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2章

47話 城内戦

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マティアとガラテアはすでに裏門から敷地に入り別塔の2階まで到達していた。
「マティアさんあの扉が城内へ通じる連絡通路になります」
「わかった」

扉を開けると二人は連絡通路を渡り城内に入り込んだ。

城に入り通路を抜けた先でガラテアがマティアの腕を引っ張り柱に身を隠すように促した。
「マティアさん。気を付けて」

二人は柱の陰から階下の中庭に目を向ける。
するとそこには40人程のとても兵士とは思えない風貌の者たちが集められていた。
その周囲には城の衛兵と思われる兵士たちが横たわっていた。
「城の兵士はもう全滅したと考えた方がよさそうですね」
「あれは?兵士じゃない?」

「あれは恐らく大臣がどこかから雇ってきた傭兵崩れです。汚れ仕事を専門にする輩のようです。マティアさん見つからないように気を付けてください。…ってあれ?マティアさん?」
ガラテアが隣を見るとそこには既にマティアの姿はなかった。

慌ててガラテアは周囲を見渡してマティアの姿を探した。
するとマティアは堂々と中庭に降りる大階段の前に立っていた。

(マティアさん!何してるのおおおお!!私の話聞こえてなかった!??)
突飛すぎるマティアの行動を見て、両手で頭を抱え困惑するガラテアは、クールなキャラが遂に完全に崩壊した。

「悪者はマティアが懲らしめる。覚悟しなさい」
マティアは堂々と、階下から見上げる傭兵たちを指さしそういった。
ガラテアは仕方なくマティアが陽動している間に隠れて敵を背後から襲うことにした。

「なんだこのガキ?大臣からは何も聞いてないぞ?殺していいのか?」
「ああ、大臣からは王と王女の暗殺。目撃者は全て殺せとしか依頼されてねぇ。やっちまえ!」
「でも結構可愛いじゃねぇか。へへへ。殺す前に少し楽しんじまおうぜ!!」
そう言いながら傭兵どもは階段を駆け上がりマティアに襲い掛かった。


だが次の瞬間マティアは風魔法で向かってきた者を全て吹き飛ばし壁に叩きつけた。
それを見て全員マティアがただの子供ではないと悟り慎重になった。
「おい、こいつただのガキじゃないぜ」
「冒険者か?魔法が使える奴は援護しろ!」


だがその時、マティアへ警戒の目が向いている内にガラテアは傭兵たちの背後から攻撃を仕掛けていた。
後衛で魔法を詠唱している者を次々と攻撃していく。
「後ろからもう一人来てやがる!まだいるかも知れねぇ!全員周囲への警戒を怠るな!」



そう皆に声をかけた傭兵のリーダー格らしき狐人族の男はガラテアに剣を抜き飛び掛かった。
『ギィン!』
ガラテアは細剣でそれを受け止める。


「へぇ?そんな細身の剣で俺の攻撃を受け止めるとはなかなかやるな?だがその程度じゃお話にならないぜ!ファイアエンチャント!」
男は剣に炎を纏わせた。

それを見てガラテアは驚いた。
「魔法剣…」
ガラテアは静かにそう呟いた。
魔法剣を見てマティアは目を輝かせていた。

「その通り。火の魔法を纏った俺の剣はそんな細剣じゃ受けきれないぜ?どうする?」
「…受けなければいいだけです」

「そううまくいくかな!」
男は剣をふるった。
ガラテアはギリギリのところで全てを躱しながら攻撃を繰り出している。


「すげぇ…ボスの攻撃を全部躱してやがる…あの女一体何もんだよ…」
二人の戦いに見入っている傭兵に男は声をかけた。
「お前ら!なに見てんだ!こいつは俺が相手をする!その間にお前らはそのガキを何とかして王の首を取ってこい!!ぐずぐずしてると眠らせた兵士たちも起きてくるぞ!!王は別塔の最上階に居るはずだ!!」
「…!」
(それを知っていると言うことはここに集まっていたのは陽動…はめられた!)
ガラテアが王たちを密かにアルマの部屋の前に誘導してかくまっていたことはどうやら大臣に感づかれていたようだ。

男の言葉に応じて皆一斉に動き出した。
マティアは階段を上ってくるものを魔法で相手するので手一杯。
方々に散り始めた傭兵に手が回らなくなっていた。

「お前らは確かに実力があるようだが。戦いは強さだけじゃねぇ。数と戦略がものをいうんだぜ!俺らは囮さ…フラッシュ!」
そういうと男は剣に光魔法をこめた。
一瞬で辺り一面を覆うまぶしい光が男の剣から発せられた。


油断していたガラテアは一瞬目を奪われた。
目が慣れたことには男の姿はそこにはなかった。
「しまった!私は別塔に避難していただいている王と王女の所へ向かいます!マティアさんもここを片付けたら合流願います!!」

マティアは親指を立てて返事をした。

ガラテアは急いで先ほど来た道を戻り、別塔に向かう。
別塔に着くや否や、駆け足でアルマの部屋がある最上階まで階段を駆けあがっていった。

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