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第四章 魔王VS勇者 (片想い相手に似た男VS推しキャラに似た男)
第31話 今は興奮する様な場面じゃないのに! (ショウ視点)
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一つ思い出し始めると、芋づる式に前世の記憶が鮮明になってくる。
金髪、腰にクル低いイイ声。
顔をうずめたくなる逞しい背中、二次元だった人物にどうしてここまで似ているのか……、あの時の記憶が戻ってきて、身体が熱くなってしまう。
そんな俺の気も知らず俺の施術にリュウは低い良い声をあげる。
その声は微かなのだが俺の心拍数を上げるには充分だった。
幼馴染相手に俺は何を興奮しているんだ。
集中するんだ俺。
「ショウ、手紙の事はもういい、本当は良くないけど……元気にしていたのか? なぜそんなに痩せているんだ。背も伸びていない。顔も細くなった気がするし、昔はもっと健康的な肌色だった気がする」
「ええと、そうかな? まあ確かに体型はあの頃とあまり変わっていないかな、別に病気な訳じゃないから」
リュウが昔のリュウに戻ったみたいに優しく声をかけてくれる。
そう、リュウは本当はとても優しいんだ。
だから再会時の怒った顔は怖かったし、知らない人みたいに思ってしまったんだ。
声のトーンが優しくなったリュウに動揺していた俺も少しずつ落ち着いてきた。
うん、大丈夫だ。リュウだ。やっぱり、推しとは全然違う。
リュウとボソボソと話しながら俺は丁寧にリュウの体に触れていく。
ゆっくりと圧をかけながら、俺は施術に集中する。
リュウの身体はすごく硬かった。
これは魔力もアースさんが言っていたみたいに一定の場所に偏っているのかもしれない。
俺は実際魔力の流れは見えないが、なんとなくその魔力が偏ってしまっている部分を感じ取れる気がした。
魔力が体の中の一箇所に溜まり偏るとかなり痛いしイラダチも大きくなり、下手したら日常生活に異常をきたす事もあるそうだ……。
本当は俺よりも魔力の流れが見えるアースさんが施術した方がリュウには良いんだろうな……。
「リュウは元気だった? 勇者ってどんな者だか俺には分からないけど、大変なんだろ? 訓練とか厳しそうだ……」
「別に……」
そう言いながらもリュウは何か考えているのか、口数が少なくなった。
昔はどんなことも俺に話してきたのにな……、だけどそうだよな……勇者って言ったら秘密もいっぱいありそうだ。俺なんかに簡単に話せる内容じゃないよな……。
リュウのイイ身体を見て好みの顔で見つめられて、変な気を起こしてしまいそうだと思っていたけど……しゃべったら昔のリュウとそんなに変わっていなかった。
良かった。
ちゃんとリュウの事もお客様として対応できる。
前世の俺、お願いだから引っ込んでいてくれよ。
リュウに俺はもう幼馴染として見られていないと思い込んでいた。
だけど実際は……リュウは俺に手紙をくれていたらしいし、会いたいとも思ってくれていた。
俺の健康も気遣ってくれている。
それだけでも、嬉しいし、これからも、知り合いとしてもお客様と店員としても親しくしていきたい。
別に幼なじみに戻れなくても支障はない。
勇者として、今は忙しい生活を送っているのだろう。
心配させたくないし、迷惑もかけたくない。
だから、こんな風に思ってくれているリュウに俺の現状は話せない。
それにだ、俺は今、こうして働く場所も手に入ったし給料日にはお金を頂くこともできる。
この髪色ならばこの街に住む事も可能かもしれない。
この街は住まいを契約するのも簡単にできる。
黒髪だったあの頃の俺は、あの洞窟で身を隠すしかなかったのだけれど……。
多分アースさんに相談すれば、すぐに引っ越す事も可能だろう。
もしかしたら2階に住んだら良いとでも言ってくれそうな気さえする。
だけど……もし、タイアンさんとまた逢えるとしたら……逢えるかもしれないのはあの洞窟だけだ……。
俺はタイアンさんの居場所を知らないし、逢えるとしたらタイアンさんが気まぐれに俺の住まいである洞窟を訪ねてくるしかないのだから……。
「病気じゃないにしても痩せすぎだ。ちゃんと食べているのか? 今日は訓練を抜けてきているんだけど、なんか食いたいもんあるか? 次来る時にでも持ってくるよ」
「良いよ。別に。リュウ、忙しいなら無理に来なくても良いよ。俺はなんとか生きてる。こうして仕事も見つかった。リュウはリュウの道を歩いたら良いんだ。俺の事は気にしないで……」
そう俺が言い終えた所でリュウが起き上がったと思ったらリュウの身体の下に組み引かれていた。
目の前にリュウの金髪、綺麗な切長な二重瞼の目、美形を絵に書いた様な端正な顔が冷めた様な冷たい目で俺を見下ろしていた。
美形の無表情は更に怖い。
だけど、本当に綺麗だ。
無表情だと更に推しにそっくりだ。
そんな風にリュウの顔に見惚れていた俺は抵抗する事を忘れていた。
「やはり、お前は俺から離れようとしていたのか? この髪色はなんだ? 逃げられると思うなよ?」
低い声、先程の甘みを含んだ声じゃない。
リュウが怒っている。
そして怖いと思いながらもリュウの冷たい何を考えているんだか分からない無表情に怒りが垣間見える低い声に、何故だか興奮してしまっている自分がいた。
前世の俺、引っ込んでいてくれよ。
今は興奮するような場面じゃないんだ!
