥ずかしがっていらっしゃるんですか? 今更でしょう」
「今更ながらに恥ずかしくなったんだよ! なぁ、せめてタオルは巻かせてくれ」
「ダメです。ほら、カーディアス様が待っているのですよ」
「んぐぅ…………」
それを言われたら俺はもう降参だ。諦めた俺は素直にタオルを外した。
ごねたことへの仕返しなのか、デリスはやたらと長く身体を洗ってきた。それはもう、全身あわあわになるくらいに。お湯をかけられて現れた素肌はそれはもうツルテカだ。
この世界は日本人が制作したゲームが元となっているからか、衛生面はとても良い。お風呂もトイレも元日本人の俺が安心して使えるくらいだ。というか、トイレって言葉が通じる時点で日本仕様だけど。
「湯加減はいかがですか?」
「いつも通りの丁度いい具合。気持ちいい」
「ふふ。レイラ様はこの魔石の扱いだけは苦手でいらっしゃいますよね。昔、火傷された時から、お風呂だけは絶対に一人で入らせないと決めていたのですよ」
「細かい魔力調節が苦手なんだよなぁ。だけど昔みたいに熱湯にはしなくなったぞ」
まだデリスと立場の違いがはっきりと分かれていなかった頃、俺は一人でお風呂に入ると意地を張って魔石の調節を誤り、火傷を負ったことがある。今思えば、どうしてぐつぐつと煮えたぎったバスタブに入ろうとしたのかも覚えていないが、デリスにとってもあれは衝撃的な出来事だったのだろう。なにせ、火傷を負ってうずくまっている俺を見つけたのはデリスだ。赤く爛れた足は、それはもう酷かった。すぐに呼ばれた治癒師によって火傷は跡も無く治されたが、それでもしばらくは幻覚の痛みに夜泣きをするほどだったのだ。お風呂に入ることも拒絶してしまって、デリスが一緒に入ることでやっと俺も入れたほどの出来事だった。
「それでも、少しでもレイラ様の肌が傷つくことは嫌なのです。上気して仄かに赤くなった肌はとても煽情的でいつまでも眺めていたいものですが、あのような火傷だけは二度と目にしたくありませんから」
さりげなく囁かれた言葉に、のぼせそうな気持になって俺は慌てて立ち上がった。
「もう十分温まったから出る!」
「かしこまりました」
俺の顔は今、湯気で上気したのとは違う意味で赤くなっていることだろう。そんな俺を見て微笑むデリスは、全部分かっているのだから意地が悪い。
「あぁ……ちゃんと拭いてください、レイラ様。風邪をひいてしまいますよ」
「ならさっさと乾かせばいいだろう」
「駄目です。お手入れがあるんですから」
「それは寝室でやる。これ以上カーディを待たせられない。別に化粧台でしなくてもいいだろ?」
「それはそうですが……では、カーディアス様の前でも大人しくお手入れさせてくださいね」
「わかったわかった!」
その時の俺は、ちゃんと理解していなかった。デリスの言う「お手入れ」が、いつもの簡単なスキンケアのレベルじゃない、本気の「手入れ」だと言うことを――。
「何をそんなに恥ずかしがっていらっしゃるんですか? 今更でしょう」
「今更ながらに恥ずかしくなったんだよ! なぁ、せめてタオルは巻かせてくれ」
「ダメです。ほら、カーディアス様が待っているのですよ」
「んぐぅ…………」
それを言われたら俺はもう降参だ。諦めた俺は素直にタオルを外した。
ごねたことへの仕返しなのか、デリスはやたらと長く身体を洗ってきた。それはもう、全身あわあわになるくらいに。お湯をかけられて現れた素肌はそれはもうツルテカだ。
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「湯加減はいかがですか?」
「いつも通りの丁度いい具合。気持ちいい」
「ふふ。レイラ様はこの魔石の扱いだけは苦手でいらっしゃいますよね。昔、火傷された時から、お風呂だけは絶対に一人で入らせないと決めていたのですよ」
「細かい魔力調節が苦手なんだよなぁ。だけど昔みたいに熱湯にはしなくなったぞ」
まだデリスと立場の違いがはっきりと分かれていなかった頃、俺は一人でお風呂に入ると意地を張って魔石の調節を誤り、火傷を負ったことがある。今思えば、どうしてぐつぐつと煮えたぎったバスタブに入ろうとしたのかも覚えていないが、デリスにとってもあれは衝撃的な出来事だったのだろう。なにせ、火傷を負ってうずくまっている俺を見つけたのはデリスだ。赤く爛れた足は、それはもう酷かった。すぐに呼ばれた治癒師によって火傷は跡も無く治されたが、それでもしばらくは幻覚の痛みに夜泣きをするほどだったのだ。お風呂に入ることも拒絶してしまって、デリスが一緒に入ることでやっと俺も入れたほどの出来事だった。
「それでも、少しでもレイラ様の肌が傷つくことは嫌なのです。上気して仄かに赤くなった肌はとても煽情的でいつまでも眺めていたいものですが、あのような火傷だけは二度と目にしたくありませんから」
さりげなく囁かれた言葉に、のぼせそうな気持になって俺は慌てて立ち上がった。
「もう十分温まったから出る!」
「かしこまりました」
俺の顔は今、湯気で上気したのとは違う意味で赤くなっていることだろう。そんな俺を見て微笑むデリスは、全部分かっているのだから意地が悪い。
「あぁ……ちゃんと拭いてください、レイラ様。風邪をひいてしまいますよ」
「ならさっさと乾かせばいいだろう」
「駄目です。お手入れがあるんですから」
「それは寝室でやる。これ以上カーディを待たせられない。別に化粧台でしなくてもいいだろ?」
「それはそうですが……では、カーディアス様の前でも大人しくお手入れさせてくださいね」
「わかったわかった!」
その時の俺は、ちゃんと理解していなかった。デリスの言う「お手入れ」が、いつもの簡単なスキンケアのレベルじゃない、本気の「手入れ」だと言うことを――。
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