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2章

24話 謎の敵

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「地下水道って想像以上のところだな…」
入ってすぐにイザは匂いに耐えるのが限界だった。

「この街はエルフも少ないからな。浄化なんて年1回くらい大規模な依頼で行うくらいのもんさ」
(お前もエルフだから使えるだろ!)
とイザは思ったが口を開くと匂いに耐えられずこみ上げてきそうなので言葉を口に出すのを踏みとどまった。

「あーもう無理!清浄化!清浄化!清浄化!せいじょうかー!!」
イザは匂いに耐え切れず片っ端から綺麗しにしていった。

そんなイザをみて銀牙はぼやく。
「それが出来るなら初めからイザさんが行ってくださいよ~」
銀牙は元々銀狼。狼並みに鼻が利くのでイザよりも遥かに匂いには堪えていたらしい。

手当たり次第に浄化しながら4人は奥へと進んだ。
そして銀牙が先ほどヒュージスライムを倒した付近に到着した。

「銀牙さん。ホントに討伐したのはこの辺りだったのか?」
「ああ、この辺りだ」
「ふむ、分裂した形跡もないな。それにしても妙だな」
エルロンは奥の通路を見て目をしかめた。

「どうしたんだ?」
「ヒュージスライムが多数巣くっているなら本来はもっと汚染が広がっているはずなんだ。でもこっちを見て見ろ」
エルロンが奥を指さした。

3人は奥の水路がそれほど汚れていないことに気が付く。
「あ、ほんとだ。こっちはまだ清浄化してないのにそんなに汚くないな」

「ホントにここでヒュージスライムを?」

「ああ、間違いない。こっちに進んでいたら急に後ろに現れたから咄嗟に倒しちゃったけど」
「急に後ろに…?」
銀牙の話を聞いてエルロンは少し考え込んでいた。

そしてエルロンが険しい顔をして叫んだ。
「そうか…。おい!みんな警戒しろ!これは罠だ!」
「どういうことだエルロン!?」
状況を飲み込めないイザは戸惑う。

「ヒュージスライムはスライムから進化した上位種。だから水中を移動できるが知能はほとんどない。汚れと魔力を喰らうことしか考えていないはずだ。気配を消して銀牙さんの探知を抜けて後ろに回り込むなんてありえない」

「つまり何者かが召喚してけしかけた可能性が高いってことだ」
エルロンがそういった瞬間。
後ろの通路から拍手が聞こえていた。

『パチパチパチ』
「せいか~い。さすがベルン1の冒険者♪」
全員即座に距離を取り臨戦態勢を取った。

「何者だ!」
「そんな怖い顔しないでよ~♪エルロンちゃんはただでさえ顔が怖いんだ か ら♪」
そこには狐の耳に大きな尻尾、狐人族と言われる獣人の特徴をした男?が立っていた。

「俺はお前のことなんて知らないが…?」
「そうね。私の顔を知って生きてる奴がもし居たら、私はここに居ないもの♪」

「貴様闇ギルドのメンバーか!」
「んふっ♪そういうこと♪」

(イザさん達は街に来たばかり、素性は誰も知らないはず。銀牙さん単独の時には姿を現さなかったということは狙いは俺か…)
「んふふ♪さっきはびっくりしちゃったわ。名もない新人冒険者があたしのスライムを一撃で倒しちゃうなんてね。貴方たちこそ何者?」

「貴様が知る必要はない!!」
「アラ怖い♪」
エルロンは即座に男に向けて弓を構え光の矢を放った。

しかし男の前に突如ヒュージスライムが数体現れ盾になった。
「ちっ!」
「魔法矢でヒュージスライムを3体も貫くなんて流石はこの街1番の冒険者…♪」

「うっとうしい!」
(俺の攻撃はこの狭い地下では斜線を読まれやすい…あのスライムを召喚されて防がれちまう!単独ではきびしいか…)

「銀牙さん!協力してくれ!イザさん達は手を出さないでください!」
「あいよっ!」
二人は身構えた。

「二人ならどうにかなると思ってるのかしら…?まあいいわ。どのみち全員始末するつもりだから手間が省けるわ♪」
「お前が俺らに勝てるとでも思ってるのか…?」
「…いうじゃない?冒険者最強の腕、確かめさせてもらうわ♪」

そういうと男は再度スライムを複数体召喚した。
「銀牙さん!頼む!」
「おーけー。フリーズ!」
銀牙が床に手をつき魔法をとなえるとスライムはすべて凍り付き動かなくなった。
直後エルロンが光の矢で射抜き凍ったスライムたちはすべて粉々になった。

「へぇ…広範囲氷魔法が使えるなんて。意外とやるじゃない?」
男の顔から笑みが消えた。

「少し本気で相手をしてあげるわ!」
男は腰に差していたレイピアのような武器で二人の襲い掛かる。
「ちっ!早いっ!」
エルロンは躱すのが精いっぱいで攻撃に転じることができなかった。
銀牙も武器を持ち合わせていないので打ち払うのと避けるので手一杯だ。