リュウは俺の前ではあまり冷たい表情はした事がなかった。
その声と表情は俺の前世で好きだったゲームのキャラクター、推しにあまりに酷似していた。
金髪、腰にクル低いイイ声。
顔をうずめたくなる逞しい背中、二次元だった人物にどうしてここまで似ているのか……、あの時の記憶が戻ってきて、身体が熱くなってしまう。
そんな俺の気も知らず俺の施術にリュウは低い良い声をあげる。
その声は微かなのだが俺の心拍数を上げるには充分だった。
幼馴染相手に俺は何を興奮しているんだ。
集中するんだ俺。
「ショウ、手紙の事はもういい、本当は良くないけど……元気にしていたのか? なぜそんなに痩せているんだ。背も伸びていない。顔も細くなった気がするし、昔はもっと健康的な肌色だった気がする」
「ええと、そうかな? まあ確かに体型はあの頃とあまり変わっていないかな、別に病気な訳じゃないから」
リュウが昔のリュウに戻ったみたいに優しく声をかけてくれる。
そう、リュウは本当はとても優しいんだ。
だから再会時の怒った顔は怖かったし、知らない人みたいに思ってしまったんだ。
声のトーンが優しくなったリュウに動揺していた俺も少しずつ落ち着いてきた。
うん、大丈夫だ。リュウだ。やっぱり、推しとは全然違う。
リュウとボソボソと話しながら俺は丁寧にリュウの体に触れていく。
ゆっくりと圧をかけながら、俺は施術に集中する。
リュウの身体はすごく硬かった。
これは魔力もアースさんが言っていたみたいに一定の場所に偏っているのかもしれない。
俺は実際魔力の流れは見えないが、なんとなくその魔力が偏ってしまっている部分を感じ取れる気がした。
魔力が体の中の一箇所に溜まり偏るとかなり痛いしイラダチも大きくなり、下手したら日常生活に異常をきたす事もあるそうだ……。
本当は俺よりも魔力の流れが見えるアースさんが施術した方がリュウには良いんだろうな……。
「リュウは元気だった? 勇者ってどんな者だか俺には分からないけど、大変なんだろ? 訓練とか厳しそうだ……」
「別に……」
そう言いながらもリュウは何か考えているのか、口数が少なくなった。
昔はどんなことも俺に話してきたのにな……、だけどそうだよな……勇者って言ったら秘密もいっぱいありそうだ。俺なんかに簡単に話せる内容じゃないよな……。
リュウのイイ身体を見て好みの顔で見つめられて、変な気を起こしてしまいそうだと思っていたけど……しゃべったら昔のリュウとそんなに変わっていなかった。
良かった。
ちゃんとリュウの事もお客様として対応できる。
前世の俺、お願いだから引っ込んでいてくれよ。
リュウに俺はもう幼馴染として見られていないと思い込んでいた。
だけど実際は……リュウは俺に手紙をくれていたらしいし、会いたいとも思ってくれていた。
俺の健康も気遣ってくれている。
それだけでも、嬉しいし、これからも、知り合いとしてもお客様と店員としても親しくしていきたい。
別に幼なじみに戻れなくても支障はない。
勇者として、今は忙しい生活を送っているのだろう。
心配させたくないし、迷惑もかけたくない。
だから、こんな風に思ってくれているリュウに俺の現状は話せない。
それにだ、俺は今、こうして働く場所も手に入ったし給料日にはお金を頂くこともできる。
この髪色ならばこの街に住む事も可能かもしれない。
この街は住まいを契約するのも簡単にできる。
黒髪だったあの頃の俺は、あの洞窟で身を隠すしかなかったのだけれど……。
多分アースさんに相談すれば、すぐに引っ越す事も可能だろう。
もしかしたら2階に住んだら良いとでも言ってくれそうな気さえする。
だけど……もし、タイアンさんとまた逢えるとしたら……逢えるかもしれないのはあの洞窟だけだ……。
俺はタイアンさんの居場所を知らないし、逢えるとしたらタイアンさんが気まぐれに俺の住まいである洞窟を訪ねてくるしかないのだから……。
「病気じゃないにしても痩せすぎだ。ちゃんと食べているのか? 今日は訓練を抜けてきているんだけど、なんか食いたいもんあるか? 次来る時にでも持ってくるよ」
「良いよ。別に。リュウ、忙しいなら無理に来なくても良いよ。俺はなんとか生きてる。こうして仕事も見つかった。リュウはリュウの道を歩いたら良いんだ。俺の事は気にしないで……」
そう俺が言い終えた所でリュウが起き上がったと思ったらリュウの身体の下に組み引かれていた。
目の前にリュウの金髪、綺麗な切長な二重瞼の目、美形を絵に書いた様な端正な顔が冷めた様な冷たい目で俺を見下ろしていた。
美形の無表情は更に怖い。
だけど、本当に綺麗だ。
無表情だと更に推しにそっくりだ。
そんな風にリュウの顔に見惚れていた俺は抵抗する事を忘れていた。
「やはり、お前は俺から離れようとしていたのか? この髪色はなんだ? 逃げられると思うなよ?」
低い声、先程の甘みを含んだ声じゃない。
リュウが怒っている。
そして怖いと思いながらもリュウの冷たい何を考えているんだか分からない無表情に怒りが垣間見える低い声に、何故だか興奮してしまっている自分がいた。
前世の俺、引っ込んでいてくれよ。
今は興奮するような場面じゃないんだ!
リュウは俺の前ではあまり冷たい表情はした事がなかった。
その声と表情は俺の前世で好きだったゲームのキャラクター、推しにあまりに酷似していた。
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