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第120話 今回の夢の人物は(ホロ視点)

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 久しぶりの空間。

 冷たい様な肌寒い気温。
 だけど身体は指の先までポカポカというかジンジンというか熱い気がして不思議な感覚がある。

 そして目の前にはあのリアルな『猫の目』の画面があった。

 しかし、なんだか目の前の光景。
 自分の目線、感覚。
 全てがいつもと違った気がした。

 胸から何か込み上げてくるかの様に懐かしいと思った。

 『猫の目』の画面は、前見た夢をまたさらにリアルにした様に成長している様にも見える感じなのだか、その他も前はもっと、この空間での光景がさっぱりしていた。

 それにもっと色が少なかった様に思う。

 『猫の目』の画面の中に入ると色が多少なりともついてくるみたいな感じだったが、この夢の中は初めから、夢ではないかの様にカラーで、そして、ココはどこかの部屋の様だった。

 部屋の中に大きな立体になっている『猫の目』の画面がある。
 そんな感じだ。

 今回の画面は前回とは違って一つだ。

 今回の救いを求めている人物は一人という事なのかな?

 少しだけホッとしている自分がいた。

 
 最近は雪の事でいっぱいいっぱいだったから正直、他の人を助けている余裕はない。

 だけど、この夢は、雪やプディ達の星に何か関係がある気もしていて、それならば、嫌でも、余裕がなくても、受け入れる必要がある。
 




 それにしても、前回は画面が二つだったのに今回は一つか......。




 前回は夢の中だけで解決出来なかったから能力が後退したという事だろうか?

 いや、それも違う気がするんだが......。
 




 そして、先程も言ったが、おかしな違和感。

 それは目線の高さ。
 後、立っている感覚。


 俺は顔を少し下に下げた。
 そして、目に入ってきたモノに驚きを隠せなかった。

 いつもなら自分のフワフワの白いちっちゃい前足があるはずなのに......。

 そこにあったのは俺の、俺自身の人間としての掌だった。



 俺、久しぶりに人間になっている夢を見ているのか?


 しかも、この『猫の目』の画面......。



 『猫の目』の画面に目線を移した俺はまた注意深くその画面を観察した。


 まだ画面は灰色のままだ。
 灰色と言うか猫の眼球の様にリアルな作りなので、灰色と言うより水色と言った方が良いかもしれない。



 いつもの、ホロ(白い子猫)の姿のままなら、まだ誰かを救う為の夢は始まっていない。

 その人物がまだ眠っていないと言う事だ。



 この夢がその夢ならば、俺はミーちゃんの事でのお嫁さんやおばあさんの夢以来で、久しぶりだった。




 どうして、俺、人間の姿、なんだろうか?

 もう一度、自分の掌を、顔の目の前まで上げて見つめた。

 しかも、俺の掌、ちょっと小さくなった気がする......。

 猫の目線はかなり低いが、この目線も、辰也の時の目線とかなり違う気がした。

 雪から飲まされた抑制剤っていうのが関係しているんだろうか?


 俺は何となく後ろを振り返るとそこには大きな姿見があり、そこに写っていた自分を見て驚きを隠せなかった。

 そこに写っていたのは、小学生くらいの時の辰也の姿だった。

 足も肩も、何処もかしこも小さい。

 小さな掌でそっと自分の頬を触る。
 丸っこくて柔らかい。


 そして目の前の画面に色がつき、対象者の夢が始まった。


 目の前に写っている、俺と同い年ぐらいの男の子、身長は、この小学生の俺より、少し高いくらいだろうか?


 眼鏡をかけている、その男の子、なんだか見覚えがある気がした。


 夢の中にいるおばあさんがその男の子に声をかけた。
『幸太郎、幸太郎はそこにいるのかい?』

『うん』

 そう、ぶっきらぼうに答えながらその男の子がおばあさんの方を振り返った。

 幸太郎?

 えっ......。
 

 そう言えば面影がある。


 この夢は幸太郎の夢か?


 幸太郎も何か救いを求めているのか?


 それに、今回は何故俺は、この、辰也の姿なんだろう?


 俺は意味が分からなくて画面の中の小学生の姿の幸太郎を見つめていた。

 
 
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