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第一部
イーリス
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月灯照らす雲の上 人影途絶えた岩壁に
ひとつ大きく 咲いている 花はきっと寂しくて
白く光るその花は 愛でてくれる 人はなく
花はきっと祈ってる
───────
あたりは暗闇に包まれていた。
周りに人影の気配はなく、伽藍堂としていた。
そこは前後の感覚すら掴めないほど暗くて何も見ることもできなかったけど、どこからか聞こえてくる水滴の反響する音で、自分のいる場所がとても広い場所だということだけはわかった。
闇を照らす術はなかった。
だから毛布に包まれたまま、ただじっと闇の先を見つめていた。
しばらくそうしていると、どこからか獣の唸り声ーーいや、それよりもずっと恐怖を呼び起こさせる不気味なものが聞こえた。
孤独というものを生まれて初めて体験してやはり心細かったのだと思う。
まだ魔獣やイーヴルの存在なんてまるで知らなくて、だからその唸り声の主がどれだけ恐ろしい存在かなんてことも当然知らなかったから、つい声を上げてしまった。
たすけて。叫ぶように。
声を上げると、それまで遠くで聞こえていた唸り声がとんでもない速さで近づいてくるのがわかった。
それが自分にとってとても良くない結果をもたらす存在だと気づいた時には、もう全てが遅かった。
暗闇に溶けるように、いつの間にか怪物はそこに居た。
大きな体をした二本の足で歩く牛のような怪物だった。
それがミノタウロスという魔獣だと知ったのは、もっとずっとあとのことだ。
その怪物ーーミノタウロスは、毛布に包まれて声を上げる私を見下ろしていた。
そしておもむろに、その片手に持った大きな斧を振り下ろした。
───────
「大丈夫ですか、イーリス?」
聞こえる声にはっと目を開けて顔を上げた。
「ん……」
「あなたが任務中に眠るなど珍しい。少々疲れてしまいましたか?」
馬車の対面席に腰掛けたリーベルトが少し心配そうな顔でこちらを見ていた。
アーカディア領のイーヴルの襲撃に対処したのち、王都へ帰るため予め用意していた馬車に乗り込んだところでどうやら船を漕いでいたらしい。確かに私が任務中に眠るなど珍しい。というか初めての事だった。
彼の言う通り、少し疲れてしまったのかもしれない。だから生まれたばかりの頃の夢など見たのかも。
そして疲れを感じる原因についてはわかっていた。
「ん……平気」
でも、あえてそう答えた。
ここで認めてしまったら、自分の覚悟が軽くなる。
「……あなたに人類の命運がかかっていると言っても過言ではない。無理せず、己を労り大切にしなさい」
「ん。ありがとう」
気遣う素振りを見せるリーベルトに答えてから、気分転換もかねて馬車の窓を開けて外の景色を眺めることにした。
窓を開けると心地よい風が入り込んできて体を滑った 。
体にまとわりついた嫌な気をまとめて持っていってくれるような爽やかな風だった。
馬車の速度はなかなかに速くて、王都へ続く街道沿いの景色が流れるように過ぎ去っていった。
馬車の窓は小さくて、過ぎていった景色を振り返って見ることはできない。まるで過去へは戻ることが出来ないとでも言うように、アーカディア領からぐんぐん離れていく。
自分の抱いた決意を確固たるものにするように、ただ窓から前の景色を見続けた。
そうして馬車に身を委ねてすすむことしばらく、景色の移り変わりが徐々にゆっくりとなり、やがて完全に馬車が停止した。
空間の軋む気配。イーヴルの現出の兆候だった。
「イーリス」
「私がやる。あなたは休んでて」
腰の剣に手をかけて臨戦態勢に入ったリーベルトを制して、立ち上がる。
「大丈夫ですか?疲れているのでは?」
「平気。これが、これからの私の使命。……それにずっと座ってたから、少し体を動かしたい」
「おや、意外も意外……随分と熱心になりましたね。……まあ、喜ばしいことです」
リーベルトがその言葉とは裏腹に、さして驚いた様子もなく言った。
「……まあ、ね」
無性にイーヴルを斬りたかった。
それはきっと使命感などではなく、アーカディア領での一件ーー自分の手で斬り捨てた少年に対する罪悪感からくるものに違いなかった。
リーベルトもそれをわかっていて指摘しないのは、彼なりの気遣いだと思う。
「すぐ終わる」
リーベルトにそう告げてから馬車に安置していた純白の大剣を手に取り外へ出ると、四体のイーヴルが私たちを取り囲むように上空を旋回していた。翼を生やした、鳥と人間を合わせたような姿をしていた。
