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第一部
本当は
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それから少しの間、ノエルと星空を眺めながら話をした後に帰路についた。
ノエルはもう少し話したがっていたが、さすがにこれ以上遅くなると親が心配すると言うと、彼女もしぶしぶといった様子で納得した。
そのかわりとでもいうのか、帰り道でも彼女はたくさんのことを話してくれた。
嬉しそうに友達のことや最近練習している魔法のことを話す少女の横顔を、アルテアは感心したように見つめる。
彼女の機嫌を表すように、エルフの特徴である切れ長の耳がピンと上向きに伸びている。
以前の彼女はそれを必死に隠そうとしたいたのだろう、顔が見えないほど伸ばしていた髪も、今では目の上あたりで綺麗に切りそろえられていて、くりっとした大きな目がよく見えた。
もう本当に隠す気はないのだなと、アルテアは思った。
本当に変わったのだな、とも。
彼女が今みたいに笑えるようになるまで、どれほど苦労し時に傷ついたのか、アルテアには分からない。
ただそれがとても大変なことだということはわかる。
楽しそうに話す少女を見ていると、
自分も変わることができるのだろうかと、
不意にそんな問いが頭に浮かんだ。
変わってもいいのだろうか。
生きていてもいいのだろうか。
しかし、答えてくれるものは誰もいない。
ただ、ひとつの問いが頭の中をぐるぐると当てどなく回るだけ。
いつもそうだった。
考えて、悩んで、でも答えは出ない。
それの繰り返しだった。
どこにもたどり着けない自分が愚かしい。
隣を歩く少女はどんどん先に歩いているというのに。
今は考えても仕方がない。
いつかきっと。、いや、教祖を倒せば答えは出るだろう。
そう思い、頭を振って頭の中の疑問を振り払う。
そしてノエルとの会話に興じて歩みを進めて、ノエルを家まで送り届けた。
少女が別れ際に見せた笑顔がアルテアの暗い気持ちを明るくさせてくれた。
ノエルを家まで送り届けて、アルテアも屋敷へ着いた。
遅くなったことを両親に叱られるとも思ったが意外にも彼らは何も言わなかった。
ただ「おかえりなさい」と、
そう言って笑いかけてくれた。
それに応えてから少し遅めの夕食をとった。
用意しなくていいと伝えたはずだが、ターニャは軽めのものを作って待ってくれていたからだ。
家族はいつでも自分に優しかった。
自分に優しくしないでくれと、癇癪のように怒鳴り散らしたにも関わらず、ずっと変わらず接してくれる。
あの時のことは結局、父には謝ることができていない。
どうしてこんな自分に優しくしてくれるのわからなかった。
また、答えの出ない問いが増えていく。
そうしてその問いが鎖のように心を縛り付け、動けなくなっていってしまうのだ。
鎖は断ち切らねばならないと思う。
でも、できないでいる。
また思考の袋小路に陥りつつあった。
鬱蒼とした思考を頭から追い出して、目の前の料理に集中する。
ターニャの料理は相変わらずとてもおいしくて、あまり食欲は感じていなかったがそれでもすぐに食べきることが出来た。
彼女と両親に礼を言って二階の自室へ入って、すぐさまベットに倒れ込んだ。
淡く光るランタンの火をぼんやりと見ながら、高台でのノエルとのやりとりを思い出す。
「好き、か……」
ランタンの火の中に、ノエルの見せた様々な顔が浮かんで消える。
少しだけ、心の中があたたかくなるのを感じた。
ーーすきって、なに
かつて、そう問いかけてきた少女の声が蘇った。
「本当は俺もわかっていなかったってことか……情けない」
呆れるように呟いて、ゆっくり目を閉じた。
瞼の裏の暗闇に、ふたりの少女の顔が浮かび上がる。
そうしてふたりのことを考えているうちに、アルテアの意識は落ちていった。
ノエルはもう少し話したがっていたが、さすがにこれ以上遅くなると親が心配すると言うと、彼女もしぶしぶといった様子で納得した。
そのかわりとでもいうのか、帰り道でも彼女はたくさんのことを話してくれた。
嬉しそうに友達のことや最近練習している魔法のことを話す少女の横顔を、アルテアは感心したように見つめる。
彼女の機嫌を表すように、エルフの特徴である切れ長の耳がピンと上向きに伸びている。
以前の彼女はそれを必死に隠そうとしたいたのだろう、顔が見えないほど伸ばしていた髪も、今では目の上あたりで綺麗に切りそろえられていて、くりっとした大きな目がよく見えた。
もう本当に隠す気はないのだなと、アルテアは思った。
本当に変わったのだな、とも。
彼女が今みたいに笑えるようになるまで、どれほど苦労し時に傷ついたのか、アルテアには分からない。
ただそれがとても大変なことだということはわかる。
楽しそうに話す少女を見ていると、
自分も変わることができるのだろうかと、
不意にそんな問いが頭に浮かんだ。
変わってもいいのだろうか。
生きていてもいいのだろうか。
しかし、答えてくれるものは誰もいない。
ただ、ひとつの問いが頭の中をぐるぐると当てどなく回るだけ。
いつもそうだった。
考えて、悩んで、でも答えは出ない。
それの繰り返しだった。
どこにもたどり着けない自分が愚かしい。
隣を歩く少女はどんどん先に歩いているというのに。
今は考えても仕方がない。
いつかきっと。、いや、教祖を倒せば答えは出るだろう。
そう思い、頭を振って頭の中の疑問を振り払う。
そしてノエルとの会話に興じて歩みを進めて、ノエルを家まで送り届けた。
少女が別れ際に見せた笑顔がアルテアの暗い気持ちを明るくさせてくれた。
ノエルを家まで送り届けて、アルテアも屋敷へ着いた。
遅くなったことを両親に叱られるとも思ったが意外にも彼らは何も言わなかった。
ただ「おかえりなさい」と、
そう言って笑いかけてくれた。
それに応えてから少し遅めの夕食をとった。
用意しなくていいと伝えたはずだが、ターニャは軽めのものを作って待ってくれていたからだ。
家族はいつでも自分に優しかった。
自分に優しくしないでくれと、癇癪のように怒鳴り散らしたにも関わらず、ずっと変わらず接してくれる。
あの時のことは結局、父には謝ることができていない。
どうしてこんな自分に優しくしてくれるのわからなかった。
また、答えの出ない問いが増えていく。
そうしてその問いが鎖のように心を縛り付け、動けなくなっていってしまうのだ。
鎖は断ち切らねばならないと思う。
でも、できないでいる。
また思考の袋小路に陥りつつあった。
鬱蒼とした思考を頭から追い出して、目の前の料理に集中する。
ターニャの料理は相変わらずとてもおいしくて、あまり食欲は感じていなかったがそれでもすぐに食べきることが出来た。
彼女と両親に礼を言って二階の自室へ入って、すぐさまベットに倒れ込んだ。
淡く光るランタンの火をぼんやりと見ながら、高台でのノエルとのやりとりを思い出す。
「好き、か……」
ランタンの火の中に、ノエルの見せた様々な顔が浮かんで消える。
少しだけ、心の中があたたかくなるのを感じた。
ーーすきって、なに
かつて、そう問いかけてきた少女の声が蘇った。
「本当は俺もわかっていなかったってことか……情けない」
呆れるように呟いて、ゆっくり目を閉じた。
瞼の裏の暗闇に、ふたりの少女の顔が浮かび上がる。
そうしてふたりのことを考えているうちに、アルテアの意識は落ちていった。
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