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第104話 幸太郎、残念だったな?(ホロ視点)
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俺を皆が囲んでいる。
比奈が俺やプディを見ながら笑っていて、それを見ながら幸太郎も笑っている。
その時、そのさらに向こうにいた雪が何かを言いたそうにしている事に俺は気がついた。
「あの......」
言い出しにくそうに雪が幸太郎に声をかけた。
俺達を見ていた幸太郎が気まずそうに振り返った。
「どうしましたか?」
「早速なのですが、ご飯を作らせて貰って良いですか?」
意を決したかの様にそう言ってバッグからエプロンを取り出し、雪が立ち上がった。
俺、つられてプディもデンも雪の方を見る。
へっ? いきなり雪、何言ってんの?
小さなバッグと袋一つしか雪は持っていないみたいだったのに、りょ、料理をするのか?
ほら、幸太郎もそんな事を言うからびっくりして戸惑っているみたいだぞ?
幸太郎、チラチラと比奈の表情を気にしているみたいだな。
それにしても、幸太郎が食材は買って用意していたんだろうか?
だけどそれにしては幸太郎、驚いているな、なんか表情も固まってしまっているし、雪と会話する度に比奈を気にしている様にも見える。
雪から料理を作ってもらうというのに、なんか鼻の下も伸びていない。
逆に焦っている様にも見える。
奥さんに浮気を隠そうと誤魔化している亭主の様だ。
そう言えば雪から幸太郎に来ていたメールにご飯を作りたいって書いてあったな。
雪が幸太郎に案内されてキッチンに向かっている。
雪は緊張した表情で歩き方もぎこちない。
も、もしかして雪、幸太郎に本気なのか?
お、俺がココにいる事も、やっぱり分かっていないのか?
比奈も、さぞかし、びっくりした顔をしているかと思ったけど落ち着いていて、デンの頭を撫でながら毛の感触を楽しんでいる様だった。
ど、どういう事なんだ?
おい、比奈、しっかりしてないと、雪に幸太郎を持っていかれるぞ?
俺は落ち着いている様に見えるかもしれないが内心はかなり慌てていた。
と言うか心が全然追いついてなかった。
ちょっと前まで、雪の気持ちは自分にまだ向いていると思い込んでいたんだ。
だけど、そうだよな......。
雪だっていつまでも死んでしまった俺の事なんて考えていないだろうし、覚えてもいないよな?
幸太郎みたいな男が好みだとは聞いた事なかったし、そんな事、聞きたくもないが、俺も現実を見つめる必要があるだろうか......。
やはり昨夜の不思議な現象は俺の、夢、もしくは妄想それか願望からの幻聴なんだ。
もう、俺、ふて寝しよう。
すっかり落ち込んだ俺はまだ誰も座っていないソファーに飛び乗って、身体を伸ばした。
俺の横にプディもヒョイッと身軽に飛び乗り、近くまで寄ってきた。
「ニャンニャ? ニャニャニョン?(どうしたの? 元気ないわね?) 」
軽く首を傾げて言うプディは可愛らしい。
俺も、もう猫なんだ。
雪の事も忘れる努力をして猫としてしっかり生きた方が良いかもしれない。
拗ねてそんな風に考えたりもしたが、やっぱり無理だ。
雪を忘れるなんて無理だ。
も、もし幸太郎と雪が上手くいったとしたら、ひょっとして雪と一緒に暮らす夢が叶うんじゃないか?
ま、待てよ。
だけど、そうなったら目の前で幸太郎と雪のイチャつきを見るハメになる。
そんなの耐えられるはずない。
考えすぎて頭がハゲそうになっていた時、能天気な声が響く。
「出来ました!」
そう言いながら雪が幸太郎とキッチンから戻ってきた。
雪が運んできたのは俺の皿、そしてプディとデンにも。
ゆ、雪が作っていたのは俺達のご飯?
「ホロちゃん、どうぞ召し上がれ」
雪がソファーの前に俺の皿を置く、いつのまに俺の皿も持っていってたんだ? 俺がふて寝しながらウダウダ考えていた時か?
いや、他にも洗い換えの別の皿があったんだな......。
お、俺のご飯だったの?
顔の筋肉が緩んでくる。
う、嬉しい。
俺もソファーから下りて雪が用意してくれた、キャットフードと、なんだろう? 野菜か何か入っているのか? の目の前まで歩く。
すごく良い匂いがする。
俺はご飯皿の前に引き寄せられ、チラッと雪を見た。
雪が柔らかく笑い、俺の心はほわっと舞い上がった。
ゆ、雪、俺、まだ雪の事、好きでいても良いかな?
いいよ? と言う声が聞こえてくる様に雪が笑う。
ちょっといつもより、キャットフードの量が少ないかな?
まあ、いいや。
えっと、いただきます。
食べようとしたその時、隣からガツガツした音が聞こえて目線をそちらに向けると、デンがすごい勢いで、雪特製、ドックフードを食べていた。
プディもその隣に来て、ゆっくりと食べ始めている。
プディは雪を警戒するかの様にチラチラと雪を見ながら少しづつ食べている様だった。
俺も食べよう、急がないとまたデンから食べている所を見つめられ、ヨダレを落とされる。
幸太郎、残念だったな?