見たところ全てが下位のイーヴルだった。今は極秘任務のため、街道で派手な攻撃はできない。が、この程度なら討滅するのに数分もかからないだろう。襲ってきたやつから順番に斬っていく。それだけだ。
そう算段をつけていると、イーヴルは獲物が現れたと思ったのか、四体が一度に私に向かって襲いかかってくる。
「グオォオォオ」
正面のイーヴルの爪撃を半歩体をずらして回避、わずかに遅れて右側からイーヴルが翼をうちつけてくる。それを剣で弾き、左側と後方から二体同時に襲ってきたイーヴルの攻撃を回転を加えながらしゃがみこみ避ける。そのまま遠心力を利用して回転しながら大剣を振るう。
円状に振るわれた大剣がイーヴルを薙ぎ払い、四体の怪物を一度に両断した。
本来、イーヴルは体を両断されたくらいではすぐに再生し始めるが、この大剣でつけられた傷口からは再生が起こらず、切り口から侵食されたように塩化が始まり朽ちていった。
わずか数秒で全ての怪物は全身が白く塩化し、粉々に砕け散った。
砕けた塩の欠片が朝焼けの光を受けて輝いていた。その光景が過去の記憶と重なった。
白く輝く塩の欠片が風にさらわれどこかへ運ばれていく様が、私にかつての記憶を思い出させた。
───────
「殺せ」
それが、私が生まれて初めて聞いた言葉だった。
私は何故か、生まれたばかりの頃から自我や意識といったものが芽生えていた。
だから周りの人みんなが顔を引き攣らせながらそう叫んでいたのはわかっていた。
言葉の意味まではよくわからなかったけど、それでも周りの人の表情から、私にとっては良くない意味を持つ言葉なのだろうと思った。
みんながそう声高に叫ぶ中、ひとりだけ私を庇う人がいた。女の人だった。
その女の人が何か言うたび、すぐさま周りの人が大声で罵声を浴びせた。
私を殺すかどうかを話し合っているところだった。
「呪われている」「紅い瞳」「白い髪」「忌み子」「魔の災いが降りかかる」「災厄の門が開く」「神に贄を捧げよ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」
どうやら私は生きていてはいけない存在なようだった。
石を投げつけるようなみんなの声に、女の人はとても辛くて悲しそうな顔をした。
その顔を見て、私は少し胸がちくっとした。
きっとこの人が私のお母さんなんだ。
そう直感した。
「おか……あ、さん……を……いじ、めるな……」
気づけばそう口にしていた。
みんなはぎょっとしていた。
これは後で知ったことだけど、普通は生まれてすぐの赤ちゃんは言葉を話さないらしい。みんなが驚くのも当然だった。
生後数分で言葉を話した私は、さぞかし不気味だったと思う。
そのことが拍車をかけて、私の処遇は決まった。
長い髭を伸ばした男の人の命令で、何人かの男の人がお母さんの腕から強引に私を引き剥がした。
「イーリス!!」
お母さんが叫んだ。
それまで感じていたあたたかさが消えて、ひやりとした感覚に変わった。
きっと、私に対するみんなの態度がそう感じさせたのだと思う。
そうして髭の男とその付き人にどこかに運ばれていった。
しばらく歩くと目的地に着いたようで、皆が立ち止まった。
髭の男は付き人から私を受け取り、私の顔を見下ろして言った。
「忌み子は魔王の呪いを受けし者。災いの兆し。贄として捧げて神のお怒りを鎮めねばならぬ。恨むのなら運命を恨むが良い」
髭の男が言い終わるや否や、突然の浮遊感が私を襲った。
そしてお母さんの悲鳴が聞こえた。
男たちの姿がどんどん小さくなるにつれてお母さんの悲鳴も聞こえなくなっていって、目の前も暗くなっていった。
そこでやっと、自分が落ちていっているのだと気づいた。
でも、無力な私にはもうどうすることも出来ずに闇に呑まれていった。
目が覚めると真っ暗な場所にいた。
どの程度落ちたかわからないけど、私は死んではいなかった。
辺りに目をやるが誰もおらず、そもそも暗闇しか見えなかった。
ときおり聞こえる水滴が地面に落ちて反響する音が、よけいに孤独感を際立たせていた。
どうしようか考えていると、唸り声のような不気味な声が聞こた。
生まれてすぐの無力感故にかなりの不安を覚えていた私は、ついその声に言葉を返してしまった。
「た……す、け……て……」
そう言うと、遠かった唸り声がどんどんこちらに近づいてきて、数十秒の間にあっという間に私が横たわるところまで来た。
姿は見えずともすぐに存在を感じられるほど、とても大きな存在感だった。
心臓が大きく跳ねた。
そいつは様子を伺っているのか、少しの間私に何かすることはなかった。
逃げたかったけど、ひとりで動くことはまだできなかった。
私はただひたすら、待つことしかできなかった。
