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第77話 温かい温もりに包まれて。夢? まさかの現実。(ホロ視点)
しおりを挟む温かい、心地良いリズムに揺れていた。
身体が少しだけ揺れている感じがするのに、優しい温もりに包まれて居るみたいだ。
母親の腹の中にいる様な、そんな安心感が俺の中で広がっていた。
トクン、トクンと、規則正しい心音がすぐ近くで聞こえる。
そして、この香り、昔、良く嗅いでいた。
それは仕事に疲れてソファーで横になっている時、又はベッドの中で。
シャンプー、ボディソープ、そして何だか甘くて柔らかい。
仕事の疲れなんか、何処かに飛んでいってしまう様な心地よさ。
柔らかい?
この、柔らかい感触。
俺の大好きだった感触だ。
何だか、まだ頭は半分眠っていたが、懐かしい、安心する様な香りに包まれて俺は白昼夢を見ている、そんな気がしていた。
『辰君?』
甘い、優しい雪の声。
答えようとするけど、そうだ。
雪が近くにいる訳がない。
これは夢なんだ。
そう自分に言い聞かせた。
夢ぐらい好きに喋らせてくれたら良いのに上手く声が出ない。
夢の中の雪の顔が、間近まで近づく。
雪の柔らかそうなマシュマロみたいな頬、薄ピンクの柔らかそうな唇が目の前に迫る。
『にゃき......(雪......)』
うーん、やっと声が出たのに、良いシーンで上手く声が出なかった。
気を取り直して、もう一回。
雪の柔らかそうな唇が、もうちょっとで触れると思った瞬間、目の前に幸太郎のドアップがあり、びっくりして吹き出しそうになった。
と同時に、耳元で幸太郎の声が聞こえて眠りから呼び起こされた。
「雪さん! ああ、ホロ、ホロちゃん!心配したよ。何処も怪我してない? 大丈夫か?」
ん?
そっと片目を開けると雪に俺は持ち上げられていた。
どういう事だ?
雪だ。
雪が、目の前にいる。
頭ははっきりしていないが、この雪は夢の中の雪かもしれないが、俺はまだ雪の温もりに包まれて居たくて雪の服に爪をひっかけた。
だけど、子猫な俺は非力だ。
あっという間に幸太郎の胸の中だった。
まあ、幸太郎に抱かれるのも、慣れたものだ。
ここだけ聞くとかなり怪しく聞こえるな。
俺は子猫だ。
幸太郎に抱き抱えられているだけなんだぞ。
何だかやっと頭がはっきりして来たぞ。
そ、そうかコレは現実なんだな。
と、いう事は本物の雪?
し、しまった。
せ、折角の雪との時間、なんで俺は寝ちまってたんだよ。
くそう。
この姿は何だか無性に眠くなるんだよな。
俺がこんなにぐてぐでなのも、この姿になってからだから。
本来俺は働き者だから。
って俺は誰に説明しているんだ。
そんな風に考えていたら雪がどうも幸太郎の部屋に上がることになったらしい。
雪が帰ってしまって、また会えなくなるのは嫌だけど、複雑だな。
幸太郎、も、もし、雪に手を出しでもしたなら、引っ掻いてやるからな!
あんまり爪はないけど......。
と、とにかく承知しないぞ!
それにしても雪、無防備すぎやしないか?
心配になる。
幸太郎に抱えられながら、後ろからくる雪を盗み見る。
輪廻転生って、そんなに早くあるものなのか?
雪、変わってなさすぎるんだが、今って何年なんだ?
今度、新聞かテレビのニュースを盗み見るか?
だけど、そう言えば幸太郎、新聞取ってなかったな。
何が言いたいかって言うと、雪が変わらず可愛いって事なんだよ。
まあ仕事帰りだから、髪はちょっとヘニャってしてるけど、ちょっと後ろの方のアホ毛がまた可愛いんだよな。
まあ俺の目からはアホ毛はまだ見えないけど、仕事帰りは大体そうだったんだよな。
懐かしいな......。
俺は幸太郎に抱えられたまま、後ろから入ってきている雪を気にしていた。
部屋のソファーではデンとプディが横になっていて、デンはまだぐっすり眠っているようだったが珍しくプディも寝起きなのか、眠そうな目のまま、顔を上げた。
俺はプディの隣に下され、いつもなら普通にプディの隣に座るが、なんだか目の前に雪がいるからか、少し複雑で俺はすぐ、ソファーから下りた。
プディがすぐに話しかけてくるかと思ったが、プディは警戒する様に雪の顔を見ていた。
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