嫌われ ライバル関係だったのに 消えたら執着されてお持ち帰りされた話

やまくる実

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2.気がついた時は遅かった【アルバード視点】

 俺は生まれた時からある程度恵まれていた。
 生きてく上で金銭的にも人間関係にも苦労していない。

 公爵家の三男に生まれ家を継ぐのも兄上と決まっている。

 だけど自分の周りは恵まれている、そう思ってはいたが、皆、よくよく見てみると自分の事だけを考えていたり欲にまみれている者達ばかりが目についた。


 気がつくと自分も上手く立ち回ろうと笑ってばかりいる様になり、自分が得をするように上手く立ち回ることばかりを覚える様になった。

 昔から随分と冷めた子供だったと自分でも思う。


 まあ、誰とでも当たり障りなく接していた事が幸いしてか俺は周りから好かれていた。


 俺の知っている範囲では俺に負の感情を向けているものはいなかったと思う。

 だからと言ってそれが幸せかと言ったらそういう訳でもなく、俺は毎日が退屈だった。
 そう、毎日が面白くなかった。


 恵まれているだろう、誰もが俺に成り代わりたいと思うだろう。

 だけど笑ってはいても心が冷めていた俺は、これが一番好きとか興味があるとかそういう感情が浮かぶ事自体が少なかった。


 勇者育成の為の学院に入ったのはたんなる気まぐれだった。
 別に将来は決まっていなくても俺はある程度能力がたけていたし成ろうと思えば何にでも成れたと思う。


 ある意味何にでも成れたから将来について悩んでいたとでも言えようか……。

 能力の近いもの同士の方が学友も増える。平民や色々な身分のものの考えや価値観を学ぶ事も大事と言う両親の勧めに流されるままに、この学院に入学を決めた。



 アイツの事は同じクラスになってからずっと気になっていた。

 そもそもそれは俺にとってとても珍しい変化だった。
 その自分の変化に戸惑ってはいたものの、初めはあまり気にせず他のもの達と同じように接した。

 アイツは少し不器用だった。

 能力は俺と同じでとても高い。

 学力も運動能力も優れている。
 不器用というのは人間関係についてだ。

 アイツは俺と逆で表情があまり顔に出ない。

 少し吊り目で表情がないから何を考えているか分からない。

 そんなアイツだから周りにあまり人はいない様だった。


 初めアイツの事が気になったのも、アイツが俺と他者を差別化しなかったからだ。

 俺の周りには俺に対して媚を売る奴が多い。

 そりゃそうだ。
 俺と仲良くなれば得しかないのだから。

 そんな中、アイツだけは俺に対してと他者に対しての態度が変わらなかった。

 それが俺の中で違和感となり自然とアイツをみる様になった。

 アイツに注目してみると、アイツがお人好しだということが分かった。
 表情なくあまり人と関わらない様にしているからか気づかれにくいが、アイツは皆がやりたがらない事を進んでやっている様だった。

 それは周りに気づかれない所で行っていたし、やったことに対してアイツは対価を求めていない様だった。


 その事実を知った時、こんな奴がいたのかと俺自身が衝撃を受け戸惑っていた。


 その日から俺の中で奴が特別となった。

 だけどそんな風に俺が思っているのに、奴は俺と他者を同じ様に思っている事が俺はだんだん許せなくなってきていた。


 俺は俺自身が今まで誰かの事を意識したことがなかった。

 特別を作った事がなかった俺はそれが何を意味するのかということすら気づいていなかった。



 俺はアイツに俺を意識させたいと思った。
 俺は元々他者よりは優れていたがアイツに俺を意識させるにはそれ以上に頑張らなくてはならない。

 なぜならアイツの能力も優れているから……。

 そんな風に切磋琢磨していたらいつの間にか俺とアイツが今年の勇者候補と言われる様になった。

 だけどアイツはまだ俺を特別と思っていない。

 それより最近は避ける様にもなってきたように思う。

 俺自身も他の奴には普通に良い顔をできるのにアイツの前でだけ上手く笑えなくなった。


 ウチの学院は圧倒的に男性の方が多いが中には能力のたけた女性も数人いた。

 アイツ以外、興味が持てない俺だったが思春期というのもあって女には興味があった。
 それは女個人とかそういう事ではなく、性欲を発散することで自分の中にあるイライラも発散できないかと思ったんだ。


 クラスの奴らと人気のある女の話をする。
 その女の話は本当に何気なく話していたんだ。
 だけどクラスの奴らにその女はアイツに惚れているという話を聞いて、なぜだか分からないが、いつも以上に無性に腹が立った。


 俺はその時、勘違いしていた。

 自分の好きになった女がアイツに惚れたから、それで無性に腹が立つのだと……。
 男は普通、女に惚れる者だという常識が俺自身を誤解させた。


 それは今、思い返せば俺以外にアイツの良さに気がついたことの焦りだったり、思うように自分の気持ちが伝えられない事へのもどかしさからだったのに、その事に気がついたのは、アイツが、シュウが俺の前からいなくなってしまってからだった。






 
 
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