私は死ぬんだろうか。
そう思うと恐怖が込み上げてきた。
なんとか逃げないと。
体をゆさゆさと揺らしてみるが、今いる場所から移動するには程遠い。
逃げようとしているのを察したのか、私の近くにいる何者かがおもむろに動き出すのを感じた。
闇に慣れてきた私の目に、巨大な怪物が身の丈ほどありそうな斧を振り上げているのが見えた。
やっぱり私は死ぬみたいだった。
──どうして、私なの。
そんな疑問が頭に浮かんだ時、怪物が斧を振り下ろした。
「やめ……て……!」
咄嗟に叫んだ。
すると体から白い光が出て、辺りを照らすのと同時に怪物の体を貫いた。
光に当たった怪物は体の半分から上がなくなっていた。
ズゥンと怪物の体が倒れ落ちて地面が揺れた。
何が起きたのかわからなかったけど、どうやら助かったみたいだった。
でもさっきの光を出したせいかひどく疲れてしまって、私の意識は混濁して刈り取られた。
──どうして、私なの。
謎の場所に落とされてからどのくらい時間が経っただろう。
私の胸はその言葉がぐるぐると回っていた。どうして私が死ななくてはならないのか。どうして私が生贄にならないといけないのか。
呪われているせいなのか。
どうして私は生まれてきたんだろう。
答えのない問いを自分に繰り返し問いかけ続けていた。
穴に落とされてからどのくらい時間が経ったのか、もうわならないくらい時が過ぎた。私は近づいてくる怪物を光で倒しつつ、私はなんとか動くことが出来ないか繰り返し試していた。
最初は上手くいかなかったけど、ずっと練習するうちに体の動かし方がわかってきて、しばらくして立って歩けるようになった。
行動範囲が広がった私は、自らの発する光で暗闇を照らしながら穴の中を進んだ。
幾度となく光を使ったおかげで、最初は一度に使うだけで疲れて眠ってしまっていたのに、今ではずっと使い続けてもまるで疲れなかった。
穴の中は広大で、また怪物の巣窟だった。
私は襲いかかってくる怪物を倒しながら穴を捜索した。
ひたすら歩き回って、下へと続く階段をひたすら降りていった。
本当は上へ行きたかったけど、どれだけ探しても上に向かう階段は見つけられなかった。
下へ続く階段を100回以上は降りたと思う。
最後にたどり着いた場所にはそれ以上、下へと降りる階段はなかった。
ただとても大きな部屋があって、その部屋の一番奥に門があった。
門には文字が刻まれていた。
私はひたすら門の文字を眺めた。
最初は全く読めなかった文字も、ずっと見ているうちに掠れているところ以外はなぜか読むことができるようになった。
「いかい……の……を……こ……に……ふうじ……る」
意味はよくわからなかったけど、文字を読み上げて門に手を触れると、門全体が淡く光った。
外に出られるかもしれない。
外に出たい一心で、開けと念じて門を押し続けると、ゴゴゴ、と石のこすれるような音がして門が開き始めた。
門の中は霧がかかっているように真っ白で先は全く見えなかった。
それでも私は、迷いなくその中に踏み込んだ。
「おかあ……さん……」
無意識に発していた声は霧の中に溶けて消えた。
───────
私は眩しい光に目を細めた。
いつの間に門を抜けたのか、私は見知らぬ野道に立っていた。
空には太陽が登り、あたたかな日差しが降り注いでいた。
穴の中では感じられなかったものに触れて、私は嬉しくなった。
これからどうしようかと考えて、お母さんに会いに行くことにした。
どのくらい時間が経っているかはわからないけど、お母さんに会いたかった。
お母さんも、私が生きてるって知ったら喜んでくれるかな。
道はわからなかったけど、お母さんに会いたい一心で歩いていると、少し栄えた町に出た。
町の入口からすぐのところにはお店が並んでいて、たくさんの人が集まっていた。
生まれてすぐに見た以来の人だった。
少し怖かったけど勇気をだしてお母さんの居場所を聞こうと思い誰かに話しかけようとしたところで、私ははたと気づいた。
あの時、皆は私を殺したがっていたのだ。
いま話しかけても果たして大丈夫だという保証はない。
少し様子を見た方が良さそうだと考え直し、その場を去ろうとして。
「きゃああああああ!!!」
甲高い悲鳴が空気を切り裂くように響いた。
近くを歩いていた女の人が、私を見てあげた悲鳴だった。
それを聞きつけて、周りにはすぐに人だかりができた。
「お、おい……あいつ、まさか……」
「ばかな……そんなはずは……」
「いや、あの瞳と髪……間違いない……!忌み子っ!忌み子がいるぞっ!!」
ひとりが言い出すと、事態が激化するのはすぐだった。私が帰ってきたという話はすぐに広がり、やがてひとりの男が駆け寄ってきた。
