上 下
68 / 131

第68話 俺の声が届くなら(ホロ視点)

しおりを挟む
 
 足だけが黒い白猫、そいつの考えていることが頭の中に一気に流れてくる。


 

 
 何だかコイツの考えを、話を聞いていると、俺が雪を……。  
 こんな姿になってしまっても、雪の事が忘れられない。

 言葉も通じない。

 どんなに思っても伝わらない。


 分かっていても諦めきれない。


 そんな思いとコイツの思いが重なって、俺自体も胸がツーンと痛くなった。


 

 
 おい、なんでお前はミーちゃんが死んでしまっていると思っているんだ。


 

 
 ココにいるじゃねーか。


 なんで気づかないんだよ。

 




 
 ミーちゃんを見ると、物陰に隠れる様に縮こまっている。


 

 

 
「ニャ―ナンニャ(オヤブンさん、また来てる。まだ私の事を思ってくれているの? だけど、こんな姿じゃ逢えるわけない。逢ったって嫌われるだけよ)」


 

 
 ミーはボソッと呟いた。


 
 その声は切なくなるような、諦めてしまったような小さな声だった。


 

 
 諦めるなよ!


 

 
 俺はそう叫びたかった。


 

 
 こんな、側に。

 ココに居るのに。


 

 
 逢えるのに。


 

 
 認識してもらえるのに。


 

 
 俺はもどかしくてどうにかなりそうだった。


 ゴロゴロと暴れまわりたいくらいだが、そんな事しても伝わる訳もない。


 

 
 それに、ミーちゃん達と、俺と雪の事とは一緒にできる内容ではない。


 
 ミーは傷ついている。


 
 恐がっている。


 

 
 分かっているけど俺はもどかしくて仕方がなかった。


 

 
 俺は、こんな俺だけど、どうにかしてこいつらを逢わせてやりたくなった。


 
 それにミーが自信を取り戻すことで、どうにか前みたいに明るいミーに戻れるんじゃないかそう思った。


 

 
 こいつの声が俺の頭に届く。


 
 俺は窓の向こうの足だけが黒い白猫と目が合った。


 

 
 俺のパワーがどれくらい育っているのか分からない。


 
 俺自体、いったい何ができるか分からないし、そもそもどうしてこんなことが出来るかも分からない。

 だけどココは夢の世界じゃない。


 

 
 現実世界だ。


 
 だけど確かにアイツの心の声が聞こえる。


 もしかして俺の声もアイツに聞こえるんじゃないだろうか?
 
 試してみない手はない。



 そう思った俺はアイツに、足だけが黒い白猫のアイツに語りかけた。


 
 聞えないかもしれない。

 だけどもしかしたら、聞こえるかもしれない。


 

 

 
『アナタはミーちゃんの事を知っているのかい?

ミーちゃんを大事に思っているかい?』


 

 

 
 俺はそう念じながら語りかけた。


 
『なんだ? 俺はおかしくなってしまったのか? 俺の頭に勝手に喋りかけてくるオマエは誰だ? お前はミーの事を知っているのか? なんだろうな、チビ白猫、なんでお前はこんなことが出来る? なんで離れているのに俺はお前と会話ができるんだ?』


 

 
 通じた。


 

 
 足だけが黒い白猫は俺の質問には全然答えてくれなかったが俺の声が届いていることが分かった。



 もしかしたら、コイツに俺の声が届くならコイツとミーちゃんを逢わせる事ができるかもしれない。


 俺はそう思った。
しおりを挟む

処理中です...