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2章

26話 昇格と招待

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4人はギルドに戻り報告を済ませた。
するとギルド中が大騒ぎになった。
報告に来たエルロンに対して賛辞とブーイングが飛び交っている。

「いったいこれはどういうことだ?」
「ギルマス!奴の話は秘匿ないんじゃなかったのかよ?」

「実はお前らが去った後に伝書が届いてな。この街にファランが潜伏しているとの情報が入ったから速やかに依頼を開示して全力で手配してほしいとあったんだ。流石に大っぴらにして隠れられても厄介だからよ。ギルドに居た奴をかき集め捜索する部隊を結成してこれから街に駆り出そうってところだったのよ」

「そこに俺らが完了の報告をしにきたもんだからこのブーイングか」

「そういうことだな」

「…うるせぇぞおまえら!!緊急依頼は早いもん勝ちだろう!文句があるやつはかかってきやがれ!俺が相手をしてやろう!」
エルロンの一言をきっかけに喧嘩が勃発したのは言うまでもない。

エレナさんに、こうなっては収集が付かないので翌日朝にまた顔を出してくれと言われたのでイザたちはエルロンをそのまま置いて3人で村に帰ることにした。
冒険者ギルドではこういった喧嘩は日常茶飯事のようでエレナもギルマスも平常運行だった。
というかギルマスは嬉々として乱闘に参戦していた。


そして翌日再びギルドに顔を出した。
「おはようございます!イザさん達がきたら部屋に案内するようにとギルマスから言伝を預かっています。エルロンさんは先ほど来られたので既に案内済です」
エレナがそう言うとイザたちを2階へ案内した。

「マスター。イザさん達も来られましたよ~」
「おう!入ってくれ!」


3人は部屋に入り席に着いた。
「で?話って何なんだ、みんな揃ったら始めるって言ってたが、ファランの件だろう?」

ギルマスは真面目な顔をして急に空気が変わった。
「ああ、さすがにもうお前らも感づいてるとは思うが…」

皆ギルマスの醸し出す雰囲気に息をのんだ。

「実はな…お前らに……王城から召喚命令が出た。」
「は?どうしてそうなるんだ」
何か良くないことを言われると思った皆の雰囲気は一気にほぐれた。

「あのファランってのは先日王城に忍び込んだ賊の容疑者だってのは話したろう?だからその依頼達成者を直接招いて労いたいそうだ。実はあいつが持ってた武器は王城から盗まれたマジックアイテムでオーダーレイピアって代物らしいそいつを取り返してくれた礼ってのもあるみたいだぜ」

「日取りはいつになるんですか?」

「6日後に決まったそうだ。くれぐれもすっぽかすんじゃねぇぞ!?お前らがすっぽかしたら怒られるのは俺なんだからな?それとだ、お前ら2人は新人ながらAランククエストと更に王宮からの特別クエストをエルロンと同じチームでこなしたってことで特別にCランクに昇格だ」
マティアと銀牙はCランクに昇格を喜んでいた。

(あれっ?俺は!?)
イザは二人だけが昇格の話をされてるのを聞いて焦った。
(確かに登録内容だけ見ると俺だけ2属性しか申請してないから雑魚っぽいけどさ!え?まじ?)

イザは焦っているのをみてニヤニヤしていたギルマスが続けて話し始めた
「ふふふ。イザ。お前は更に下水道を無属性魔法の清浄化を使って綺麗にしていったらしいじゃねぇか、お前らは受けていなかったがイャーリスの支局からの依頼で地下水道の汚染が広がって魔物が発生して困ってるって依頼が入っていたんだ。まさか地下水道全域を一人で浄化してしまってるとは恐れ入ったぜ。ワハハハ。そこでイザは特別にBランクに昇格だ。ほれ、これがギルドカードと報奨金だ」
(汚いのが嫌で浄化していったら思わぬところで棚から牡丹餅!)


4人はギルドを歩きながら今度の方針を話し合っていた。
「ガルにはなんて説明しようか?まさかこうもあっさり王城にいけることになっちゃうとはな」
「ランクをちまちま上げる計画がなんか一気に目標達成しちゃいましたね」
「マティアCランク!」
マティアはランクが一気に上がったので嬉しそうだ。

「まぁガルより役立つ俺が一緒に同行できるようになったんだ。文句はないだろう。それにガルは普通に出入りできるんだ。別口で動いてもらえばいいさ」
「それもそうか。ガルには後でつたえよう」
「マティアお腹すいた」
「そうだな、一旦村に戻ろうか」


村に戻りラナたちに王城へ行けるようになったことを報告した。
リーンとミアは単純に喜んでいたがラナは少し戸惑っていた。
というのも、ことが上手く進み過ぎてて気味が悪いとのことだ。
それに、偶然とはいえ緊急依頼を達成したり急な活躍で目立ってしまったことでこれから方々からの監視の目が光ることも考えられるという。
ファランを討ったことで闇ギルドからは確実に目を付けられたであろうこともラナは懸念していた。

「まぁ今さら悩んでも仕方ないことですね…」
(皆さん自重というものを知らないので、いつかはこんなことになると思ってはいましたが、さっそくですか…」
ラナは頭を抱えていた。

「とりあえず6日後までにもう一度作戦を練り直すとしよう」
「そうですね。2組に分けて自由に動けそうなガルさんにも同行するものも付けた方がいいでしょうね」


丁度その日の夜にガルも王城から戻ってきた。
そこで一連の話をすると案の定ガルは無駄足になったとしり落ち込んでいた。
しかし、ガルは自由に出入りできることを活かしてチームを2つに分けて向かうことにした。
ガルには闇魔法の影移動を出来る銀狼を数体付け、更にリーンをお供につけることとなった。

予定を大幅に短縮して王城へ向かうことになったが宮廷魔術師に会える日は近そうだ。
イザたちは6日間で入念な準備をすることとした。


――ベルモッドの部屋にて
「ファランは討たれたそうだな」
「ええ、エルロンに敗北しました」

「それで。獣人について何か新しい情報はわかったのか?」
「ファランはエルロンに単騎で打たれたので獣人の素性はまだ…しかし面白い人間を見つけました」
「人間がどうした?」
ベルモッドと呼ばれる男は興味を持ったようだ。

「はい、ファランと同じくゲートの魔法が使えるようです」
「ほう、ゲートの魔法を、確かに珍しい。だが人間の魔力ではあまり役に立たないだろう?」
「それが、日に何度もゲートの魔法を使用しているのを確認しました」

「普通の人間ではないな?」
「今のところはゲートを使える以外のことは何も…」

「ファラン以上の魔力をきっかけを与えずとも扱える人間…か。うまく操れれば利用できそうだ」
「ええ、奴らのチームにはもう一人人間の少女が居ます。その娘を捉えればその男も上手く操れるかと」

「なるほど。だが今はまだ表立った行動はよせ。動くなら例の件に片が付いてからだ」
「はい、心得ております」
「あとはお前にお任す」
「ご期待にお答えすることをお約束します」



(人間でゲートの魔法か。…あの方を思い出す。)

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