「あ、ああ……!なんということだ……!お前……なんてことをしてくれたんだ!!」
私を穴に落とした髭の男だった。
彼はこちらを見るなり、大声で怒鳴り散らした。
「い、いますぐ!いますぐ殺さねばならん……!ふりかかるっ……!災いがっ…!」
「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ「」「殺せ」
あの時と同じだった。
恐れ。憎しみ。怒り。
そう言った負の感情がその場に渦巻いていた。
狂気に支配された人々が、手に持った荷物や石を拾って私に投げつけてくる。
穴の怪物の動きに比べればひどくゆっくりとしていて緩慢だったけど私は避けなかった。
投げつけられたものがいくつか私の顔や体にあたった。
穴の中の怪物の攻撃に比べればまるで虫のような威力だった。
でも何故か痛かった。
「今すぐ、儀式を始めねば……」
髭の男の言葉に重なるように、町の近くの森から黒い光が立ち上った。
そして、空が割れた。
青い空にヒビが入り、血のような赤いシミが空中に広がっていく。
そしてそのヒビの向こうから、穴の中でも見た事のない怪物たちが姿を現した。
「い、いかん……封印が……災いが解き放たれーー」
髭の男の首が飛んだ。
体が倒れ、首がごとりと地面に落ちてころころ転がった。
それからは惨劇だった。
空から現れた怪物たちが町を蹂躙して人々を殺した。
どさり。
私の足元に誰かが倒れた。
「お前の……せいで……」
そう言って男は死んだ。
「私の……せい……?」
私のせい。
私が死にたくないと思ったから?
私がお母さんに会いたいと思ったから?
私が穴の中で門を開いたから?
私が生きてるから?
私が……。
どうして、私なの?
同じ問いが私の中で暴れ回り、爆発した。
自分の体から、怪物を倒す時に使うのと同じような光が立ち上った。
でも、光の強さはそれの比ではなかった。
立ち上った光が天を衝いて空を割った。
割れた空の中には、門の中で見たような霧が立ち込めていた。そして、その中から何かが出てくるのが見えた。
ズドォン!!
白い軌跡が見えたと思った次の瞬間、目の前の地面に純白の大剣が突き刺さっていた。
大剣が発光し、剣の刺さった地面が白く変色した。その侵食は町の人も、死体も、怪物も関係なく呑み込んだ。
再度、剣が強い光を放ち、町中を包んだ。
光が晴れた時、そこには怪物たちの姿もなく、私以外の全てのものが白い何かに変貌していた。
なぜ自分だけが無事なのかはわからない。
私は変貌した町をさ迷い歩いた。
白い地面に同化するように、白く変貌した人の体が横たわっている。
町を歩くうち、私はひとりのそれを見つけた。
「おかあさん……」
呼んでみたけど、お母さんは私の言葉に答えてはくれなかった。
手を伸ばして触れようとしたところで、強い風が吹いてお母さんの体が倒れてバラバラになってしまった。
風にさらわれてぱらぱらと崩れていくお母さんの体を前に、私は立ち尽くしていた。
どのくらいそうしていたのか、私はお母さんだったもの前から立ち去り、再び剣の前に戻った。
剣の前に座り込み、剣に持たれて目を瞑った。
そうして私の意識は白い霧に包まれるように途切れた。
───────
次に目を覚ますと、知らない人たちが大勢いた。
私が立ち上がると、それに気づいた人がひとり、私のところまで歩いてきた。
「あなたが唯一の生き残りですか」
男の人だった。
「……う、ん」
「このような体験をして心中お察ししますが、あなたにはいくつか伝えないといけないことがあります」
「なに……」
「あなたは今代の勇者です。あなたには世界を守る剣となり、盾となってもらいます」
「そう……」
「随分とあっさりですね。何か異論や異議はないのですか?」
「……わたしは、何も……感じちゃ、いけ……な、い」
「そう……ですか。なら、あなたは道具に徹すると良い。そうすれば……少しは気も紛れるかもしれません」
「どう、ぐ……」
「ええ。世界を守るために、戦ってもらいます。まずは、私たちと共に行きましょう。色々と、ご説明しますよ」
「わかっ、た」
「では、行きましょうか。ああ……そう言えば名前をきいていませんでしたね。私は星神教会所属 異端審問官七位 リーベルト・シュタインです。あなたのお名前は?」
「イーリス……」
ちらりと大剣に目をやり手を触れると、剣がわずかに発光した。
「イーリス・リィン、フレーゼ……」
町を滅ぼすことになった大剣の名前。
私の過ちを忘れないように、己の名前とする。
「……強く美しい響きですね。あなたはきっと……強い勇者になりますよ」
「そう……。もう、いこ、う……」
「……ええ。では、まずは教会本部まで行きましょうか」