雪は猫な俺に夢中みたいだ。
なーんつって。
食べながらそんな事を思っていた俺だったが、実際、心底ほっとしていた。
比奈が俺やプディを見ながら笑っていて、それを見ながら幸太郎も笑っている。
その時、そのさらに向こうにいた雪が何かを言いたそうにしている事に俺は気がついた。
「あの......」
言い出しにくそうに雪が幸太郎に声をかけた。
俺達を見ていた幸太郎が気まずそうに振り返った。
「どうしましたか?」
「早速なのですが、ご飯を作らせて貰って良いですか?」
意を決したかの様にそう言ってバッグからエプロンを取り出し、雪が立ち上がった。
俺、つられてプディもデンも雪の方を見る。
へっ? いきなり雪、何言ってんの?
小さなバッグと袋一つしか雪は持っていないみたいだったのに、りょ、料理をするのか?
ほら、幸太郎もそんな事を言うからびっくりして戸惑っているみたいだぞ?
幸太郎、チラチラと比奈の表情を気にしているみたいだな。
それにしても、幸太郎が食材は買って用意していたんだろうか?
だけどそれにしては幸太郎、驚いているな、なんか表情も固まってしまっているし、雪と会話する度に比奈を気にしている様にも見える。
雪から料理を作ってもらうというのに、なんか鼻の下も伸びていない。
逆に焦っている様にも見える。
奥さんに浮気を隠そうと誤魔化している亭主の様だ。
そう言えば雪から幸太郎に来ていたメールにご飯を作りたいって書いてあったな。
雪が幸太郎に案内されてキッチンに向かっている。
雪は緊張した表情で歩き方もぎこちない。
も、もしかして雪、幸太郎に本気なのか?
お、俺がココにいる事も、やっぱり分かっていないのか?
比奈も、さぞかし、びっくりした顔をしているかと思ったけど落ち着いていて、デンの頭を撫でながら毛の感触を楽しんでいる様だった。
ど、どういう事なんだ?
おい、比奈、しっかりしてないと、雪に幸太郎を持っていかれるぞ?
俺は落ち着いている様に見えるかもしれないが内心はかなり慌てていた。
と言うか心が全然追いついてなかった。
ちょっと前まで、雪の気持ちは自分にまだ向いていると思い込んでいたんだ。
だけど、そうだよな......。
雪だっていつまでも死んでしまった俺の事なんて考えていないだろうし、覚えてもいないよな?
幸太郎みたいな男が好みだとは聞いた事なかったし、そんな事、聞きたくもないが、俺も現実を見つめる必要があるだろうか......。
やはり昨夜の不思議な現象は俺の、夢、もしくは妄想それか願望からの幻聴なんだ。
もう、俺、ふて寝しよう。
すっかり落ち込んだ俺はまだ誰も座っていないソファーに飛び乗って、身体を伸ばした。
俺の横にプディもヒョイッと身軽に飛び乗り、近くまで寄ってきた。
「ニャンニャ? ニャニャニョン?(どうしたの? 元気ないわね?) 」
軽く首を傾げて言うプディは可愛らしい。
俺も、もう猫なんだ。
雪の事も忘れる努力をして猫としてしっかり生きた方が良いかもしれない。
拗ねてそんな風に考えたりもしたが、やっぱり無理だ。
雪を忘れるなんて無理だ。
も、もし幸太郎と雪が上手くいったとしたら、ひょっとして雪と一緒に暮らす夢が叶うんじゃないか?
ま、待てよ。
だけど、そうなったら目の前で幸太郎と雪のイチャつきを見るハメになる。
そんなの耐えられるはずない。
考えすぎて頭がハゲそうになっていた時、能天気な声が響く。
「出来ました!」
そう言いながら雪が幸太郎とキッチンから戻ってきた。
雪が運んできたのは俺の皿、そしてプディとデンにも。
ゆ、雪が作っていたのは俺達のご飯?
「ホロちゃん、どうぞ召し上がれ」
雪がソファーの前に俺の皿を置く、いつのまに俺の皿も持っていってたんだ? 俺がふて寝しながらウダウダ考えていた時か?
いや、他にも洗い換えの別の皿があったんだな......。
お、俺のご飯だったの?
顔の筋肉が緩んでくる。
う、嬉しい。
俺もソファーから下りて雪が用意してくれた、キャットフードと、なんだろう? 野菜か何か入っているのか? の目の前まで歩く。
すごく良い匂いがする。
俺はご飯皿の前に引き寄せられ、チラッと雪を見た。
雪が柔らかく笑い、俺の心はほわっと舞い上がった。
ゆ、雪、俺、まだ雪の事、好きでいても良いかな?
いいよ? と言う声が聞こえてくる様に雪が笑う。
ちょっといつもより、キャットフードの量が少ないかな?
まあ、いいや。
えっと、いただきます。
食べようとしたその時、隣からガツガツした音が聞こえて目線をそちらに向けると、デンがすごい勢いで、雪特製、ドックフードを食べていた。
プディもその隣に来て、ゆっくりと食べ始めている。
プディは雪を警戒するかの様にチラチラと雪を見ながら少しづつ食べている様だった。
俺も食べよう、急がないとまたデンから食べている所を見つめられ、ヨダレを落とされる。
幸太郎、残念だったな?
雪は猫な俺に夢中みたいだ。
なーんつって。
食べながらそんな事を思っていた俺だったが、実際、心底ほっとしていた。
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