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3章

57話 エルフの里からの訪問者

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皆が進化したので元銀狼達の家も作ることになった。
ハーピィ達はそのままツリーハウスで問題ないそうだ。

各自割り当てられた仕事をこなしつつ交易に備えた南へ続く街道の整備も半分程度完了し、街として活気も出てきたころに訪問者が現れた。
以前も訪ねてきたことのあるエルフの二人組だった。

丁度訓練に出ていた銀牙とミアが森で出会ったらしい。

イザは食糧難と以前聞いていたので物資と食料の交換に来たんだろうと思い声をかけた。
「また交換希望ですか?」
「いえ、今回は違います」
エルフたちは少し深刻な顔をしていた。

それをみてイザは客間の通すことにした。
「ここではなんですのでこちらへどうぞ」

客間に案内し、セバスがお茶を配っていった。
必要ないといったが、入り口のそばにガラテアは立ち警戒に当たっている。
交渉はラナに任せることにした。
リーンにはエルフの里を追い出されたと聞いているので顔を出さないように言ってある。
「それで、今回はどのような要件でしょうか?」
「実は……。エルフの里に我々には手に負えない魔物が現れまして……先日訪れたとき、この辺りでは有名なエルロンさんがいらっしゃったのでご助力願えないかと思い……」
「エルロンさんは前回はたまたまここを訪れていただけでして、この街の住人ではありませんよ」
「……そう、ですか」
「エルロンさんはいません。ですが条件次第になりますが、我々に魔物討伐の協力を願いたいということであれば引き受けるのはやぶさかではありませんよ」

「ですが……」
エルフは周囲にちらりと目をやり言葉に詰まっていた。
人間種ばかりなので戦力として頼りないと思っているようだ。

「我々では頼りない。とお思いなのですね?」
「い、いえ!決してそのようなつもりは……」
どうやら図星のようだ。まぁ無理もない。この部屋にいるイザとラナ、セバス、ガラテアはどう見ても人間。
ここに案内してきた銀牙とミアのことも恐らく人間だと思ったことだろう。

「一つ確認したいのですが、その魔獣というのはどのような?」
「はい、里に現れたのはトレントという魔物です」

「トレントですか?その程度ならばエルフの方々でも容易に――」
ラナの言葉をさえぎってエルフが叫んだ。
「ただのトレントではありません!!エンシェントトレントという古代種なんです!エルフ族が代々あの森で暮らしてきたのはエンシェントトレントの封印を守るためなのです。ですが昨年から封印が急に弱まり……周辺の魔力を吸い取り始めて……」

なるほど、それで食糧難になっていたのか。でもそれなら何故以前来たときにその話をしなかったんだろう?
「エンシェントトレントは周囲の魔力を吸い続けています。このままではもう復活するのも時間の問題です。里長は里の問題だから、もし滅ぶならそれも運命。と言っていますがあれが復活してしまえばこの村にも被害が及ぶと思い……それで」

「そんな状況の中で我々のことまで心配していただきありがとうございます。エンシェントトレントの討伐依頼おうけいたしましょう。それでいいですかイザ様?」
「ああ、エルフの里はここから一番近いみたいだし、ご近所さんみたいなもんだろ?困ってたら助け合わないとな」
「しかし……!かの魔物は魔法を吸い取ってしまうので魔法での攻撃は効きませんし、封印が解けてしまえば意志を持って根を伸ばし続け手に負えないと聞きます……いくらこの森で暮らしていけるほどの実力があると言えど……人間族の方々では……」
「まぁそれくらいなら問題ないだろう。ラナ。討伐部隊の編成はお前に任せるよ」
「かしこまりました。それでは私は一旦失礼します」
そう言うとラナは出ていった。

「お客人の方々はもう少しゆっくりしていってくださいませ。お茶のおかわりはいかがでしょうか?」
セバスがお茶を注いで回る。

エルフ達はこの街の人がのんきにしていることに焦りを感じている様子。

「あなたがこの村の代表の方ですよね?」
「いまは村じゃなくてもう街だけどな。俺が代表だけどどうしたの?」
「この村も危険なんですよ……?悠長にしていては――」
エルフが焦ってイザに詰め寄ろうとしたときにすぐラナが戻ってきた。

「討伐部隊の編制が完了しました。案内をお願いできますでしょうか?」
想像以上に速い準備に驚いていた。
うちは常に戦闘訓練をしているし、実はトレントの相手は慣れたものだった。
というのもこの森でもトレントはよく出没するからだ。
イザとマティアの二人で過ごしていた時から木と思って切り倒してから気が付いたりすることがままあった。
なのでトレントは魔力を吸い取るがその許容には限界があることも知っていた。
限界を迎える前に根や枝を伸ばして成長しようとするのだ。
なので限界を超える魔力で魔法を使用するとトレントは耐えきれずに死んでしまう。

これは始まりの街の者はこの1か月ほどの生活で既に知っていた。
なのでラナは魔力が高い者を選抜していた。
まずミアとマティア、それと若干不安だがケルベロス。
そしてハーピィからハルピュイアに進化したものの中でも魔法に長けていたルーシィ、レビィ、ロウリィ。
彼女らは初めハーピィ族は戦闘能力が低いので戦闘は苦手と言っていたのだが、進化したことでイザと同じ合成スキルを身に着けており、ラナとイザにしか使えなかった合成魔の使い手になっていた。
案内のエルフ達を連れていくためにもハルピュイアから他に2人の計8名の準備が整った。

「天使族の方もいるようですが……たった8人で何とかなるとお思いですか!?」
エルフが叫んだ。
「彼らはタイラントボア程度であれば皆一撃で倒せる者たちです。信用していただくしかありません」
「なっ!天使族の魔法ならまだわかるが……人間族がそんな……」
見た目は3人とも人間に見えるだろうが、人間族はこの街ではガラテアと俺だけなんだよなぁ……。
そしてルーシィたちは天使族じゃないんだよね。まぁ今言うと説明がややこしいから言わないけどね。
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