そうして私は勇者として星神教会に身を寄せることになった。
私が生まれてから3年目のことだった。
ひとつ大きく 咲いている 花はきっと寂しくて
白く光るその花は 愛でてくれる 人はなく
花はきっと祈ってる
───────
あたりは暗闇に包まれていた。
周りに人影の気配はなく、伽藍堂としていた。
そこは前後の感覚すら掴めないほど暗くて何も見ることもできなかったけど、どこからか聞こえてくる水滴の反響する音で、自分のいる場所がとても広い場所だということだけはわかった。
闇を照らす術はなかった。
だから毛布に包まれたまま、ただじっと闇の先を見つめていた。
しばらくそうしていると、どこからか獣の唸り声ーーいや、それよりもずっと恐怖を呼び起こさせる不気味なものが聞こえた。
孤独というものを生まれて初めて体験してやはり心細かったのだと思う。
まだ魔獣やイーヴルの存在なんてまるで知らなくて、だからその唸り声の主がどれだけ恐ろしい存在かなんてことも当然知らなかったから、つい声を上げてしまった。
たすけて。叫ぶように。
声を上げると、それまで遠くで聞こえていた唸り声がとんでもない速さで近づいてくるのがわかった。
それが自分にとってとても良くない結果をもたらす存在だと気づいた時には、もう全てが遅かった。
暗闇に溶けるように、いつの間にか怪物はそこに居た。
大きな体をした二本の足で歩く牛のような怪物だった。
それがミノタウロスという魔獣だと知ったのは、もっとずっとあとのことだ。
その怪物ーーミノタウロスは、毛布に包まれて声を上げる私を見下ろしていた。
そしておもむろに、その片手に持った大きな斧を振り下ろした。
───────
「大丈夫ですか、イーリス?」
聞こえる声にはっと目を開けて顔を上げた。
「ん……」
「あなたが任務中に眠るなど珍しい。少々疲れてしまいましたか?」
馬車の対面席に腰掛けたリーベルトが少し心配そうな顔でこちらを見ていた。
アーカディア領のイーヴルの襲撃に対処したのち、王都へ帰るため予め用意していた馬車に乗り込んだところでどうやら船を漕いでいたらしい。確かに私が任務中に眠るなど珍しい。というか初めての事だった。
彼の言う通り、少し疲れてしまったのかもしれない。だから生まれたばかりの頃の夢など見たのかも。
そして疲れを感じる原因についてはわかっていた。
「ん……平気」
でも、あえてそう答えた。
ここで認めてしまったら、自分の覚悟が軽くなる。
「……あなたに人類の命運がかかっていると言っても過言ではない。無理せず、己を労り大切にしなさい」
「ん。ありがとう」
気遣う素振りを見せるリーベルトに答えてから、気分転換もかねて馬車の窓を開けて外の景色を眺めることにした。
窓を開けると心地よい風が入り込んできて体を滑った 。
体にまとわりついた嫌な気をまとめて持っていってくれるような爽やかな風だった。
馬車の速度はなかなかに速くて、王都へ続く街道沿いの景色が流れるように過ぎ去っていった。
馬車の窓は小さくて、過ぎていった景色を振り返って見ることはできない。まるで過去へは戻ることが出来ないとでも言うように、アーカディア領からぐんぐん離れていく。
自分の抱いた決意を確固たるものにするように、ただ窓から前の景色を見続けた。
そうして馬車に身を委ねてすすむことしばらく、景色の移り変わりが徐々にゆっくりとなり、やがて完全に馬車が停止した。
空間の軋む気配。イーヴルの現出の兆候だった。
「イーリス」
「私がやる。あなたは休んでて」
腰の剣に手をかけて臨戦態勢に入ったリーベルトを制して、立ち上がる。
「大丈夫ですか?疲れているのでは?」
「平気。これが、これからの私の使命。……それにずっと座ってたから、少し体を動かしたい」
「おや、意外も意外……随分と熱心になりましたね。……まあ、喜ばしいことです」
リーベルトがその言葉とは裏腹に、さして驚いた様子もなく言った。
「……まあ、ね」
無性にイーヴルを斬りたかった。
それはきっと使命感などではなく、アーカディア領での一件ーー自分の手で斬り捨てた少年に対する罪悪感からくるものに違いなかった。
リーベルトもそれをわかっていて指摘しないのは、彼なりの気遣いだと思う。
「すぐ終わる」
リーベルトにそう告げてから馬車に安置していた純白の大剣を手に取り外へ出ると、四体のイーヴルが私たちを取り囲むように上空を旋回していた。翼を生やした、鳥と人間を合わせたような姿をしていた。
見たところ全てが下位のイーヴルだった。今は極秘任務のため、街道で派手な攻撃はできない。が、この程度なら討滅するのに数分もかからないだろう。襲ってきたやつから順番に斬っていく。それだけだ。