「ほらほら!さっきまでの威勢はどうしたのかしら!避けてるだけじゃあたしは倒せないわよ!!」

エルロンは確かに避けるだけで反撃は出来ていない。しかしエルロンの目は何かを狙っている目をしていた。
徐々に水路の壁に追いやられるエルロンと銀牙。
「なんだ、結局最強の冒険者といってもこの程度か…残念♪」
男は剣をエルロンの顔にめがけて突き刺そうとした。
その瞬間エルロンと男の間に光の玉が割って入る。エルロンが弓を構えていた時に手に集めていた魔力で、矢ではなく光の玉を作って投げたらしい。すると直後その光球は発光して辺り一面が光に包まれた。

「なっ!」
男は一瞬目を奪われた。
その隙に銀牙が男の顔を殴り飛ばし、エルロンは壁際から抜けつつ光の矢を男に向けて数本発射した。

男は銀牙に殴られて吹き飛びながらも空中で体をよじってエルロンの放った矢をギリギリで回避していた。
矢の1本が男の足に刺さっていたが他の矢はすべて躱しきっていた。

手を出すなと言われたがイザは二人がやばくなったら魔法を飛ばすつもりで準備していた。その必要はなさそうなので手に準備していた魔法を解いた。
(なるほど、普段光の矢としてつかっていたが、光の魔法は明かりを灯したりするのにも使える。閃光弾みたいな使い方も出来るってことか)


「はぁっはぁっ…その足じゃ自慢の剣の速度ももう半減だな?」

「あたしの顔によくも…!!よくもよくもよくも!!やってくれたなてめぇら!!ぶっころしてやる!!目くらましなんてしょうもないことしやがって!!」
顔を攻撃された怒りで男にはエルロンの声は聞こえていなかった。

男はもう1本の剣も抜いて2本の剣で銀牙に向かい刺突を繰り出そうとしている。
しかし銀牙は冷静に構えていた。
「フリーズ!」

そう銀牙がとなえると男は銀牙にたどり着く前に半身を氷に包まれた。
「あなた今地面に手をついていなかったのにどうやって氷を!?」

「どうやってっていわれても…足から魔法を放っただけだが?」
(銀牙は俺が足から風魔法を発現させて飛んでいるのをいつも見ているからなぁ。出来て当然か)

「なっ!そんなバカげた魔法の発動方法なんて聞いたことがないわ!…あんたただの獣人族じゃないわねっ!?」
エルロンと銀牙は顔を見合わせて笑った。

「さて、これでもう見動きも取れないだろう何故俺ら…いや俺を襲ったのか話してもらおうか」
「誰が話すもんですか…覚えてなさい?今度は必ずあなたたちを仕留めてあげるから…!!」

「今度なんてない。俺がお前を逃がすとでもおもうのか?ここで吐かないなら動けないようにしてギルドに突き出すまでだ」

「あはははは!甘いわね!魔法が使えるのはあなたたちだけじゃないのよ!?」
「この状況から魔法1つで逃げ出せると思うのか?」

「ええ…可能ヨ。じゃあまたね♪今度が確実に殺してあげるわ!!あははは!!トランスポート!!」
そう言い残すと男は完全に消えてしまった。

「転移魔法だと!?そんな高度な魔法を何故あんなやつが…。すまねぇ銀牙さん。あんたの手も借りといて逃がしちまった…」
「俺は別にいいけど、これからどうするんだ?」

「そうだな…一旦ギルドに報告に行くとしよう。イザさん達を変なことに巻き込んだみたいで済まない」
「気にするなよ。それよりも闇ギルドってなんなんだ?」

こうしてイザたちは冒険者ギルドに報告に戻る途中でエルロンに闇ギルドについて確認した。
闇ギルドとは暗殺や犯罪など、依頼があればどんなことでも請け負うギルドの総称だそうだ。
この辺りでも暗躍しているという噂は以前からあったそうだが、表立って現れることは珍しいらしく、どんな組織が何のためにエルロンを狙ったのかはわからないらしい。


ギルドに着き4人はヒュージスライムは召喚されていたこと、闇ギルドのメンバーに襲われたことを報告した。



一方逃げた男は…
高貴な雰囲気が感じられる部屋で膝をつき頭を下げていた。
狐人の男の前ではローブを纏った男が足を組み椅子に座っている。
深々とフードをかぶっているので顔も見えない。
隣には執事と思われる男が立っている。

「すみません、ベルモッド様!エルロンの傍に居た獣人の魔法があそこまで強力とは..!でも次こそは奴らの息の根を…!」
「私は…エルロンを生け捕りにしてこいと命令したはずですが?…ファランよ…お前には目をかけてきたが残念だよ」
男は深くため息をついた。

「ま、待ってください!次は必ず!!奴をとらえてまいります!!」
ファランはかなり動揺している。

「…がっかりさせないでくれ」
「このファラン、この命に代えても必ずや貴方様の期待に応えて見せます!」
「わかった。もういけ」

話を終えファランは部屋を去った。


(獣人が強力な魔法…か。まさか奴が…?)
「ランス」
「はっ」
名を呼ばれ横に立っていた男は頭を下げた。

「エルロンと傍に居たという獣人を監視しろ」
「ファランが失敗した場合は私が手を下しても?」
「…お前は手を出すな」
「ファランの言う獣人の情報を集めろ」
「おおせのままに」

そう言うとランスと呼ばれる男は即座にその場を離れた。


「奴はもう用済みだな…。」
そういうと男は耳に手を当て誰かと話し始めた。

『……私だ…ああ、………そうだ。……ああ、よろしく頼む』

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