そう算段をつけていると、イーヴルは獲物が現れたと思ったのか、四体が一度に私に向かって襲いかかってくる。
「グオォオォオ」
正面のイーヴルの爪撃を半歩体をずらして回避、わずかに遅れて右側からイーヴルが翼をうちつけてくる。それを剣で弾き、左側と後方から二体同時に襲ってきたイーヴルの攻撃を回転を加えながらしゃがみこみ避ける。そのまま遠心力を利用して回転しながら大剣を振るう。
円状に振るわれた大剣がイーヴルを薙ぎ払い、四体の怪物を一度に両断した。
本来、イーヴルは体を両断されたくらいではすぐに再生し始めるが、この大剣でつけられた傷口からは再生が起こらず、切り口から侵食されたように塩化が始まり朽ちていった。
わずか数秒で全ての怪物は全身が白く塩化し、粉々に砕け散った。
砕けた塩の欠片が朝焼けの光を受けて輝いていた。その光景が過去の記憶と重なった。
白く輝く塩の欠片が風にさらわれどこかへ運ばれていく様が、私にかつての記憶を思い出させた。
───────
「殺せ」
それが、私が生まれて初めて聞いた言葉だった。
私は何故か、生まれたばかりの頃から自我や意識といったものが芽生えていた。
だから周りの人みんなが顔を引き攣らせながらそう叫んでいたのはわかっていた。
言葉の意味まではよくわからなかったけど、それでも周りの人の表情から、私にとっては良くない意味を持つ言葉なのだろうと思った。
みんながそう声高に叫ぶ中、ひとりだけ私を庇う人がいた。女の人だった。
その女の人が何か言うたび、すぐさま周りの人が大声で罵声を浴びせた。
私を殺すかどうかを話し合っているところだった。
「呪われている」「紅い瞳」「白い髪」「忌み子」「魔の災いが降りかかる」「災厄の門が開く」「神に贄を捧げよ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」
どうやら私は生きていてはいけない存在なようだった。
石を投げつけるようなみんなの声に、女の人はとても辛くて悲しそうな顔をした。
その顔を見て、私は少し胸がちくっとした。
きっとこの人が私のお母さんなんだ。
そう直感した。
「おか……あ、さん……を……いじ、めるな……」
気づけばそう口にしていた。
みんなはぎょっとしていた。
これは後で知ったことだけど、普通は生まれてすぐの赤ちゃんは言葉を話さないらしい。みんなが驚くのも当然だった。
生後数分で言葉を話した私は、さぞかし不気味だったと思う。
そのことが拍車をかけて、私の処遇は決まった。
長い髭を伸ばした男の人の命令で、何人かの男の人がお母さんの腕から強引に私を引き剥がした。
「イーリス!!」
お母さんが叫んだ。
それまで感じていたあたたかさが消えて、ひやりとした感覚に変わった。
きっと、私に対するみんなの態度がそう感じさせたのだと思う。
そうして髭の男とその付き人にどこかに運ばれていった。
しばらく歩くと目的地に着いたようで、皆が立ち止まった。
髭の男は付き人から私を受け取り、私の顔を見下ろして言った。
「忌み子は魔王の呪いを受けし者。災いの兆し。贄として捧げて神のお怒りを鎮めねばならぬ。恨むのなら運命を恨むが良い」
髭の男が言い終わるや否や、突然の浮遊感が私を襲った。
そしてお母さんの悲鳴が聞こえた。
男たちの姿がどんどん小さくなるにつれてお母さんの悲鳴も聞こえなくなっていって、目の前も暗くなっていった。
そこでやっと、自分が落ちていっているのだと気づいた。
でも、無力な私にはもうどうすることも出来ずに闇に呑まれていった。
目が覚めると真っ暗な場所にいた。
どの程度落ちたかわからないけど、私は死んではいなかった。
辺りに目をやるが誰もおらず、そもそも暗闇しか見えなかった。
ときおり聞こえる水滴が地面に落ちて反響する音が、よけいに孤独感を際立たせていた。
どうしようか考えていると、唸り声のような不気味な声が聞こた。
生まれてすぐの無力感故にかなりの不安を覚えていた私は、ついその声に言葉を返してしまった。
「た……す、け……て……」
そう言うと、遠かった唸り声がどんどんこちらに近づいてきて、数十秒の間にあっという間に私が横たわるところまで来た。
姿は見えずともすぐに存在を感じられるほど、とても大きな存在感だった。
心臓が大きく跳ねた。
そいつは様子を伺っているのか、少しの間私に何かすることはなかった。
逃げたかったけど、ひとりで動くことはまだできなかった。
私はただひたすら、待つことしかできなかった。
私は死ぬんだろうか。
そう思うと恐怖が込み上げてきた。
なんとか逃げないと。
体をゆさゆさと揺らしてみるが、今いる場所から移動するには程遠い。
逃げようとしているのを察したのか、私の近くにいる何者かがおもむろに動き出すのを感じた。
闇に慣れてきた私の目に、巨大な怪物が身の丈ほどありそうな斧を振り上げているのが見えた。
やっぱり私は死ぬみたいだった。
──どうして、私なの。
そんな疑問が頭に浮かんだ時、怪物が斧を振り下ろした。
「やめ……て……!」
咄嗟に叫んだ。
すると体から白い光が出て、辺りを照らすのと同時に怪物の体を貫いた。
光に当たった怪物は体の半分から上がなくなっていた。
ズゥンと怪物の体が倒れ落ちて地面が揺れた。
何が起きたのかわからなかったけど、どうやら助かったみたいだった。
でもさっきの光を出したせいかひどく疲れてしまって、私の意識は混濁して刈り取られた。
──どうして、私なの。
謎の場所に落とされてからどのくらい時間が経っただろう。
私の胸はその言葉がぐるぐると回っていた。どうして私が死ななくてはならないのか。どうして私が生贄にならないといけないのか。
呪われているせいなのか。
どうして私は生まれてきたんだろう。
答えのない問いを自分に繰り返し問いかけ続けていた。
穴に落とされてからどのくらい時間が経ったのか、もうわならないくらい時が過ぎた。私は近づいてくる怪物を光で倒しつつ、私はなんとか動くことが出来ないか繰り返し試していた。
最初は上手くいかなかったけど、ずっと練習するうちに体の動かし方がわかってきて、しばらくして立って歩けるようになった。
行動範囲が広がった私は、自らの発する光で暗闇を照らしながら穴の中を進んだ。
幾度となく光を使ったおかげで、最初は一度に使うだけで疲れて眠ってしまっていたのに、今ではずっと使い続けてもまるで疲れなかった。
穴の中は広大で、また怪物の巣窟だった。
私は襲いかかってくる怪物を倒しながら穴を捜索した。
ひたすら歩き回って、下へと続く階段をひたすら降りていった。
本当は上へ行きたかったけど、どれだけ探しても上に向かう階段は見つけられなかった。
下へ続く階段を100回以上は降りたと思う。
最後にたどり着いた場所にはそれ以上、下へと降りる階段はなかった。
ただとても大きな部屋があって、その部屋の一番奥に門があった。
門には文字が刻まれていた。
私はひたすら門の文字を眺めた。
最初は全く読めなかった文字も、ずっと見ているうちに掠れているところ以外はなぜか読むことができるようになった。
「いかい……の……を……こ……に……ふうじ……る」
意味はよくわからなかったけど、文字を読み上げて門に手を触れると、門全体が淡く光った。
外に出られるかもしれない。
外に出たい一心で、開けと念じて門を押し続けると、ゴゴゴ、と石のこすれるような音がして門が開き始めた。
門の中は霧がかかっているように真っ白で先は全く見えなかった。
それでも私は、迷いなくその中に踏み込んだ。
「おかあ……さん……」
無意識に発していた声は霧の中に溶けて消えた。
───────
私は眩しい光に目を細めた。
いつの間に門を抜けたのか、私は見知らぬ野道に立っていた。
空には太陽が登り、あたたかな日差しが降り注いでいた。
穴の中では感じられなかったものに触れて、私は嬉しくなった。
これからどうしようかと考えて、お母さんに会いに行くことにした。
どのくらい時間が経っているかはわからないけど、お母さんに会いたかった。
お母さんも、私が生きてるって知ったら喜んでくれるかな。
道はわからなかったけど、お母さんに会いたい一心で歩いていると、少し栄えた町に出た。
町の入口からすぐのところにはお店が並んでいて、たくさんの人が集まっていた。
生まれてすぐに見た以来の人だった。
少し怖かったけど勇気をだしてお母さんの居場所を聞こうと思い誰かに話しかけようとしたところで、私ははたと気づいた。
あの時、皆は私を殺したがっていたのだ。
いま話しかけても果たして大丈夫だという保証はない。
少し様子を見た方が良さそうだと考え直し、その場を去ろうとして。
「きゃああああああ!!!」
甲高い悲鳴が空気を切り裂くように響いた。
近くを歩いていた女の人が、私を見てあげた悲鳴だった。
それを聞きつけて、周りにはすぐに人だかりができた。
「お、おい……あいつ、まさか……」
「ばかな……そんなはずは……」
「いや、あの瞳と髪……間違いない……!忌み子っ!忌み子がいるぞっ!!」
ひとりが言い出すと、事態が激化するのはすぐだった。私が帰ってきたという話はすぐに広がり、やがてひとりの男が駆け寄ってきた。
「あ、ああ……!なんということだ……!お前……なんてことをしてくれたんだ!!」
私を穴に落とした髭の男だった。
彼はこちらを見るなり、大声で怒鳴り散らした。
「い、いますぐ!いますぐ殺さねばならん……!ふりかかるっ……!災いがっ…!」
「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ」「殺せ「」「殺せ」
あの時と同じだった。
恐れ。憎しみ。怒り。
そう言った負の感情がその場に渦巻いていた。
狂気に支配された人々が、手に持った荷物や石を拾って私に投げつけてくる。
穴の怪物の動きに比べればひどくゆっくりとしていて緩慢だったけど私は避けなかった。
投げつけられたものがいくつか私の顔や体にあたった。
穴の中の怪物の攻撃に比べればまるで虫のような威力だった。
でも何故か痛かった。
「今すぐ、儀式を始めねば……」
髭の男の言葉に重なるように、町の近くの森から黒い光が立ち上った。
そして、空が割れた。
青い空にヒビが入り、血のような赤いシミが空中に広がっていく。
そしてそのヒビの向こうから、穴の中でも見た事のない怪物たちが姿を現した。
「い、いかん……封印が……災いが解き放たれーー」
髭の男の首が飛んだ。
体が倒れ、首がごとりと地面に落ちてころころ転がった。
それからは惨劇だった。
空から現れた怪物たちが町を蹂躙して人々を殺した。
どさり。
私の足元に誰かが倒れた。
「お前の……せいで……」
そう言って男は死んだ。
「私の……せい……?」
私のせい。
私が死にたくないと思ったから?
私がお母さんに会いたいと思ったから?
私が穴の中で門を開いたから?
私が生きてるから?
私が……。
どうして、私なの?
同じ問いが私の中で暴れ回り、爆発した。
自分の体から、怪物を倒す時に使うのと同じような光が立ち上った。
でも、光の強さはそれの比ではなかった。
立ち上った光が天を衝いて空を割った。
割れた空の中には、門の中で見たような霧が立ち込めていた。そして、その中から何かが出てくるのが見えた。
ズドォン!!
白い軌跡が見えたと思った次の瞬間、目の前の地面に純白の大剣が突き刺さっていた。
大剣が発光し、剣の刺さった地面が白く変色した。その侵食は町の人も、死体も、怪物も関係なく呑み込んだ。
再度、剣が強い光を放ち、町中を包んだ。
光が晴れた時、そこには怪物たちの姿もなく、私以外の全てのものが白い何かに変貌していた。
なぜ自分だけが無事なのかはわからない。
私は変貌した町をさ迷い歩いた。
白い地面に同化するように、白く変貌した人の体が横たわっている。
町を歩くうち、私はひとりのそれを見つけた。
「おかあさん……」
呼んでみたけど、お母さんは私の言葉に答えてはくれなかった。
手を伸ばして触れようとしたところで、強い風が吹いてお母さんの体が倒れてバラバラになってしまった。
風にさらわれてぱらぱらと崩れていくお母さんの体を前に、私は立ち尽くしていた。
どのくらいそうしていたのか、私はお母さんだったもの前から立ち去り、再び剣の前に戻った。
剣の前に座り込み、剣に持たれて目を瞑った。
そうして私の意識は白い霧に包まれるように途切れた。
───────
次に目を覚ますと、知らない人たちが大勢いた。
私が立ち上がると、それに気づいた人がひとり、私のところまで歩いてきた。
「あなたが唯一の生き残りですか」
男の人だった。
「……う、ん」
「このような体験をして心中お察ししますが、あなたにはいくつか伝えないといけないことがあります」
「なに……」
「あなたは今代の勇者です。あなたには世界を守る剣となり、盾となってもらいます」
「そう……」
「随分とあっさりですね。何か異論や異議はないのですか?」
「……わたしは、何も……感じちゃ、いけ……な、い」
「そう……ですか。なら、あなたは道具に徹すると良い。そうすれば……少しは気も紛れるかもしれません」
「どう、ぐ……」
「ええ。世界を守るために、戦ってもらいます。まずは、私たちと共に行きましょう。色々と、ご説明しますよ」
「わかっ、た」
「では、行きましょうか。ああ……そう言えば名前をきいていませんでしたね。私は星神教会所属 異端審問官七位 リーベルト・シュタインです。あなたのお名前は?」
「イーリス……」
ちらりと大剣に目をやり手を触れると、剣がわずかに発光した。
「イーリス・リィン、フレーゼ……」
町を滅ぼすことになった大剣の名前。
私の過ちを忘れないように、己の名前とする。
「……強く美しい響きですね。あなたはきっと……強い勇者になりますよ」
「そう……。もう、いこ、う……」
「……ええ。では、まずは教会本部まで行きましょうか」
そうして私は勇者として星神教会に身を寄せることになった。
私が生まれてから3年目のことだった。
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